【本の紹介】『永遠の翼 F-4ファントム[増補版]』小峯隆生著/柿谷哲也撮影

▼復刊を待望された『永遠の翼』の増補版
 F-4退役後の「ファントムライダー」を追加取材!

『ファントム無頼』原作者・史村翔氏「F‐4は機械じゃなくて生き物だよね。百里でコクピットに座った時、やっぱりベトナムで戦い抜いた獰猛な生き物だと実感した。ファントムに関わった人間にしかわからない愛着や魅力を忘れることはない。そう、お前は格好いい猛獣なんだ!」

作画・新谷かおる氏「(いちばん格好いいのは)正面を少し斜め前から見た姿。エアインテークが大きく開いていて、その前のレドームの下の鼻先がボコッと出ていて、そして、キャノピーがスーッと後ろ側に湾曲していくライン。あれがいいですね。老兵は死なずですね。もし何かいただけるなら、照準器がいいです」 (本文より)

『永遠の翼 F-4ファントム[増補版]』
小峯隆生著/柿谷哲也撮影
四六判424ページ(カラー口絵16ページ)
発行日:2023年12月12日
定価:1800円+税
発行:並木書房
https://amzn.to/3uOXtkh

おはようございます、エンリケです。

今日ご紹介する本は、
5年ほど前に一度紹介させていただいた

『永遠の翼 F-4ファントム』

の増補版です。

わが空自のF-4ファントムはついに全機退役、F-35Aに機種更新され、半世紀にわたる光栄な歴史にピリオドが打たれました。かつては6個の飛行隊が躍動し、空を制圧していましたが、その時代は過去のものとなりました。
第302飛行隊が2018年度内にF-35Aに機種更新されることとなり、最後のF-4ファントムの旗艦が第301飛行隊のみとなった時期にこの本は刊行されました。

この重要な瞬間に、現役・OBのファントムライダー、整備員、偵察部隊、技術者たちに密着取材。彼らの視点からF-4の最後の勇姿を切り取り、その感動と共に歴史を記録したのがこの本です。劇画『ファントム無頼』の作者にもファントムへの熱い思いを語ってもらっています。

関わった多くの人々が刻んだ記憶、特別な思い入れ。F-4ファントムに感謝の気持ちとねぎらいの思いを伝えたい、とのはちきれんばかりの思いが満ち満ちた書として本書は完成しました。

あれから5年。「ファントム飛行隊のその後」「それからのファントムライダー」「資料・2019年以降の各部隊動向と展示機」を新たに取材・追加して増補し、F-4ファントムに捧げる完全版として本書が戻ってきました。
「その後のF-4」もわかるようになって、戦闘機ファン、ファントムファン、空軍ファン、空自ファンにとっては、見逃すことのできない感動的なエピソードの数々がつまった珠玉の一冊になったのではないでしょうか?

完全に退役してから約5年経過しているにも関わらず、F-4の人気は衰えるところを知らないようです。
すでにお持ちの方も、今日始めて知った方も、ぜひ手にしてほしい作品です。

▼「F-4愛」の物語

この本は、退役したF-4に関わり、F-4を愛する人の声に満ち満ちた「F-4愛」に溢れており、退役したF-4への深い愛に満ちた「うた」をなしています。豪華な登場人物たちが織り成すストーリーには、空幕長・丸茂空将(当時)から元空幕長・杉山元空将、元航空支援集団司令官・織田元空将、元7空団司令・杉山元将補をはじめとする、自衛官からエンジニアまで多岐にわたる仲間たちが続々登場します。

次なる魅力は、F-4のすべてが綴られていること。パイロットやエンジニアの独自のクセや工夫がF4運用現場には詰まっており、最前線の現場能力の高さがどう育まれてきたか、一つの模範になるほどの深さが感じられます。偵察航空隊の謎めいた仕事も明らかにされています。サプライズいっぱいです。

さらに、ほとんどが「会話(「」)」で彩られているという特徴があります。軽快なリズムで読み進めることができるのですが、実は読み手はその会話を通してF-4を全方位から観察できてしまいます。読み終わった後に初めて、高度な内容を一気に理解している自分に気づく瞬間がやってくることでしょう。取材の手腕に唸るばかり、「F-4愛」に心打たれる感動の物語です。

もう一つ、F-4が複座機であることにフォーカスしたエピソードに「グッ」ときます。バディとのコミュニケーション訓練や「教育」機能の大切さが教えられます。この仕組みが、戦闘機要員の育成にどれほど重要か、その背景事情が明らかになります。背中で教えることの意味、今も生き続けていることにある種の確信が湧かざるをえません。

複座機だからできる「教育」、わが自衛隊の知恵の大きさが詰まったこの物語。
この「F-4愛に満ち満ちた書」には多くの学びと知恵が詰まっています。

それでは「F-4愛に満ち満ちた書」の中身を見ていきましょう。

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プロローグ
  それは筆者が初めて知ることだった。前著『蘇る翼F‐2B』の取材で、東日本大震災当時、松島基地司令だった杉山政樹元空将補にインタビューした時である。
  震災時、杉山氏は基地のトップとして災害対処の陣頭指揮にあたっていたが、つねに補佐役に同期か部下を選び、その表情や声のトーンを観察しながら、意見を聞いて決断していたという。
「実は震災時の松島基地の装備部長が防衛大学校の同期生で、昔から気心の知れた、信頼のおける男だったのです。だから、彼に相談や提案をした時、彼が無理と言ったら、だめなんだと判断していました」(杉山氏)
  戦闘機のパイロットは、単座機か複座機かで二種類に分けることができる。F‐15イーグル戦闘機など単座機のパイロットは基本「寡黙」。それに比べて複座のF‐4ファントム戦闘機のパイロット出身者はよくしゃべる。この複座機の経験が震災時に役に立ったという。
  複座機のパイロット特有の気質や思考方式があるというのは思いもよらなかった。いつか、F‐4戦闘機のパイロットたちの現場を見てみたいと思った。
『蘇る翼F‐2B』が刊行されて間もなくの2017年夏、取材時にお世話になった方々を招いた宴席で杉山氏と再会した。筆者(小峯隆生)はすぐに思いを伝えた。
「航空自衛隊のF‐4ファントムが、間もなく退役しますね、そこで次はF‐4に関する本を書いてみたいんです」
  杉山氏は筆者の提案には答えず、携帯電話を取り出し、どこかと連絡を取り始めた。
「いま兄貴にメールを送りました。返事を待ちましょう」
  意味不明の言葉だった。しばらくして杉山氏がメールの返信を確認すると言った。
「あっ、やれますよ」
「なんですか?」
「F‐4ファントムの件です。兄貴がお手伝いしようとのことでした」
「その兄貴って、どなたですか?」
「私の先代の第302飛行隊長で、今は空自のトップの杉山空幕長ですよ」
  なんとも素早い対応に驚き、筆者はあんぐりと口を開け、そこにビールを燃料のように流し込んだ。
  こうして本書の制作が開始された。
  F‐4EJ戦闘機──それを大空で自在に操縦する者たちを「ファントムライダー」と呼ぶ。消えゆくF‐4ファントムは、これに関わった人々に何をもたらしたのか? かつて単座戦闘機で戦った搭乗員たちは「大空のサムライ」と呼ばれた。ファントムの搭乗員たちは大空のなんであったのか……
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目 次

はじめに 17
1 F‐4だから長く活躍できた──杉山良行前空幕長 23
2 F‐4の戦力を使い切る 29
3 航空自衛隊とF‐4ファントム 47
4 最後のファントムライダー 77
5 ファントム発進! 110
6 複座戦闘機乗りの心得 136
7 最強の飛行隊を目指して 151
8 空の守りの最前線 157
9 ファントムOBライダーズ 165
10 最後のドクター──列線整備小隊 200
11 F‐4を支えるメカニック集団 227

12 劇画『ファントム無頼』に込めた思い 261
13 今だから語れる非常事態 277
14 RF‐4偵察機──偵察航空隊の使命 301
15 写真を読み解く──偵察情報処理隊 328
16 創意工夫でやりくり──偵察航空整備隊 353
17 日本の空を支えて半世紀──丸茂吉成空幕長 371
18 永遠の翼「F‐4ファントム」380
おわりに 399

増補「それからのファントムライダー」404
(1)ファントム飛行隊のその後 404
(2)ファントムライダーのその後 407
(3)資料 2019年以降の各部隊動向と展示機 420

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いかがでしょうか?

著者はこの方です。

■著者

小峯隆生(こみね・たかお)
1959年神戸市生まれ。2001年9月から週刊「プレイボーイ」の軍
事班記者として活動。軍事技術、軍事史に精通し、各国特殊部隊
の徹底的な研究をしている。著書は『新軍事学入門』(飛鳥新社)
『蘇る翼 F-2B─津波被災からの復活』(並木書房)ほか多数。
日本映画監督協会会員。日本推理作家協会会員。筑波大学非常勤
講師、同志社大学嘱託講師。

柿谷哲也(かきたに・てつや)
1966年横浜市生まれ。1990年から航空機使用事業で航空写真担当。
1997年から各国軍を取材するフリーランスの写真記者・航空写真
家。撮影飛行時間約3000時間。著書は『知られざる空母の秘密』
(SBクリエイティブ)ほか多数。日本航空写真家協会会員。日本
航空ジャーナリスト協会会員。

小峯さんは、

週刊プレイボーイのコミネさん

といったほうが通りがいいかもしれません。

軍事マニアとしても知られる氏の
F-4への無限の愛情が満ち満ちた書であり、
「F-4」のすべてを描いたレクイエムと
言って差し支えない傑作です。
ファンの方なら必携でしょう。

柿谷さんも、超有名なカメラマンです。

今日ご紹介したのはこの本でした。

『永遠の翼 F-4ファントム[増補版]』
小峯隆生著/柿谷哲也撮影
四六判424ページ(カラー口絵16ページ)
発行日:2023年12月12日
定価:1800円+税
発行:並木書房
https://amzn.to/3uOXtkh

(エンリケ)

追伸

追伸
ちなみにエンリケの一番好きな戦闘機は「F-4」でした。
いかにも戦闘機らしいゴツさがお気に入りで、いまも
大好きです。

戦闘機も軍艦も、新幹線と同じく、新しくなればなるほど理
屈だらけの形になり、美から離れていく気がしてなりません。
理屈と美のバランスが最もとれていたのが自分のなかでは
「F-4」なんでしょう。

平成や令和生まれの人は、
「F-16」や「F-35」にそういう思いを
重ねてゆくのかもしれませんね。

すでにお持ちのあなたも、今日始めて知った方も、
この機会に「完全版」を手にしてはいかがでしょうか?

『永遠の翼 F-4ファントム[増補版]』
小峯隆生著/柿谷哲也撮影
四六判424ページ(カラー口絵16ページ)
発行日:2023年12月12日
定価:1800円+税
発行:並木書房
https://amzn.to/3uOXtkh