Re:深夜タクシー問題と自衛官(イーグルに~さん)
深夜タクシー問題については、まさにメールで記載されていたとおりです。(*)
確かに自衛官には、入隊以来培われてきた使命感やモラルが高い人物が多いこ
とは、事実だと思います。しかし、それだけではない側面もありますので、少
し補足しておきたいと思います。
(*)http://okigunnji.com/cat18/200/post_501.html
数年前の私の経験では、各幕でタクシーチケットが使用できるのは、基本的に
は1佐の班長クラス以上で、それも予算業務が最盛期に入り、財務省対応の待
機等で深夜まで拘束される場合等年数回程度です(統幕は、内局並びというこ
とで枠も少し多く配分されるようですが・・)。2佐以下の小幕僚は、深夜同
じ方向に帰る場合、同乗させてもらうことはありますが、翌朝早く満員電車で
登庁することを考えると、泊まった方が楽な面もあります。(将に深夜中心で
朝10時以降に登庁する財務省の役人や内局の部員への対応と8時には課業が
開始される部隊の両方に対応する必要があるためです。)
※ 床に毛布を敷いて寝るのは、自衛官にとってはそんなに抵抗はないですし、
六本木時代と違って市ヶ谷の職場の床は、適度な固さなので快適ですよ(笑)。
また、深夜仕事が一段落してから?同僚や先輩、上司等と軽いつまみで一献酌
み交わして(部隊だと当然指定場所・指定時間以外の飲酒は禁止されています
が、・・)、様々な経験談等を聴くのは、将来指揮官として現場に立つ場合の
良き勉強にもなり、楽しいものです。そして部隊にいても演習、当直、海外勤
務等で家を留守にすることは家族にとっても慣れているので、抵抗感も薄いの
が現状です。更に自衛官の場合、2,3年も中央で勤務すれば、一度部隊や機
関に戻れたり入校の機会があるというように勤務にメリハリがあるから、我慢
できる面があると思います。
逆に悲惨なのは、若い頃はボロ雑巾のように使われ、基本的には定年まで中央
中心に勤務させられるキャリアのシビリアンです。何人かのシビリアンと酒を
飲む機会もあるので、彼等の気持ちを聴くこともありますが、東大卒のキャリ
アでも、同期の民間企業で勤務するもの比較すると、年収(+民間では自由に
使える交際費)が若い頃では著しく低く、優秀な人材が確保できないというの
が最近の傾向らしいです。例えば、つい最近まで、内局の部員は自衛官と同様
に俸給表の中に21.5時間分の超過勤務相当分が組み込まれ、いかに勤務時
間が長くても超過勤務手当は支給されませんでした(事務官は別です。)が、
2年前から部員クラスの人材確保のために超過勤務分は実態に即したものにな
ったようです。
例え、防衛行政に対する使命感をもってキャリアで入省しても、二種採用の事
務官が地方で比較的楽な勤務に就いているのに、同じような給料でボロ雑巾の
ように使われる自分達の存在は何だ、何等かの特権がないとやっていられない
というという気持ちが、深夜タクシー問題の背景にあるのではないでしょうか。
(これは、他省庁の中央勤務者にも言えるかもしれません。)無論それが道徳
的に良いとは思いませんが、・・。また、便宜供与は別として、我々自衛官と
は文化も違うため、ほぼ早朝になっても数時間でも家に帰らないと精神的なメ
リハリが付けられないこともあるようです。
ついでに一言。よく内局と各幕が対立しているようなイメージが強いと思いま
すが、昔は兎も角、最近はそうでもないというのが私の感想です。各幕で勤務
する自衛官は、当然部隊が任務遂行する上での軍事的合理性を追求し、阻害要
因がない環境作りや任務の特殊性に応じた隊員の処遇改善のための予算要求等
の仕事をしています。しかし、その要求を通す上で、政治的配慮や予算要求上
の理由付けとのギャップが存在します。そのギャップを埋めてくれるのが内局
のシビリアンであり、部隊の実情がわからないシビリアンにとっても制服自衛
官がいないと仕事になりません。ギャップを埋める上で、当然意見の対立があ
りますが、レベルを上げての調整等で結果的に落ち着くところに落ち着いてい
ます。逆に自衛官が、部隊や軍事的合理性を忘れ、国会対応といったドロドロ
とした政治の世界や予算要求の屁理屈の世界に浸かってしまえば、国を危うく
すると思います。そして我々に代わって、それをしてくれるのが、シビリアン
であるという見方を私はしています。
昔、学生時代に海上自衛官のある教官から聴いた言葉で、締めくくります。
「サイレント・ネイビーという言葉を知っているか。英国のネルソン提督以来
の伝統で、国内の政治的なことに関心を向けず、ただひたすら遠く海上にあっ
て祖国のために黙々と自分の職務を果たす、これがサイレント・ネイビーの真
の意味であり、我々自衛官のあるべき姿だ!」
(イーグルに~さん)