【本の紹介】『国家戦略で読み解く日本近現代史』黒川雄三(著)


『国家戦略で読み解く日本近現代史』
黒川雄三(著)
出版年月日:2019/09/06
判型・ページ数:A5・300ページ
発行:芙蓉書房出版
https://amzn.to/3pLXoZB

こんにちは、エンリケです。

『令和の時代の日本人への教訓
ー国家戦略で読み解く日本近現代史ー』

と題された本著最大の特徴は、
幕末・明治から平成まで、我が国の歩みを「国家戦
略」を切り口にして分析している点です。
過去から現在までが8つに区分されています。

そのため、たとえば

・日露戦争から一次大戦までの時代、
・ベルサイユ・ワシントン体制下の時代

という分類。

しっくり感ありませんか?

さっそく内容を見ていきましょう。

◆目次

序章 幕末日本の国家戦略ー明治維新が現在の経
済・文化大国を産んだー 11

 1.幕末日本を取り巻く国際環境 12
  (1)幕府を取り巻く国際経済の環境 12
    東アジアの経済圏は戦国期から存在した/
鎖国はただ徳川家を守るために行われた/鎖国太平
は百年しか続かなかった/西力東漸の最大の原因は
第一次産業革命/海外貿易は海軍力によって拡大さ
れた
  (2)幕末日本の外交・安保環境 16
    欧米列強が東アジアに来襲/韓国・日本は
東北アジアの戦略的要衝

 2.幕末の外交・安保戦略 18
  (1)幕末日本社会の状況 18
    幕藩システムの矛盾が顕在化していく/シ
ステムの矛盾は経済から始まった
  (2)幕府の外交・安保戦略 21
    激烈・壮大な「十五年騒乱」の始まり/外
交・安保のイデオロギー理論(四つの戦略理論)と
は/二大闘争の時代区分/右往左往した幕府の戦略

 3.幕府の経済・通商戦略 32
  (1)幕末期の国内経済状況 32
    財政赤字とインフレが幕府経済を潰した/
都市商人から地方商人の時代に/開港経済(通商貿
易)の時代の功罪
  (2)幕府の経済・通商戦略 35
    幕府に経済戦略はなかったが、経済政策は
あった/田沼(意次)の改革が最も革新的/幕府の
通商・産業政策

第1章 明治新政府の国家戦略ー日清戦争までー 41

 1.明治初期の国際環境ー外交・安保・経済の環
境 41
    ヨーロッパ大変動の時代(ヨーロッパの春)/
帝国主義と植民地獲得競争の時代

 2.明治新政府の外交・安保戦略(日清戦争まで) 43
  (1)明治新政府の国是・国家目標・国政の大
方針 44
    開国進取・富国強兵・列強化が大目標
  (2)明治新政府の外交の基本方針 46
    列強化と不平等条約改正が外交の大命題
  (3)外交・安保戦略としての大陸政策(日清
戦争まで) 46
    太平洋戦争の遠因は幕末・明治にあった
  (4)第1期の大陸政策(日清戦争まで) 48
    征韓論=朝鮮半島への「こだわり」の始ま
り/日本による韓国開国の軍事・外交工作/韓国の
政変と日本の対清軍備の強化/日本の国軍の建設と
強化/日清の対立の激化と日本の戦争決意/日清戦争
直接の契機は東学党の乱
  (5)明治新政府の安全保障・国防戦略・国防
方針 56
    明治新政府の国防方針/守勢防御の戦略方
針/守勢防御から前方防衛(大陸防衛)戦略へ
  (6)不平等条約の改正 59
    押し付けられた不平等

 3.新政府の経済・通商戦略(日清戦争まで)63
    三つの戦略目標と八つの政策目標/財政赤
字と貿易赤字の解消こそが大命題/官営(国営)か
ら民営重視への転換/現代に通じる社会・金融イン
フラの整備/日本の技術を先導された軍需産業

第2章 日清・日露戦間期の国家戦略 73

 1.戦間期の北東アジアの国際環境 73
    ロシア主導の三国干渉/ロシアと清・韓と
の密約/列強の中国分割と北清事変(義和団の乱)
/ロシアの満洲軍事占領

 2.外交戦略 78
    大陸政策と南方政策/南方政策(北守南進
戦略)への一時転換/日英同盟の締結/ロシアとの
最終交渉と日露開戦

 3.安保・国防戦略 84
    国土防衛戦略から大陸攻勢戦略への転換/
日露戦争での攻勢戦略/太平洋戦争の敗戦は日露戦
争の勝利に始まった

 4.戦間期の経済・通商戦略 89
    軍備と重工業の育成が大命題/重工業化に
必要な金本位制/双子の赤字に苦しむ日本

第3章 日露戦争後の日本の国家戦略ー第一次大戦
までー 95

 1.日本を取り巻く国際環境 95
  (1)ヨーロッパ情勢 95
    ヨーロッパでの対立の激化
  (2)日米関係 97
    米国との対立の芽生え/米国の対日攻勢の
始まり/日米対立の進行
  (3)日露関係 101
    日露の協調と相互の警戒
  (4)日英関係 102
    空洞化の始まり
  (5)日韓関係 104
    韓国併合のプロセス

 2.外交戦略 107
  (1)大陸政策 107
    日本の満洲支配/満洲支配の積極化
  (2)日露戦後の外交戦略 110
    外交の基本は列強との協調
  (3)辛亥革命と大陸政策 112
    辛亥革命に乗じた日本
  (4)第一次世界大戦と大陸政策ー日本、二十
一カ条の爆弾要求を発す 114
  (5)中国政策の転換とロシア革命の勃発ー日
本、ロシア革命に軍事介入する 116

 3.安保・国防戦略 119
  (1)国家目標、国家戦略と国防方針
    北進と南進が国家の基本戦略/想定敵国と
情勢判断

 4.通商・経済戦略 125
  (1)国内の経済環境 125
    二つの危機、双子の赤字に苦しむ日本
  (2)対外経済の環境 126
    貿易赤字の拡大/資本収支はなぜか黒字
  (3)通商・経済戦略 128
    日露戦後経営/正貨危機と財政危機が切迫
した/産業の寡占化と財閥(コンツェルン)の発展

第4章 ベルサイユ・ワシントン体制下の日本の国
家戦略ー1927年の恐慌までー 133

 1.第一次大戦後の国際環境 133
    日米対立の激化
  (1)日米関係 135
    四国借款問題/ベルサイユ講和会議/ワシ
ントン軍縮会議/ワシントン会議・米外交への大反

 2.外交戦略 141
    国際協調時代の幕開け/四国借款団と大陸
政策

 3.安全保障・国防戦略 144
  (1)安保・国防環境の大変化 144
    戦争の様相が大きく変わった/海軍部内の
対立/陸軍部内の対立
  (2)帝国国防方針 160
    国防の本義/帝国国防方針/情勢判断/想
定敵国別の脅威度の判断

 4.通商・経済戦略(世界恐慌まで) 153
  (1)大戦期とその後の経済環境 153
    大戦ブーム、大正の「神風」が吹いた/重
化学工業化の進展/物価の急騰と通貨の膨張/一九
二〇年の反動恐慌/日本経済の実態と実力
  (2)日本の通商・経済戦略 158
    二大政党政治の戦略/国際収支の危機と一
九二七年の金融恐慌

第5章 昭和初期日本の国家戦略ー日中戦争までー 163

 1.昭和初期の国際環境 163
  (1)外交環境 163
    日本の国際的孤立とソ連の軍事大国化/日
米関係/日ソ関係

 2.外交戦略 171
  (1)幣原外相の国際協調外交ー三つの「外交
方針」と四つの「外交原則」、二つの「基本原則」 171
  (2)田中軍人内閣の外交政策・大陸政策ー満
洲事変のシナリオが出来上がる 174
  (3)中国の国権回復運動と満洲事変ー追い詰
められた日本と軍部の独走 176
  (4)犬養政友会内閣の外交政策ー軍人テロの
横行と政党政治の終焉 177
  (5)斎藤軍人内閣の外交政策ー日中戦争への
導火線が生まれた 178
  (6)広田弘毅の外交政策ー陸軍に足をとられ
た広田外交 179
  (7)無条約時代の国家戦略ー日本の運命を決
定した「国策の基準」 181

 3.安全保障、国防方針策定(改訂)とその経緯 183
  (1)石原大佐の日米決戦戦略と陸海軍の対立 183
  (2)海軍の国策要綱と陸海軍の妥協 186
  (3)帝国国防方針の策定(改訂)の経緯 187

 4.帝国国防方針 188

 5.通商・経済戦略 191
  (1)井上準之助の経済政策 191
    金本位制への復帰/世界大恐慌と金本位制
の崩壊
  (2)高橋是清の経済・通商戦略 194
    高橋財政の登場/日銀引受国債や赤字国債
の発行政策/低為替と高関税による保護主義/産業
構造の変化

第6章 八年戦争期の国家戦略ー日中戦争から終戦
までー 199

 1.一九三〇年代のヨーロッパ情勢 199
    激動するヨーロッパ

 2.日中戦争期の外交・軍事戦略 202
    日中戦争(支那事変)から太平洋戦争へ

 3.近衛(第一次)内閣の外交戦略 208
    陸軍と日中戦争処理に苦闘する近衛

 4.第二(三)次近衛内閣の外交戦略 211
    松岡外交と日米開戦

 5.太平洋戦争と国家戦略 217
  I.戦争と外交の戦略 
   (1)戦争の国家戦略 217
     戦争指導計画と戦争終結の腹案
   (2)外交戦略 219
     大東亜共同宣言
  II.攻勢期日本の軍事戦略
   (1)初期南方攻略作戦とハワイの奇襲 220
   (2)外郭要地に対する作戦 221
     大拡張戦略の失敗/ミッドウェイの攻略
戦/ガダルカナルの攻防戦
  III.防勢期日本の軍事戦略
   (1)太平洋正面の戦備強化と連合軍の反攻 223
     南東太平洋正面(ソロモン群島、ニュー
ギニア)の防備/中部太平洋正面(マレーシア、ギ
ルバート群島)の防備
   (2)絶対国防圏の設定ー実体なき防御ライ
ンの設定 225
   (3)絶対国防圏の「前哨地域」の失陥ーマ
ーシャル。ギルバート、東部ニューギニアの喪失 226
   (4)絶対国防圏(マリアナ)の失陥 227
     サイパンとグアムの喪失
   (5)フィリピンの失陥ーレイテ決戦の敗北 228
   (6)ビルマの失陥ーインパール作戦の悲劇 229
   (7)日本軍の戦略思想ー教条主義の失敗 230

 6.八年戦争期の通商・経済戦略 232
     戦時統制経済への転換/統制経済の展開/
統制経済の破綻と敗戦

第7章 戦後昭和期日本の国家戦略ー大発展した戦
後昭和期の日本ー 237

 1.外交戦略 237
  (1)敗戦と占領政策ーアメリカによる占領は
日本の復興にとって僥倖だった 237
  (2)東西冷戦と朝鮮戦争ーアメリカ、占領政
策を大転換する 238
  (3)対日講和と日米安保条約ー吉田ドクトリ
ン(国家戦略の原点)の誕生 239  
  (4)鳩山・岸内閣と日米安保の改訂ー外交三
原則で東南アジア市場を再開拓 240
  (5)池田・佐藤内閣と経済の大躍進ー所得倍
増と沖縄返還 242
  (6)田中・福田内閣のアジア外交ー福田ドク
トリンと日中国交回復 243
  (7)環太平洋構想と莫大な海外経済支援ー日
本が東アジアの経済発展を先導し成功させた 244
  (8)国際巨大経済酷寒い本と日米経済摩擦ー
プラザ合意、前川レポートからバブル崩壊へ 245

 2.安保戦略 246
  (1)自衛隊の発足と国防の基本方針ー長期・
具体的な防衛計画や有事法制は作られなかった 247
  (2)防衛計画の大綱以前の防衛計画(一九五
八年~六〇年) 148
  (3)防衛計画の大綱以前の防衛・軍事戦略ー
専守防衛のドクトリン 250
  (4)防衛計画大綱の初度制定ー基盤的防衛力
構想が出現した 252
  (5)日米ガイドラインの初度制定ー日本の軍
事戦略が公表された 253

 3.経済・通商戦略 254
  (1)占領軍の日本経済改革ー東西冷戦と朝鮮
戦争が神風となった 254
  (2)焦土日本の経済復興ーハイパーインフレ
の克服と生産力の増強 255
  (3)ドッジ不況と朝鮮特需ー戦後第二の神風
が吹いた 255
  (4)史上初めて空前絶後の高度成長ー高度成
長の要因とは何であったか? 256
  (5)高度成長の終焉ー巨大経済大国からバブ
ル崩壊へ 258

第8章 平成日本の国家戦略ー衰退する平成期の日
本ー 261

 1.国際環境 262
    冷戦の終結と紛争・テロの多発時代/「多
国間協調」と「自国ファースト」のせめぎ合い

 2.外交戦略 266
  (1)湾岸戦争での失敗と橋本内閣の外交ー米
軍の有事後方支援が可能になった 263
  (2)日米関係の強化と小泉内閣の外交ー世界
における日米の戦略目標が設定された 263
  (3)安倍内閣の戦略外交ー集団自衛権が限定
的に容認された 264

 3.安保戦略 266
    日本の安保大変革の一五年を振り返る/日
米同盟が大変革した/大きく拡大・深化した日米同
盟の歴史とは
  (1)二〇〇一年のQDRと2+2合意ー東ア
ジア太平洋有事における日米両軍の一体化 268
  (2)二〇〇六年のQDRと2+2合意ー同盟やパー
トナーとの多国間・多層的な安保協力 269
  (3)二〇一〇年のQDRと2+2合意ー地域やグロ
ーバルな日米の国際安全保障協力 270
  (4)二〇一二年、米国の新軍事戦略と2+2合
意ーオフショア戦略と第三オフセット戦略へ 271

 4.経済・通商戦略 274
    平成大不況と新興国の大成長/小泉内閣の
構造改革/アベノミクスの登場

終 章 日本未来の国家戦略

 1.二〇五〇年の世界のトレンド 279
    イスラム世界の貧困と紛争は世界の長期的
リスク/中国、米国、インドなど超大国の覇権化は
制限される

 2.ICTとAIの技術が産業と社会の構造を変
える 282
    ロボット・AIの開発と実用化が飛躍的に
進展する/ICT(情報通信)技術の分野は引き続
き全産業を牽引する/無人兵器技術の高速の進化は
倫理上の大問題

 3.日本の外交・安保戦略の方向性は? 284
    まずは集団防衛から始め、最終目標は地域
的集団安全保障

おわりに 291

参照文献 293

——————————

◆著者略歴

黒川雄三(くろかわ・ゆうぞう)
1945年京都生まれ(滋賀県立膳所高校卒)。防衛大学
校卒、指揮幕僚課程・防衛研修所(現防衛研究所)
一般課程(安全保障)修了。防衛大学校指導教官、
防衛庁陸上幕僚監部防衛部員、調査部員、調査部班
長、自衛隊地方協力本部長、陸戦学会理事、陸上自
衛隊幹部学校主任開発研究官などを歴任。元陸将補。
著書に『誰でもわかる防衛論』(2017年)、『近代
日本の軍事戦略概史』(2003年)、『戦略思想家事典』
(共著、2003年)、『21世紀マネジメント戦略』(200
6年)、論文に「孫子の軍事理論」(2005年)、「日中
戦争初期の戦略問題」(1999年)、「日中戦争中期の
戦略問題」(1999年)などがある。

本文最終ページに、著者の提案がコンパクトに示さ
れています。

 あらしめたい国家像(方向性・ビジョン)とは?
 あらしめたい社会像(方向性・ビジョン)とは?

について各々4つの項目が挙げられています。

今回ご紹介したのは、

『国家戦略で読み解く日本近現代史』
黒川雄三(著)
出版年月日:2019/09/06
判型・ページ数:A5・300ページ
発行:芙蓉書房出版
https://amzn.to/3pLXoZB

でした。

エンリケ

追伸

国家戦略という物差しで時代を区分するアイデアが
素晴らしいと感じます。


『国家戦略で読み解く日本近現代史』
黒川雄三(著)
出版年月日:2019/09/06
判型・ページ数:A5・300ページ
発行:芙蓉書房出版
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