陸上自衛隊 中央輸送隊(2)

中央輸送隊の業務内容の続きです。
先週は「国内における2方面区にわたる災害派遣、演習、補給などにかかる輸送」をご紹介しましたが、当然ながら業務はそれだけではありません。
ふたつめに、自衛隊の国外における平和協力活動、各種演習などにかかる輸送があります。フィールドが国内だけでなく国外にもおよぶのは、方面輸送隊との最大の違いです。
海外輸送には、国際貢献等海外派遣に伴う輸送業務と国外訓練輸送が挙げられます。これら国外輸送の場合、日本の港湾から目的地までの移動中に装備品の管理や積載状況の点検を行なうため、宰領者と呼ばれる中央輸送隊の隊員が輸送品に同行します。このような目的で海外を往復している自衛官がいることは、自衛隊の中でもあまり知られていません。ちょっとしたトリビアです。
国際貢献については1992年のカンボジア派遣における支援に始まり、さまざまな国への輸送支援に関わってきました。近年でいえば、海賊対処行動航空隊の帰国に伴う輸送業務(ジブチから日本へ航空輸送するため部隊装備品などの検数と業務通関)や海賊対処行動航空隊の出国に伴う輸送業務(鹿児島空港からジブチや航空輸送する装備品などの業務通関、隊員の出国審査・保安検査・旅具通関支援、隊員・見送り家族などの誘導)などを実施しています。この( )の中に書いた業務がなんと多岐にわたることか……
通関士のごとく煩雑な通関業務を行なう能力があることも、中央輸送隊ならではの特色といえるでしょう。
さらに、人員や装備品を輸送する船舶や航空機などの手配を行なうのも中央輸送隊の仕事です。
民間企業との共同作業も多いため、陸曹でも名刺を所有しているのは、これまた中央輸送隊のちょっとしたトリビアです。所属先によっては1佐でも名刺を持たないのが珍しくないのが自衛隊ですから。
ほか、日本が米国から物品を調達するFMSと呼ばれる有償援助調達品の引き取り・発送を行ない、陸海空の各自衛隊が調達する物品の輸入・通関業務および部隊等への発送業務などの業務も実施しています。
それでは、中央輸送隊が行なった国外訓練輸送のひとつを例に、その流れを見てみます。
約3か月間、米国で行なわれた師団クラスの諸職種協同訓練において、中央輸送隊は輸送量約200品目(ヘリ、車両、戦車、コンテナなど)の輸送業務を担当しました。
訓練に参加する隊員たちは航空機でひとっ飛びですが、これら装備品は民間の貨物船で仙台港から運ばれ、中央輸送隊からは宰領者4名が同行しました。
そして現地での訓練を終え、今度は仙台港で装備品の積み下ろし作業が行なわれます。港では中央輸送隊から派遣された6名が、これらの受け取りに関わります。
積み下ろし前日。
まずは仙台塩釜税関支所にて、統括審査官に膨大な通関書類(厚さ7~8センチはある束)を提出。翌日の午後に車体番号などを確認する現地検査をすることが決まると、次は輸入手続きが終わっていない荷を一時的に日本の土地に置かせてもらう他所蔵置申請を行ないます。
税関での仕事が終わると、続いて荷役調整会議です。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和三年(西暦2021年)11月4日配信)