まんがで読む 古事記 第4巻 久松文雄 青林堂

2020年5月5日


壮大かつ雄大、それでいて複雑極まりない『古事記』というものがたりを、筋をしっかりふまえたうえで、マンガとして描き出す挑戦です。
これまでの古事記マンガに決定版がなかったため、著者の久松さんは、古事記のマンガ化を<漫画家の鬼門>と常々思っていました。
この原因を久松さんは、原典を換骨堕胎してマンガ的面白さを追求し、作者がアレンジをくわえる中で、古事記の真意が伝わりにくいダイジェスト版にしていたからだと考え、次の結論に達します。
<真の古事記の世界を読者に伝えるためには、マンガであるがゆえに原本に忠実であるべきとの思いを強くしていた。>
この一文が、本企画のすべてをものがたっていると私は思います。
『まんがで読む 古事記』は平成21年以来、毎年一回づつ配本されています。
今年で4回目となる配本を楽しみにしていましたが、今年も無事開始され、さっそく読ませていただきました。
今回の第4巻では「垂仁天皇とものいわぬ皇子」から「父王(天皇)との再開」までが収録されています。
今回の主役は、「倭建命(ヤマトタケルノミコト)」です。
熊曾征伐と出雲征伐の話です。
非常に武張った話です。
歴史を振り返って思うのは、わが国は、武家が頭領でなければ不安定な国だということです。わが国の神話である古事記で、武の話が頻繁に出てくることはその証左でしょう。
わが国の三種の神器に、武の象徴である「刀」が含まれているのも忘れてはいけない点でしょう。
おそらく人間は、幼いころにこういう話を知るなかで、目に見えない、いちばん大事な魂の核を形成してゆくのでしょう。
古事記は、単に人を救うという甘ったるい理想を満たすのみでなく、「国譲り」に見られる謀略、外交の駆け引き、「征伐」における戦いの描写など、実に現実的かつ政治的な面(国を救う)を表現する面をもっています。
人間社会の鏡の裏表を表現し尽くしている点で、古事記という作品はわが国民の聡明さを示すものさしになっていることは確かでしょう。
そのためか、インテリジェンスや戦略研究の世界でも古事記は重視されています。
「古事記はインテリジェンスの教科書」というのが元陸軍中将の故・飯村穣さんや、その教え子・元海将の太田文雄さんです。
太田さんは『日本人は戦略・情報に疎いのか』のなかで、インテリジェンス面からみた詳細な古事記分析をされてます。
スペイン語講座の米田さんも、”『古事記』の戦略思想”という非常にユニークで質の高い論文を出されています。この論文は、『年報戦略研究第5号』にも掲載されました。
ある面から見たら処世訓、ある面から見たら道徳書、ある面から見たら謀略書、ある面から見たら政治書・・・きりがありません。
ことほど左様に古事記がもつ世界は無限で奥深く、尽きるところがありません。
そしてそれは、わが日本なるものと直接つながる、日本人の魂の源ともいえる伝承です。われわれは今、古事記にこそ戻る必要があるのではないかと思います。
そんななか生まれたこの企画。
先ほどいいましたように「年齢が下に行くほど知られていない日本神話」という環境がすでにある中、価値は珠玉であるといえましょう。
回を追うごとに、キャラの引き立ちが見事になってきており、はらはらどきどき感がアップしています。良くできています。
魅力的な登場人物とお手元で対話してみてください。
一つだけ注文があるとすれば、
もう少し色っぽいシーンを増やしてほしいです。笑
価格に見合わぬ上質な表装もうれしい限りです。
ざっくりと大きな時間が取れる今の季節にこそ、ぜひ読んでいただきたい一冊です。一家に一冊ぜひどうぞ。
「まんがで読む古事記シリーズ」は、平成24年神道文化賞を受賞しました。
現在一番読まれている古事記まんがです。
(エンリケ航海王子)
【もくじ】
第二十五章 垂仁天皇とものいわぬ皇子(すいにんてんのうとものいわぬおうじ)
第二十六章 景行天皇と小碓命(倭建命)(けいこうてんのうとおうすのみこと(やまとたけるのみこと))
第二十七章 九州熊曾へ苦難の道のり(きゅうしゅうくまそへくなんのみちのり)
第二十八章 熊曾建兄弟の討伐(くまそたけるきょうだいのとうばつ)
第二十九章 父王(天皇)との再開
著者あとがき
参考資料
詳細はこちらで
⇒『まんがで読む 古事記 第4巻』


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