フレデリック・ヴィンセント・ウィリアムズ(著) 田中秀雄(訳): 中国の戦争宣伝の内幕 -日中戦争の真実-

2020年4月21日


『中国の戦争宣伝の内幕 -日中戦争の真実- 』
著者:フレデリック・ヴィンセント・ウィリアムズ
訳者:田中秀雄
発行:芙蓉書房出版
発行日 2009/11/30
http://tinyurl.com/yb2o4rn

田中秀雄さん、ふたたび貴重な資料を発掘!

このたび発掘・完訳されたのは、1938年に出版された『Behind the news in China』(著:F・V・ウィリアムズ)です。

著者・ウィリアムズさんの経歴は次のとおりです。(本著著者紹介より)

<フレデリック・ヴィンセント・ウィリアムズ(1890-?)
Frederic Vincent Williams
1890年生まれのアメリカ人。少年時代に外人部隊に所属したり各地を放浪する冒険者のような生活を続け、その見聞を新聞紙上で発表することからジャーナリストの道に進む。サンフランシスコの新聞記者としてチャイナタウンの抗争事件を取材して有名となる。日中戦争の起こる前から極東を取材旅行しながら共産主義の危険性に注目して、親日的立場から本書を執筆した。日米関係の悪化を懸念しつつ、ラルフ・タウンゼントらとともに発言を続け、真珠湾攻撃後にタウンゼントと同じく逮捕され、16ヶ月から4年という不定期刑を言い渡される。戦後の日本に再びやってきて、原爆を投下された長崎を訪れ、1956年にThe Martyrs of Nagasaki(長崎の殉教者)という本を出版している。>

正確にいえば、南支調査会という調査団体が、発行翌年の昭和14年7月に『背後より見たる日支事変』という形で翻訳出版しています。
ところがこの本、当時の時代背景から「伏字」がかなりあったそうです。
(当時三国同盟を結んでいたドイツとの絡みがある部分が伏字になっているとのこと)

そういうこともあり、
<本書は『Behind the news in China』の最初の全訳であると誇りを持って言うことができる>と田中さんは断言されています。

■田中さん

本著を発掘・翻訳された田中秀雄さんについて少しご紹介します。

まず、著者紹介からご経歴を引用します。
<田中秀雄(たなか・ひでお)
1952年福岡県生まれ。慶應義塾大学文学部卒。日本近現代史研究家。
軍事史学会、戦略研究学会等の会員。著書に『映画に見る東アジアの現代』『石原莞爾と小沢開作』『石原莞爾の時代』(以上、芙蓉書房出版)『国士・内田良平』(共著、展転社)、編著に『もうひとつの南京事件』(芙蓉書房出版)、共訳書に『暗黒大陸中国の真実』『アメリカはアジアに介入するな』(以上、芙蓉書房出版)がある。>

戦後教育を受けたわが国民のほぼすべてが、「無知のままで」放ったらかしにされている「わが近現代史」の再生、研究、啓蒙を図っておられる方といえましょう。

田中さんといえば有名なのがラルフ・タウンゼントさんの著作発掘です。
『暗黒大陸中国の真実』
『アメリカはアジアに介入するな』
(いずれも芙蓉書房出版)

この2作は、米人ジャーナリストの手になる支那事変前後の支那の実情を正確に把握し、米の間違った対支政策を批判した書です。
この発掘は大きな反響を巻き起こしました。
70年以上前に出版された内容であるにもかかわらず、書かれている内容が、「現在の支那・支那人とそっくり」だったからです。

そして今回、再び素晴らしい資料を発掘されました。

■ぜひ読んで欲しい

冒頭にある序文(1938年(昭和13年)付)は絶対に読んでいただきたいと思います。なので一部ですが紹介します。

<近年極東の危機についてアメリカで書かれたすべてのものはほぼ一方の側に偏していた。一方の側だけから物語られている。あらゆる問題に二つの側があるはずである。もし一方の側だけから話を聞くならば、諸君は公平に状況を判断できない。我々アメリカ人は両方の側から話を聞くのがよろしい。この本を読む多くの人は、最初は日本側に味方をしていると思うだろう。しかしどれほど多くの本や新聞記事が中国贔屓で反日であるだろうか。しかもそういうものを「これは中国の味方をしている」とは言わないのだ。我々は日本に関するものよりも、中国に関して見聞きするものを疑いなく認識する傾向がある。実際問題として、この国には中国のプロパガンダが氾濫している。そして日本を弁護するものをほとんど見ないのである。
アメリカは大きな決断の岐路に立っている。東洋のことに関する限り、今まで通りに盲目的にまっすぐ進んでいくこともできる。しかしまた、「騙されていた・・・・」と事実に目覚めて、太平洋の彼方の大きな帝国との貿易と商業に大きな利益を掴む契機を見出すか、それを他の国に取られてしまうかということなのである。
私はこれを書くことにおいて手心は加えていない。私は誰をもバックにしていない。私は自由に率直に語った。我々がずうっと騙されているよりかは、真実を知った方がよいと考えたからである。
世界の歴史がアジアにおいて進展し始めている。その背後に何がうごめいているかを我々は知らなければならない。>

もう一度申し上げますが、この文は昭和13年に書かれたものです。
全然古びていないことはもちろんですが、今の状況とそっくりだと思いませんか? どこかの国の内情とよく似てませんか?

■事実と宣伝は違うもの

本著全般を通じて流れているのは、
「支那の実情の紹介、支那の謀略宣伝工作のからくり・実際、支那の謀略は日米対決を指向するもの」という米社会に向けた警笛です。

また、
・あまりに宣伝工作や謀略活動に無知・無防備であり過ぎる日本
・ではいかに伝えればいいのか?の実例
・共産主義の危険性
・わが国民の心理特性
・アメリカ人の心理特性
・支那人の心理・行動特性
を学べる内容にもなっています。

事実と宣伝は違うのです。

これについて、本書にある田中さんの解説から抜粋します。

<ここで私たちは事実と宣伝とは違うということをまず肝に銘じておかなければいけないのです。私たち普通の日本人はテレビのCMに間違いがないことを前提として生活しています。そこに出てくる商品の品質をほぼ疑わないものです。もしその商品に不都合があればリコールもできるのです。
しかしたとえば国際関係で敵対する国家間では、相手側を打倒するためにあらゆる手段がとられます。戦争もその一つですが、そのほかに謀略や宣伝=プロパガンダというものもあるのです。簡単に言えば嘘八百を並べ立てるわけです。えげつない話ですが、それもまた国民をひとつにまとめていく方法でもあるわけです。そしてプロパガンダは相手側を屈服、あるいは第三国を味方につけることにも利用されます。
“南京事件”というものの構造もまたこの図式から離れて理解することはできません。真実と宣伝を明確に区別することから南京事件の問題の解明は始まります。>(P140)

■感じたこと

20世紀初頭の共産主義アジア侵入に伴い、大日本帝国指導部が最も懸念したのは東亜の共産化、とりわけ支那の共産化であったろうと思います。それが正鵠を射ていたことは、現在の東アジアを見れば分かります。
満洲建国やそれに先立つシベリア出兵は、この観点から見る必要があるでしょう。

しかしながら欧米諸国は、その懸念をあまり深く考えることなく、わが国を味方につける知恵を持たなかったように思います。またわが国も、あまりにプロパガンダに疎く、欧米世論を味方につける工作に無頓着に過ぎたように思います。
そこをある力につけこまれ、プロパガンダや謀略を仕掛けられた挙句、支那大陸の共産統一、日米決戦という最悪のシナリオ(支那にとってはベスト)に引きずり込まれたのではないでしょうか。

出発点は、「各国家の、プロパガンダへの無知・無防備さ」にあったのではないでしょうか?

昭和13年当時にうまく対処できておれば、朝鮮戦争・ベトナム戦争は起きなかったかもしれません。

諸国はこのことを反省したようで、戦後続々と情報機関が誕生しました。
しかしながら、大東亜戦争で最大の犠牲をはらったにもかかわらず、戦後日本の指導部には、プロパガンダを行う機能・排除する機能すらありません。
それ以前に、やる気をまったく感じません。
やっているのは民間のみです。非常に不可解です。

もしかしたらわが現代史の一面は、戦前から現在にいたるまで、一貫してある勢力のプロパガンダに嵌められっぱなしで弱体化する一方という姿なのかもしれません。

結局得をしているのは、なんだか知らないうちにわが国が弱体化することに危機感を募らせている欧米でなく、わが国弱体化に成功し、大国の地位を占めるかも?の状況まで名を上げてきた「支那」ですね。
支那は戦前から現在にいたるまで、一貫してわが国弱体化のための謀略を仕掛けつづけて美味しい思いをしているということでしょう。

いろいろ思うところを書きましたが、
・支那のプロパガンダはどのように行なわれているか?
・支那人のメンタリティや支那内の実情はどういうものか?
を70年前の段階で正確に伝えている本著の価値は非常に大きいです。
なぜなら、今に至るもその構造はほとんど変わっていないからです。

■最後に

ジャーナリストの手になる内容なので、文がこなれていて有機性があり読みやすいです。
わが国弱体化を強いていると思われる「プロパガンダ」の何たるかを知り、支那の意図を知り、日米離間の謀略に飲み込まれたくないと思う方すべてに、自信を持ってオススメします。

「7●1部隊」とか「三●作戦」とか「中●の旅」等に代表される戦後日本で広く流布された「一般人向け支那プロパガンダ」を通じ、骨の髄まで打ちのめされ、タマを抜かれてしまった人にとっては、格好の活力回復剤となりましょう。

最後の田中さんの解説だけでも求める価値があると思います。
知り合いに広くすすめて欲しい本です。
原著の復刻もして、世界中で販売して欲しいですね。

オススメです。
ぜひお読みください。

追伸
この機会に、タウンゼントさんの2作品もあわせ読まれるといいと思います。

今回ご紹介したのは、
『中国の戦争宣伝の内幕 -日中戦争の真実- 』
著者:フレデリック・ヴィンセント・ウィリアムズ
訳者:田中秀雄
発行:芙蓉書房出版
発行日 2009/11/30
http://tinyurl.com/yb2o4rn
でした

(エンリケ航海王子)

■目次

序文

第一章 極東の現状、その全体の俯瞰図
西洋列強のライバルとなった日本
孤立化した日本の対策と期待
蒋介石の野望
中国を侵食する共産主義

第二章 西安事件と頻発する日本人虐殺事件
西安事件の真相
蒋介石、対日開戦をドイツ顧問に告白
共産主義者、日本を挑発
通州事件
日本にいる中国人は安全である
盧溝橋事件

第三章 第二次上海事件の内幕
「アメリカを引きずり込め!」
蒋介石の上海攻撃
上海事変の開始
わざと自国民を犠牲にする中国軍
プロパガンダに頼る蒋介石

第四章 残虐きわまる中国軍を糊塗するプロパガンダ大戦略
「焦土作戦」と「氾濫作戦」
スケープゴードにされた張学良
中国ニュースの巧妙なからくり
中国軍による日本空襲?
ずる賢い宋美麗
博愛主義者・陳伯鴻の暗殺

第五章 日本のアジアに対する崇高な使命感
日本は満洲のサンタクロースである
アメリカは満州国を承認すべきである
軍閥のポケットに直行する支援金
日本機とロシア機の空中戦
日本人のアジアに対する使命感

第六章 パネー号事件と対米プロパガンダ大作戦
アメリカ人よ、目覚めよ
パネー号事件の真相
日本はアメリカの最高の貿易相手国である

第七章 阿片を蔓延させる日本というプロパガンダ
阿片を蔓延させているのは中国である
日本がつくった満洲の麻薬取引実態統計資料
中国は阿片を蔓延させたとして日本を非難

第八章 中国人と日本人を比較する
中国人は信用できるのか?
清潔な日本人と不潔な中国人
中国の少女売買
交際上手と交際下手
礼儀正しい日本人

第九章 チャイナタウンの暗殺団と中国の軍閥
恐ろしいチャイナタウンの暗殺団
暗殺団の実態
奴隷少女の売買ビジネス

第十章 反日を煽る偽写真
上海の廃墟に泣き叫ぶ赤ん坊
銃剣で刺殺される中国兵
お人よしのアメリカ人

第十一章 ソ連の中国侵略を阻止しようと戦う日本

第十二章 宣教師の善意を利用して日本軍の悪を宣伝する
利用される宣教師
中国兵に虐殺される宣教師たち
南京の宣教師の打ち明け話
日本軍に感謝する宣教師たち

第十三章 広東と漢口の陥落、そしてその後の展望

【解説】
よみがえるフレデリック・V・ウィリアムズ  田中秀雄

あとがき

今回ご紹介したのは、
『中国の戦争宣伝の内幕 -日中戦争の真実- 』
著者:フレデリック・ヴィンセント・ウィリアムズ
訳者:田中秀雄
発行:芙蓉書房出版
発行日 2009/11/30
http://tinyurl.com/yb2o4rn
でした