第6戦車大隊最後の訓練検閲 (2)

2023年6月19日

7月9日に始まった訓練検閲。7月11日朝の時点で戦況は進んでおらず、この日は戦車の動きもないことが予想されました。そこで第6戦車大隊が展開している地域に行ってみると、ちょうど74式戦車の擬装が行なわれているところでした。

バラキューダで覆うだけでなく天然の枝木もふんだんに使うことでより擬装効果が見込めますが、午前中に切って偽装に使った木は午後になるとどんどん枯れて変色してしまうので、取り換えなくてはいけません(ここで面倒がっては偽装の意味がなくなってしまいます)。第6戦車大隊長は今回の訓練検閲について「今まで積み重ねてきた練成の成果を十分に発揮して有終の美を飾りたい」と語っていました。

2018年の時点で、第6戦車大隊は大和駐屯地に所在し、74式戦車を装備しています。大隊本部、本部管理中隊、2個の中隊で編成されていますが、2019年3月末に第6師団の機動師団化の際、第6戦車大隊は廃止されることが決まっています。
1962年から半世紀以上にわたって続いて来た部隊の幕引きにふさわしい、大隊長の言う「有終の美」を飾れるかは今後の攻防にかかっています。

大隊長車を後にして別の場所に向かうと、敵に撃破された74式戦車に出くわしました。先ほど戦車回収車を見かけたのですが、おそらくこの戦車の回収のためにやって来たのでしょう。
今回の対抗部隊は多賀城駐屯地所在の第22普通科連隊が担当していますが、この場で戦車を2両撃破したといいます。ちなみに第22普通科連隊2019年に第22即応機動連隊に改編され、現在は即応性と機動力を高めた諸職種協同部隊となっています。

攻撃側がやって来るのを待ち構える防御側の対抗部隊が有利であることは確かですが、防御側もこうして戦車を撃破したことによって自分たちがここにいることが相手に知られるので、リスクはあります。場所を特定される前に素早くその場から離脱すれば、それはそれでその先に主陣地があるのかと読まれてしまいます。
撃破された2両は状況終了まで火力を発揮することはかなわなくなりましたが、少なくとも撃破されたことで対抗部隊の位置の特定には一役買いました。

戦車同士の戦闘の場合、3両で1両を狙うのが基本のため、どんな機種であろうが狙われた1両はほぼ撃破されます。しかし撃った側は自分の居場所が相手に知られるので、今度は自分が狙われることになります。「撃ったら撃たれる」は戦車のセオリー、一発必中が謳われるのにはこういった戦車の戦い方によります。

ただ、戦車を狙っているのは戦車だけではありません。戦車がもっとも恐れるのが生身の歩兵なのは、戦車の中にいると歩兵がどこまで近づいているのかわからないからです。
まったく気づかないまま忍び寄られ、戦車内に手りゅう弾1つ落とされたらそれで終わりです。
また、戦車だとエンジン音が聞こえれば距離もだいたい予測できるそうですが、歩兵の持つ対戦車ミサイルで撃たれるのは予測もできず、撃たれた後も場所が特定できないので、戦車としては嫌な存在に違いありません。さらに航空機からの攻撃にも警戒しなければいけません。今はドローンの脅威もあります。