竹本三保 「任務完了」 並木書房

2020年11月24日



「どんなに苦しくても、どんなに腹が立っても、
笑顔でいなければ、自分も周りの人たちも決して幸せにはなれない」
こんにちは。エンリケです。
海自女性将校の草分けで、退役後は大阪で高校の校長先生になった元一等海佐。
彼女が自衛官としての人生を振り返り、印象に残る出来事や考えたこと感じたことを書き連ねたエッセイ集を紹介します。
トピックは全部で16個あり、トピックごとに話は完結しています。
「具体的・分かりやすい・実践的」な内容で、読み手を飽きさせません。
「女性将校の眼から見た自衛隊」を感じ取ることもできます。
彼女は退役後、なぜ教職を目指したのでしょう?
関心ありませんか?
http://tinyurl.com/6r6bm6w
110311。東日本大震災発災。
防衛省自衛隊は、創設以来はじめて、
即応予備自衛官に対する招集命令を発しました。
被災地のひとつ青森県では、発災後まもなく、青森地方協力本部が127名の即自一人一人の安否確認と、災害招集に応じるか否かの内諾取り作業を始めました。
<第一次招集として招集命令書を六十名に郵送または手渡しで交付し、二三日(水)朝八時までに出頭者は五八名になりました。第一次招集は全国で一九八名でしたから、青森県は一番の大勢力です>(P11)
その後も招集は行われ、青森からは、のべ二五六名の即自が出動。
それぞれの持ち場で任務を完遂しました。
当時の青森地方協力本部長が著者です。
一度ならず二度までも「のど自慢」に出ようとしたり、
歌を作ったり、
地元テレビ局やラジオ番組に出演したり・・・などなど、
ひとことでいえば名物本部長で、
わが自衛隊広報を大いに盛り上げた方です。
そんな方ですが、
江田島の幹部候補生学校を出た頃、女性自衛官は遠洋練習航海に参加できないばかりか、艦に乗ることすら出来なかったそうです。
その後もいろいろ嫌な思いをされたようですね。
ここらあたりのことが、本著にはさらりと描かれています。
さてこの本。キモは
「7 女性としての悩み」です。
いかなる組織であっても、女性を戦力として活用しなければやってゆけない時代になりました。
いっぽうで、どう考えても女性には無理(不得意?)な分野が存在します。
組織が最大の能力を発揮するため、男女を同じ環境に置いてはならない分野があるのも事実です。
どうすればいいんだ???
ここで著者の話を聞いてほしいんです。
「男女区別平等論」という提言です。
男女は社会的に平等だけど、男性と女性は人間の営みに必要な資質を分かち合っている。だから両者は異質なものとして区別しなければならない。
といって、すべての自衛隊職域・配置を男女平等にしろというのでない。
女性特有の能力を発揮・活躍できる場を探るべきではないか。
という内容です。
「7 女性としての悩み 」には、この提言の詳細が記されてます。
著者は自らの自衛官人生を通じてこの提言を実践し、結婚、出産、子育ても果たしました。いうなれば、女性自衛官の今につながる道を、自らを実験台にして切り開いてきたわけです。多くの後輩女性自衛官から慕われているのは自然なことといえましょう。
また、ご自身の体験から得た「仕事のコツ、組織を動かす心構え」を描いた
14 後輩に残すもの・・・P186
15 指揮・統率の真髄・・・P203
も、現場で実践していた方ならではの活きた知恵です。
どういう仕事をされていても役立つアドバイスでいっぱいです。
それではページをめくってゆきましょう
□もくじ
まえがき
 1 東日本大震災への対応・・・4
 2 心のふるさと ”江田島”・・・21
 3 ”女は乗せない戦艦(いくさぶね)”との闘い・・・32
 4 米軍から学んだこと・・・39
 5 オペレーション分野への挑戦・・・58
 6 英語で苦労したこと・・・83
 7 女性としての悩み・・・93
 8 家族の絆と友人に恵まれて・・・110
 9 リクルートの現場・・・126
10 自衛隊をPRすること・・・138
11 地域に根ざした活動・・・148
12 世界に羽ばたく女性たち・・・164
13 わたしの健康法・・・176
14 後輩に残すもの・・・186
15 指揮・統率の真髄・・・203
16 新たなミッション・・・214
□著者
竹本三保(たけもと・みほ)
昭和54年奈良女子大学卒業。同年海上自衛隊幹部候補生学校入校(第4期婦人課程)、55年横須賀教育隊第2部教官、56年幹部候補生学校教官、平成10年厚木航空通信隊長、14年自衛隊兵庫地方連絡部募集課長、16年舞鶴システム通信隊司令、18年システム通信隊群司令部主席幕僚、19年呉システム通信隊司令、20年中央システム通信隊司令、23年12月退官(1等海佐)、24年4月より大阪府立学校長に就任予定。
 ミポリンこと竹本三保・元1佐の自衛官人生は、常に複数任務を抱えたものではなかったでしょうか。「女性自衛官の草分けとしての任務」そして「配置された職場で役割を全うする任務」。もしかしたら「母親・妻としての任務」も加わるかもしれません。
 そんな人生を振り返った本著は、
ひたむきに、全力で、一生懸命、明るく
目の前の出来事に取り組んできた
著者の生きざまをひしひしと伝えます。
さわやかです。
エッセイ集が面白くなるかどうかのキモは
「著者がどこまで自分という人間を正直に打ち出せるか?」
にあるとわたしは思います。
本著には、
読み手を退屈させる
「作為」「半端なウソ」「媚び」
が一切ありません。
楽しいです。
一話一話が読みやすい文章で適度な長さという点も嬉しいです。
第一級の軍人エッセイである本著。
一読をオススメします。
大任務を完了し、次の任務完遂を目指す著者を応援します。
竹本さんには、これからもぜひ、よみものを書いてほしいです。
きょう紹介したのは
「任務完了」
著:竹本三保
発行:並木書房
発行日:2012/3/12
http://tinyurl.com/6r6bm6w
でした。
(エンリケ)
追伸
冒頭で引用した言葉は、本著あとがきにある著者の言葉です。心打たれました。
ちなみに著者は現在、大阪府立狭山高等学校の校長先生です。
http://tinyurl.com/6r6bm6w