【本の紹介】『次の戦争を人間が決めない日』宮崎正弘(著)|AIは戦争だけでなく国家そのものを変え始めている
「AIは便利なツールである。」
そう考えているなら、本書はその認識を大きく覆してくれるでしょう。
宮崎正弘氏の最新刊**『次の戦争を人間が決めない日―AIが変えた戦争、AIが動かすアメリカ―』**は、AI技術の解説書ではありません。
本書が描くのは、AIが国家安全保障、外交、軍事、そして国家の意思決定そのものを変え始めている現実です。
OpenAI、Palantir、Anthropic、Anduril――。
いま世界を動かしているAI企業と、アメリカ、中国、トランプ政権、シリコンバレーの巨大資本がどのようにつながり、新しい世界秩序を形づくろうとしているのか。
その全体像を、宮崎正弘氏ならではの視点で読み解いています。
—
AIは「兵器」ではなく「国家戦略」になった
AIというと、多くの人はChatGPTや画像生成AIを思い浮かべるでしょう。
しかし現在、世界で進んでいる競争は、それとはまったく別の次元にあります。
AIは今や、
* 国家安全保障
* 軍事作戦
* 情報分析
* サイバー戦
* 国家の意思決定
を支える中核技術になっています。
つまり、戦争の主役は戦車や戦闘機だけではありません。
情報を収集し、分析し、判断し、指揮命令を下す「ソフトウェア」が勝敗を左右する時代へと移りつつあるのです。
—
現代戦を支えるPalantirという存在
本書で何度も登場する企業が**Palantir**です。
Palantirは軍や情報機関が扱う膨大なデータを統合・分析し、指揮官の意思決定を支援するソフトウェアを提供しています。
現代戦では、
「どれだけ強力な兵器を持つか」
以上に、
「どれだけ速く、正確に情報を処理できるか」
が重要になっています。
その意味で、Palantirは現代戦の頭脳とも言える存在です。
また、新興企業AndurilもAIを活用した無人兵器や監視システムを次々と実用化し、防衛産業の勢力図を書き換えようとしています。
—
宮崎正弘氏が追うのは「AI」ではなく「人間」
本書の魅力は、AI技術そのものを詳しく説明している点ではありません。
むしろ宮崎氏が追い続けているのは、
* 誰が資金を出しているのか
* 誰が誰と組んでいるのか
* どんな思想を持っているのか
* なぜその企業が急成長したのか
という、人間の動きです。
サム・アルトマン。
ピーター・ティール。
イーロン・マスク。
シリコンバレーの起業家たちは単なる経営者ではなく、国家戦略にも影響を及ぼす存在となっています。
この視点こそ、宮崎氏らしい読み応えと言えるでしょう。
—
米中AI戦争の本質とは何か
本書を読んで改めて感じたのは、米中対立の本質はAIを巡る覇権争いでもあるということです。
半導体。
データセンター。
AI開発。
巨大電力。
宇宙通信。
これらはすべて一つにつながっています。
軍事、経済、安全保障を切り離して考える時代ではなくなりました。
AIは戦争だけでなく、経済や外交までも左右する国家戦略そのものになりつつあります。
—
わが国はこの競争にどう向き合うべきなのか
本書を読みながら、私が最も考えさせられたのはわが国の立ち位置でした。
アメリカでは巨大AI企業が国家安全保障の中枢に入り込み、中国は国家主導でAI開発を加速させています。
一方、わが国ではAIは便利なサービスとして語られることが多く、安全保障との関係が十分に議論されているとは言えません。
もちろん、防衛省や企業、大学などでも研究は進んでいます。
しかし世界の競争は、私たちが想像する以上の速度で進んでいます。
わが国も「AIを利用する国」にとどまるのではなく、「国家戦略としてどう活用するのか」を真剣に考える段階に来ているのではないでしょうか。
—
こんな人におすすめ
本書は、AIの使い方を学ぶ本ではありません。
世界がどこへ向かっているのかを考えるための一冊です。
特に、
* AIと国家安全保障に興味がある方
* 軍事・外交・インテリジェンスを学びたい方
* 米中対立の背景を知りたい方
* テクノロジーが国際政治をどう変えるのか知りたい方
* 宮崎正弘氏の分析をじっくり読みたい方
には、非常に読み応えがあります。
まとめ|AIの時代に問われるのは「誰がAIを使うのか」
私は長年、軍事・外交・インテリジェンスに関する書籍を紹介してきました。
その経験から感じるのは、本当に価値のある本は知識を増やすだけでなく、「世界を見る視点」を変えてくれるということです。
本書も、まさにその一冊でした。
AIが世界を変える。
しかし、最後に決断するのは人間です。
誰がAIを握り、誰の利益のために使うのか。
その問いを考えることこそ、本書が読者に投げかける最大のメッセージではないでしょうか。
AIの進歩は止まりません。
だからこそ、私たちは技術そのものではなく、その背後にある国家戦略や思想、人間の意思を見抜く視点を持たなければなりません。
『次の戦争を人間が決めない日』は、その第一歩となる一冊です。
『次の戦争を人間が決めない日 – AIが変えた
戦争、AIが動かすアメリカ -』
宮崎正弘(著)
発行日:2026/6/26
発行:ワニブックス
判型・ページ数:四六判256ページ
価格:¥1870
https://amzn.to/3SUDNHM
(エンリケ)