東北方面隊震災対処訓練「みちのくALERT」の先見性

2020年5月1日

2008年に書かれた次の記事を久しぶりに読んだ。
<東北方面総監宗像陸将は今年4月、三陸沿岸地域を視察するとともに、各自治体の首長を表敬した。この地域は明治三陸津波やチリ地震津波など大きな津波を何度も経験し、多くの犠牲者を出している。これらの教訓から各種施設の整備を進めるとともに、市民参加の防災訓練を積極に行ってきた。視察を終えた総監は「自治体職員や住民の防災意識の高さを実感するとともに、蓋然性の高いこの状況に際し東北方面隊として何ができるのか。何を準備すればよいのか。」との想いを強くした。また、「この種訓練は現地で行うことに意味がある。」として実動訓練の具体化を指示した。
 自治体との調整担当者は、この「想い」を携えて年度当初から粘り強く調整を行った。広報や研修担当者はいかにしたら訓練をわかりやすく説明できるかに知恵を絞った。数日前から各会場では木材や鋼材が積まれ、被災者役としてのマネキンが埋められるなど、リアリティーのある訓練ができるよう準備された。また、見学に来た一般市民のために説明用の看板が立てられた。
 参加した隊員は計画段階から手探り状態であったが、傷病者として参加してヘリで空輸された島民の「このような訓練に参加でき、安心感を得た。このような訓練は必要だ。」との感想が表すように、訓練内容はまさに「震災対処活動を体験」出来るものとなり、それゆえに「住民や関係機関との危機意識を共有」できた訓練でもあった。>
http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/neahq/pastevent/20alert.htm
これは2008年の記事。
4年後に演習は現実となった。
2011年3月11日に発生した東北大震災では、みちのくALERTを通じて培われた能力がいかんなく発揮され、多くの人命が救われた。現実の事態は、ほぼみちのくALERTの想定通りで、訓練でやっていたことがそのまま活かせたという話も聞く。
軍の仕事は戦時は戦い、平時は訓練といわれる。
平時の訓練は戦時の戦いの源であり、戦時の戦いで得た教訓を平時の訓練で活かす。
訓練なき実動はない。
平時の軍は金食い虫という話も耳にするが、戦時、非常時に軍が最高の行動を発揮するには、いつ起こるかわからない事態に備えた平時の日々の訓練演習が不可欠なのだ。
日々の訓練演習なき軍の精鋭は存在しない。
そのための国家国民の理解、軍への投資は絶対必要なのだ。
あえて企業会計に例えると、国家の軍事力への投資は会社の資産を築く開発費に相当するといえよう。
軍事は、時間軸でも金銭面でも直接的でなく間接的に国富に寄与する。
こうう、目に見えないところを見る目も養った方がいい。
なつかしい「みちのくALERT」の記事を見てそんなことを感じた。