個人用防護装備防護マスク(3)

防護マスクのご紹介は今回が最終回です。
自衛隊や警察、消防など災害対処に携わる組織では顔全体を覆う全面マスクタイプが用いられますが、このタイプが一般向けに普及していないのには理由があります。
それは、全面マスクを素早く、かつ正しく装着するには、髪の毛やひげなどを挟み込まないようにする訓練が必要だからです。
ほんのわずかでも隙間が生じてしまうようなら、いっそ半面マスクにフードを併用したほうが高い安全性を期待できるほどです。どれほど高機能なマスクでも、漏れ込みが多くては意味がないですものね。
装着時にマスクの内側にどのくらいの粉じんが漏れ込んでいるのかという「漏れ率」は、マスクの外側と内側の粉じん濃度を測定することで得られます。
興研によると、マスクの内側の粉じんが10個測定されたときの漏れ率を1%とすると、一般的なサージカルマスクの装着の漏れ率の平均値は63.36%だそうです。
これがN95マスクになると、漏れ率の平均値は0.56%と激減。
18式は不明ですが、00式の漏れ率が0.01%であることを考えると、同等もしくはそれ以上の性能と思って間違いないでしょう。
ただしこれらの数値はすべて正しく装着した場合です。
新型コロナウイルス対策で、マスクを正しく装着することの重要性が広く国民にも浸透したと思われますが、まだマスクの効果が生かせない間違ったつけかたをしている人はあちこちで見かけますよね。
特に鼻のわきや頬、あごなどにはすき間ができやすく、そこからマスクの外の空気が直接漏れ込みます。これではマスクを着けているのに、フィルターを通らない空気を多く吸い込んでしまっていることになります。なかには「眼鏡が曇るから」と鼻を丸ごと出してしまっている人もいますが、これはもう論外です。周囲の人にとっても迷惑です。
防護マスクはもちろん、一般のサージカルマスクもフィルターでろ過した空気を吸うことで、初めてウイルス等の吸入防止の効果を得ることができるのです。
興研はかねてからマスクのフィッティングの重要性を強く訴えてきました。フィッティング測定サービスを実施しているほか、防毒マスクの場合はマスク装着後、作業開始前のフィットテストを推奨しています。
手のひらで吸気口をふさいだ状態で息を吸ってみて、面体の中に空気が流入しなければ、マスクが正しく装着され気密が取れている状態ということだそうで、自衛隊の場合はこれを「気密点検」と呼んでいます。
最後におまけ話を。
演習でもガスの攻撃を受けたという想定で、防護マスクをかぶるシーンはよくあります。それが夏だと、隊員いわく「とんでもない暑さ」だそうで、警報が解除されない限り外すことも許されないので、次第に頭がもうろうとしてくるとか。ガス攻撃もいやですが、真夏の防護マスクもなかなかつらいものがありそうですね。
(個人用防護装備防護マスク  おわり)
(わたなべ・ようこ)
(令和三年(西暦2021年)10月21日配信)