2015年陸海空自衛隊の装備と運用(9)

2015年度の防衛予算に含まれる新規事業を中心に、2015年の陸海空自衛隊の装備と運用についてご紹介する第9回目です。
先週は、米国との共同訓練の話でした。今回は大規模災害などへの対応についてです。
 茨城県常総市への災害派遣が終わり、自衛隊は現地から撤収しました。シルバーウイークには多くのボランティアの方も駆けつけたようですね。箱根に続き先日は阿蘇山も噴火、先週は津波がチリから半日かけて太平洋沿岸に到達しました。こんなに小さな島国なのに、自然災害は本当に多いです。
 2015年度1四半期、自衛隊の災害派遣の総件数は56件であり、派遣規模は延べ人員2312名、延べ車両147両、延べ航空機87機でした。
 その内訳は、山林火災に係る災害派遣4件、消火活動(近傍火災)にかかる災害派遣8件、火山災害に係る災害派遣1件、捜索救助(行方不明者捜索)にかかる災害派遣3件、急患輸送(緊急患者空輸)にかかる災害派遣39件、その他(災害地等の状況偵察)にかかる災害派遣1件でした。
 特に、緊急患者空輸の災害派遣では、82%(32件)が沖縄県において派遣されたものでした。ちなみに昨年同時期の災害派遣は81件、急患輸送34件(うち沖縄が30件)、人員9662名、車両872両、航空機203機です。多いです。
 そう、昨年の2014年も、日本が災害大国だと改めて思い知らされた1年でした。
2月には広域にわたって大雪に見舞われ、交通機関はマヒ、孤立する地域が続出し、山梨、群馬、福島(2か所)、長野、静岡、東京、宮城、埼玉の各都県からの災害派遣要請を受けました。派遣規模は延べ約5060名、車両延べ約990両、航空機延べ131機、救助者数73名、物資輸送約44トン、除雪距離約281.2キロにおよびました。何日も降り続いたわけではなく、たった1日か2日間の雪が、都市としての機能の多くを奪ってしまったのです。
 8月には広島市で大雨による土砂災害が発生、第13旅団を中心に人員延べ約1万4965名、車両延べ約3235両、航空機延べ66機が派遣され、人命救助、行方不明者捜索、入浴支援などを行ないました。
 さらに9月27日には長野県御嶽山が噴火、災害派遣要請を受けた松本駐屯地の第13普通科連隊がまずFAST-Force(人員約40名、車両約5両)を派遣。第12旅団は13連隊を中心とした災害派遣部隊を編成し、10月16日に撤退するまでに人員延べ7150名、車両延べ1835両、航空機延べ298機を派遣、23名を救助し56名の心肺停止者の搬送を行ないました。この災害派遣は標高3000メートル、火山灰、有毒ガスという、派遣された隊員にとっても極めて過酷な環境下での活動でした。また、災害派遣に初めて89式装甲戦闘車が派遣されたことでも注目されました。89式装甲戦闘車は全国で第7師団の第11普通科連隊と富士教導団普通科教導連隊にしか配備されておらず、そもそもの車両数が少ないのです。当時は火山弾の直撃を受けて多くの死傷者が出ていたため、普通科教導隊の89式装甲戦闘車を緊急時の輸送用として第12旅団へ臨時編入したのでした。
 地震に台風、集中豪雨、豪雪に噴火と、この先もどのような災害が起こるかわかりません。自衛隊は各種災害に際して十分な規模の部隊を迅速に輸送・展開するとともに、統合運用を基本としつつ、要員のローテーション態勢を整備することで、長期間にわたって持続可能な対処態勢を構築するとしています。その一環として、2015年は災害対処拠点となる駐屯地・基地等の機能維持・強化のため、市ヶ谷庁舎被災時の代替機能の整備を行ないます。これは首都直下地震による被災に備え、朝霞駐屯地を代替地として活用できるよう同駐屯地情報通信基盤の拡充を図るものです。海自は海上作戦センターの整備として、横須賀の船越地区に自衛艦隊司令部等の新庁舎を建設するための準備を進めます。
 大規模・特殊災害等に対応する訓練としては、離島における台風災害等に対して統合運用による災害対処能力の維持・向上を図る離島統合防災訓練、国内の大規模災害発生時における在日米軍等との連携要領の確立、震災対処能力の維持・向上を図る日米共同統合防災訓練等を実施します。6月7日には南海トラフ地震が発生した場合を想定した平成27年度日米共同統合防災訓練、6月29日~7月3日には首都直下地震を想定した平成27年度自衛隊統合防災演習、8月26日~30日には日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震を想定し自衛隊、在日米陸軍、第3海兵機動展開部隊及び豪州軍が参加したノーザン・レスキュー2015が開催されました。
 次回はこの連載の最終回、グローバルな安全保障環境の改善についてです。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)9月24日配信)