第6戦車大隊最後の訓練検閲(1)

2023年6月19日

本州から戦車部隊がどんどん消滅していることに伴い、74式戦車を目にする機会も減少の一路をたどっています。

今月5日には北海道の第2師団第2戦車連隊で74式戦車を運用していた第5中隊が廃止、全国で唯一74式、90式、10式という3種類の戦車を運用していた歴史に幕を下ろしました。

また、その10日後の3月15日には74式戦車を運用していた滋賀県の第3師団第3戦車大隊が廃止。第3偵察隊と統合され、16式機動戦闘車、通称MCVを装備する偵察戦闘大隊へ改編されました。

2024年3月末までに学校や教導隊を除き、本州に所在するすべての戦車部隊が廃止されるため、駐屯地記念行事などで74式戦車を見られる機会も残りわずかとなっています。そこで雑誌「丸」では74式戦車の特集を組み、その際に「74式戦車の訓練」というテーマで寄稿させていただきました。東北方面隊第6師団第6戦車大隊にとって最後の訓練検閲となった「平成30年度第1次師団訓練検閲」を取り上げたので、こちらメルマガでもご紹介したいと思います。

本題に入る前にちょっと余談を。先日の北海道取材で74式から10式まで時期の長短はあれどすべてに関わった方と話す機会があったのですが、砲弾がいちばん当たりやすいのは90式だと言われて驚きました。

圧倒的に10式だろうと思っていたのですが、本人いわく「10はめちゃくちゃ難しい」そうです。ハイテクの塊だけあって、乗員全員がその機能をフルに発揮できる操作をしないと、どれほど性能がよくても思い通りのところへ向かってくれないとのことで、話を聞いてなるほどと思いました。

さて、本題です。

2018年7月9日から13日まで、王城寺原演習場で平成30年度第1次師団訓練検閲が実施されました。

受閲部隊は第44普通科連隊、第6戦車大隊、第6施設大隊です。

編成完結式に続いて隊容検査、車両点検などを実施。そして受閲部隊は状況開始と同時に、遮光や防音の処理といった夜間行進の準備を整え、第44普通科連隊は約40キロの徒歩行進、第6戦車大隊は約150キロ、第6施設大隊は約170キロの車両行進を実施しました。

王城寺原演習場の集結地に到着後は、敵の有無の確認など集結する地域の安全化を図って占領、次の攻撃のための準備にかかりました。

王城寺原演習場は宮城県加美郡色麻町、黒川郡大和町と大衡村の3町村にまたがる、東北地方最大の大規模演習場です。

縦長の地形のため北海道の矢臼別演習場に次いで長い射程を取れるとあって、第13特科隊(日本原)等が射撃訓練のために遠路はるばるやって来る演習場でもあります。また、小隊規模の市街地戦闘訓練が行なえる市街地訓練場も備えています。

(つづく)

(わたなべ・ようこ)

(令和5年(2023年)3月23日配信)