【書評】『世界の右翼』内藤陽介(著)|なぜ欧州で保守政党は支持を拡大するのか?

こんにちは、エンリケです。

「極右の台頭」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。

民主主義への脅威でしょうか。

あるいは危険なナショナリズムの復活でしょうか。

最近の国際ニュースでは、「右翼の躍進」「欧州の保守化」「極右勢力の拡大」といった言葉を見ない日はありません。

ドイツのAfD。

フランスの国民連合。

イタリアのメローニ政権。

ハンガリーのオルバーン政権。

オランダの自由党。

こうした勢力が支持を拡大するたびに、メディアでは危機感をあおる論調が目立ちます。

しかし私は以前から、ひとつ疑問を持っていました。

なぜ彼らは支持されるのでしょうか。

なぜ多くの有権者が投票するのでしょうか。

なぜ既存政党は支持を失ったのでしょうか。

結果だけを見ても、その理由は見えてきません。

今回ご紹介する内藤陽介氏の新刊『世界の右翼―欧州保守政党でわかる国際情勢』は、その疑問に真正面から向き合った一冊です。

この記事でわかること

・なぜ欧州で保守政党が支持を拡大しているのか
・ドイツAfD躍進の背景
・フランス国民連合の戦略
・移民問題と国家アイデンティティの関係
・イスラエル右派と中東情勢のつながり
・『世界の右翼』を読む価値

この本で変わるのは「国際ニュースの見え方」

正直に言うと、私は少し身構えて読み始めました。

タイトルだけを見ると、右翼思想の解説書を想像したからです。

右翼とは何か。

保守とは何か。

思想史や政治理論が延々と続くのではないか。

そんな印象を持っていました。

ところが本書は違いました。

本書が問いかけているのは、右翼の定義ではありません。

「なぜ支持されるのか」

そこに焦点を当てています。

思想そのものではなく、社会現象として政治を見る。

主張ではなく背景を見る。

だからこそ、現在の国際情勢を理解するための格好の入門書になっています。

なぜ欧州で保守政党が支持を拡大しているのか

本書では以下の国々が取り上げられています。

  • ドイツ(AfD)
  • フランス(国民連合)
  • イタリア(イタリアの同胞)
  • ハンガリー(フィデス)
  • オランダ(自由党)
  • ポーランド(法と正義)
  • イスラエル(番外編)

それぞれ歴史も文化も異なります。

しかし共通して見えてくるものがあります。

それは、既存政治への不満です。

その背景には、

  • 移民問題
  • 治安問題
  • 経済格差
  • 物価高騰
  • EUとの関係
  • 国家アイデンティティ

といったテーマがあります。

ニュースでは数十秒で終わる話題も、本書では歴史的背景まで掘り下げて解説されています。

AfD躍進から見える「排除の論理」

本書の中でも特に印象に残ったのがドイツAfDの分析です。

AfDはしばしば「極右政党」として扱われます。

そのため既存政党やメディアはAfDとの協力を拒否し、「防火壁」と呼ばれる排除政策を続けてきました。

しかし皮肉なことに、その排除が支持拡大につながっているというのです。

有権者の一部は、

「自分たちの声が無視されている」

と感じています。

その結果、さらにAfDへ票が流れる。

これは単なるドイツ政治の話ではありません。

現代民主主義が抱える難しさそのものだと感じました。

フランス国民連合の「脱悪魔化」戦略

フランスの国民連合も非常に興味深い事例です。

かつては「極右」の代表格と見なされていました。

しかしマリーヌ・ルペンは長い年月をかけて党のイメージ改革を進めてきました。

本書では、この「脱悪魔化戦略」の過程が詳しく描かれています。

ニュースだけでは見えない政治戦略の裏側が理解できる部分です。

オルバーンはなぜ支持されるのか

ハンガリーのオルバーン政権もまた興味深いテーマです。

欧州メディアではしばしば「独裁的」と批判されます。

しかし国内では長年にわたり高い支持を維持してきました。

なぜなのか。

本書はその理由をハンガリーの歴史と国民感情から解説しています。

政治を理解するには歴史理解が不可欠であることを改めて感じさせられました。

安全保障を学ぶ人ほど読んでほしい

軍事や安全保障に関心のある方なら、本書はさらに面白く読めるでしょう。

なぜなら国家を支えるのは軍事力だけではないからです。

国家への信頼。

共同体意識。

歴史認識。

国民感情。

こうした目に見えない要素が国家の意思決定に大きく影響します。

私は読みながら、

「これは右翼研究ではなく民意研究だ」

と感じました。

イスラエル編が特に面白い理由

個人的に最も興味深かったのはイスラエル編です。

現在のガザ情勢。

対イラン政策。

中東情勢。

これらを理解するためには、イスラエル国内政治を知る必要があります。

本書では、

  • ネタニヤフ
  • リクード
  • 宗教シオニスト党
  • ベン・グヴィル

などについても触れられています。

中東問題やイスラエル政治に関心のある方なら、この章だけでも読む価値があります。

『世界の右翼』から学べること

  • 欧州保守政党の全体像が理解できる
  • AfD躍進の背景が分かる
  • 国民連合の戦略が見える
  • トランプ現象との共通点が分かる
  • 移民問題と国家アイデンティティの関係が理解できる
  • イスラエル右派の思想的背景が分かる
  • 国際ニュースを構造的に読めるようになる

こんな方におすすめ

  • 国際情勢を深く理解したい方
  • 欧州政治に関心がある方
  • 地政学や安全保障を学びたい方
  • トランプ現象の背景を知りたい方
  • ニュースを構造的に読みたい方

まとめ|世界を二元論で見ないための一冊

本書を読んで改めて感じたのは、世界は単純な二元論では理解できないということです。

右翼か左翼か。

保守かリベラルか。

善か悪か。

現実の政治はそんな単純な話ではありません。

大切なのは、まず理解すること。

そのうえで判断することです。

『世界の右翼』は、ニュースの見出しだけでは見えてこない世界の構造を教えてくれる一冊でした。

欧州政治、国際情勢、安全保障に関心のある方にはぜひおすすめしたいと思います。


書籍情報

『世界の右翼―欧州保守政党でわかる国際情勢』
著者:内藤陽介
出版社:ワニブックス
発売日:2026年5月27日
ページ数:256ページ

Amazonで見る

(エンリケ)

追伸

国際情勢を学ぶとき、最も危険なのは「知ったつもり」になることです。

ニュースの向こうには歴史があります。

国民感情があります。

そして、それらが政治を動かしています。

この本で、いま一度世界地図を広げてみませんか。

『世界の右翼―欧州保守政党でわかる国際情勢』
著者:内藤陽介
出版社:ワニブックス
発売日:2026年5月27日
ページ数:256ページ

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