在沖米軍を考える際の軍事的視座

2019年2月6日

米軍の世界戦略
米軍は、世界戦略の中で、抑止と対処を踏まえたトランスフォーメーション(再編)を考えている。このことを前提に考えるべきだと思います。
そして、最も重視している地域が、アフリカやバルカン半島から中東を通って東南アジア、朝鮮半島に至る紛争多発地域である「不安定の弧」です。ここはテロリストの温床となり、米軍基地も少ない地域です。
特にアジアにおける軍事力の配置に関しては、中国や北朝鮮を牽制しつつ(力の空白を作らないように)、米本土からの戦力の補充も考慮しながら、必要に応じて「不安定な弧」の地域に展開できるように配慮していると考えられます。
 もちろん、「不安定な弧」の一部である極東においても、例えば、北鮮の南進や中台紛争といった周辺事態、中国の尖閣諸島への侵攻等の事態が発生した場合、その対処とそうさせないための抑止は、極東に駐留する米軍が直接担当する事になります。
米軍が沖縄にこだわる理由
その中で、米軍が沖縄県内にこだわっているのは、「太平洋の要石」と言われる沖縄の地政学的な位置付けにあると考えます。航空機の航続距離、後方支援等を考えると、台湾や朝鮮半島に1日で展開可能です。
展開可能時間短縮がなぜ重要か?
軍事的な視点から、展開可能時間の短縮が何故重要かというと、初動を如何に制するかは、勝敗に大きく関わってくるからです。ガダルカナル戦の戦訓のとおり、戦力の逐次使用は最も避けるべきです。
相手の態勢が整わないうちに、相手の戦力を分散して、我の戦力を迅速に集中させて相対的に優位な我の戦力を当てる。初動で貴重な戦力を失うと、ランチェスターの第二法則(民間企業の経営戦略にも応用されており、ネットでも調べられると思いますから、説明は省略します。)のとおり、幾何級数的に損耗が増大していきます。
また、機動中は十分な戦力発揮ができず、極めて脆弱な状態にあります。少しでも早く展開し、戦力発揮が可能な状態にすることは、留意すべき事項です。1日、いや数時間、数分の遅れは、致命的な打撃を与えられる可能性があります。
戦力の離合集散をいかに行うか
そういう意味で、国際情勢の現状や予想される最悪の事態を想定し、国家予算等の制約事項を考慮しながら、平素からの配置を含めて、戦力の集散離合をどうするかは、大きな戦略判断です。そして、戦力の集散離合に関連し、作戦を直接実施する部隊と支援部隊の連携をどう取るかを考慮しておく必要があると考えます。
代替戦略なしの戦力後退が意味すること
また、対象国の状勢判断を行う場合の視点として、大きく見ると「能力」(相手の持つ戦力を分析し、何ができるかという見積り)と「意図」(国家目標、指導者の性格等を分析し、何をしようとしているかという見積り)の2つがあります。
十分な代替戦略を練ることなく沖縄地区から戦力を後退させると、対象国は、我の意図をどう解釈するでしょうか?誤ったシグナル(例えば、小さな島の紛争に米軍は関与しない)を与えると、対象国はそれに見合った行動(例えば、威力偵察を兼ねた尖閣諸島の実効支配)を採ってくる可能性が増大すると考えられます。