中国海軍の晋級戦略原潜

2019年2月6日

すでに写真をご覧になった方も多いかと存じますが、シナの新型戦略原潜「晋級」(094 SSBN)は、背中にいっぱいミサイル発射孔がある写真が公開され結構話題になってます。

「晋級」は、三十年以上前に作られ、放射能漏れ事故等で実際にはほとんど活
躍しなかった最初の戦略原潜「夏級(092 SSBN)」の後継艦にあたり、同型艦
は現時点で二隻が確認されています。
晋級潜水艦を確認した専門家の間では「この三十年でシナ海軍の原潜開発設計
能力はほとんど進歩していない」との結論に落ち着いているようです。
昨年九月のカナダの「漢和軍事ニュース」に夏級と晋級の微妙な違いについて
比較した記事が載っていました。ここで明白な違いとして指摘されていたのが、
晋級の方がセイル(*)の高さが高く、SLBM搭載区画とセイル後部をつなぐ角度
も「092」が八十五度であるのに比べ「094」は九十度あったとのことで、
「晋級のほうがミサイル格納区画の高さが高いといえる。新型SLBM「新浪二号」
(JL-2。射程八千キロ、DF-31の海上発射版、MIRV搭載可能)の搭載を前提にし
ているためだろう」としていました。
にもかかわらず、製造された葫蘆島造船所にいる二隻の晋級戦略原潜は、SLBM
を艤装してませんでした。なぜかといえば、吃水が高すぎるためです。
衛星写真を通じてみる限り、二隻確認されている同型艦は同じ吃水・セイル形
状のようです。
この艦が、少なくとも現時点でJL-2を搭載配備できていないことは明らかです。
米情報当局によれば、JL-2についてシナ海軍は、いまだ作戦レベルにも至って
いないのではないか?ということですが、そのとおりかもしれませんね。
二〇〇五年夏から公試をはじめた晋級原潜ですが、夏級のときと同じく「焦り
の中で製造された」ためか、どうも成果ははかばかしくないようです。
あわせて、シナの原潜製造技術と世界トップレベルのそれとの乖離が甚だしく
なっていることはもはや明白で、これが逆に、シナ設計担当者の気持をますま
す頑なにしているとの見方もあるようです。
台湾海峡の緊張が高まる中、
「いざというとき米に介入されないためには、姿の見えぬ刺し違え兵器・「戦
略原潜」が最も効果的である」
そう考えたんでしょうね中共は。
そして、「とにかく手っ取り早く作らねばならない」という焦りのなか、
「夏級」の基本設計図を元に晋級原潜を作ったようです。
晋級には十二基のSLBMしか搭載できませんけれど、現在欧米諸国が保有する近
代的な原潜では通常十六基~二十四基は搭載できます。
戦略弾道ミサイルの数があまりに少ないことは、敵に対する効果的な核抑止力
を発揮しないかもしれません。
このミサイルの数は、「晋級」の能力が1960年代後期における米ソの戦略原潜
の水準にようやく届いただけという事実を示している、との見方もありますね。
しかしながらシナは、今後の戦略原潜開発に関し、24基のSLBMの搭載イメージ
を明らかにしています。
でもその設計構造は「夏級」「晋級」とほとんど同じようなものです。
これは、次回に新造される(096 SSBN)が、「より多くの核弾頭を搭載する」
ことを意味するのかもしれませんね。
一九九〇年代半ばにシナ海軍は、夏級戦略原潜「092 SSBN」を改造し、
(改)夏級戦略原潜「092M SSBN」を生み出しました。
それが今回の晋級原潜「094 SSBM」開発にあたってのプラットホームとして
使われたんですね。
「晋級」開発にあたっては、ロシアの協力・助言は全くなかったそうです。
シナはこれまでも、ロシアからいろいろ装備を購入しましたが、技術支援や整
備などは別の国から話を聞くというやり方をとったとされます。
晋級開発に当たっても同じで、技術支援や整備についてはウクライナやベラル
ーシから情報や資源を入手したようです。そういえば、原子炉の製作、溶接に
当たっては、ウクライナの企業から専門家の派遣を受けてましたね。
たぶん、ロシアに軍事面での影響力を行使されたくないのでしょう。
最初の「晋級」が正式配備されるまでの間に、海軍はより多くの同級原潜を
建造しているであろうと推定されます。
これは「092M SSBN」で行なったこれまでの一連のテスト結果が、十分水準を
満たしているためと思われます。
漢和軍事ニュースによれば、
「092M」と「094」の指揮統制システムは基本的に同じようです。
この二種の潜水艦の違いは、艤装されるソナーの構造からも判断するそうです。
「092M」は、262Bソナーシステムを艤装しています。
シナの公文書では、「093 SSN」にH/SQ G-207側面配置型ソナーアレイ(最新型
とされる)が艤装されるとあります、しかし、これと同じソナーシステムが
「094 」にも艤装されたかどうかは、現時点でわかっていないそうです。
⇒とは書いてきましたが、これはあくまで一般的な世界の話で、
わが国民の皆様がこれを読んで「安心した」というだけで終わる話ではない気
もします。
わが国には空母も原潜も長距離爆撃機もないですし、核武器も弾道弾も存在し
ません。
それ以前に、通常兵器も弾も足りませんし、国防すべての分野にわたる備えは
欠乏しています。
わが自衛隊には軍の権威すら付与されていません。
国の交戦権すら自ら捨て去って保有してません。
それらを完全に今から正常に回復するには、少なからぬ時間が必要ですね。
進めるのは大賛成でよいとして、果たして今からで間に合うのでしょうか?
現実的に見ると、当面の間、国を護るには日米同盟を強化することに全力を
挙げるしかないように感じます。
そんな中で独立国の意地を見せるには、英国の例にもあるとおり、
自前の情報をGETし、それを折に触れて米に提供するなかで常に貸しを作って
おく姿勢が極めて大切ではないでしょうか?
そして、唯一の同盟国米をわが国は支えるぞ、という姿勢を国際社会で行動
をもって示す態度が大切ではないでしょうか?
いずれにせよ、すべての根っこは、国民の軍事・国防・情報意識の成熟度如何
にかかってきます。国民の精神・意識が変われば政治は変わります。
首相のブザマさヘタレさは国民のブザマさヘタレさを意味しますよ。
このままでは申し訳ない限りです。
(080303配信 メールマガジン「軍事情報」第333号より)
【参照】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%8B%E5%9E%8B%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E6%BD%9C%E6%B0%B4%E8%89%A6