【本の紹介】『マレー進攻航空作戦 1941-1942ー世 界を震撼させた日本のエアパワー』 マーク・E・ スティル 著 橋田和浩 監訳

真珠湾攻撃に先立つ「マレー進攻作戦」の壮絶な序
章──両陣営の熾烈な航空戦

マレー進攻作戦の緒戦で航空優勢を狙うわが方と阻
止をもくろむ連合国側。双方の視点で計画から戦闘
経緯までを克明に記録。

時は1941年、マレー進攻作戦が幕を開け、わが国と
連合国の軍事力がぶつかりました。この歴史的瞬間
を、わが方と連合国の視点から探求し、作戦計画か
ら壮絶な戦闘経緯までを緻密に記録します。

現在展開されているウクライナ戦争の航空戦を理解
する補助線になる内容であることはもちろん、監訳
者、訳者、解説者のほぼ全てが現役航空自衛官とい
うことからもわかるとおり、航空作戦の運用とはど
ういうものか、どういう特性を持っているのか、成
功のキーはなにかの理解に資する中身にもなってお
り、まさに「今活かせる航空戦史」といえます。

本著最大の特徴は「解説」「付録」といって良いと
思います。
正直言って、ここを読むためだけでも、この本を手
にする価値はあります。
詳細は以下の「目次」でご確認ください。

単に「横文字を縦文字に直した」だけの作品では本
著はありません。

『マレー進攻航空作戦 1941-1942ー世界を震撼させ
た日本のエアパワー』
マーク・E・スティル 著
橋田 和浩 監訳
出版年月日 2023/10/20
本体価格 本体2,500円+税
発行:芙蓉書房出版
https://amzn.to/3rZH9fr

おはようございます、エンリケです。

防大防衛学教育学群長の久保田空将補は冒頭で、露
のウクライナ侵略における航空作戦に関し、<なぜ
「航空優勢」の帰趨が明確でないのか>という問い
を取り上げ、本著を<一つのスコープと見て眺める
ことでも多くの示唆を得ることができるであろう>
とおっしゃっています。

また<今から約80年前に生起した航空作戦の教訓
から、目の前で今まさに進行している航空作戦につ
いても、より多角的に分析する視座を与えてくれる
と信じている>とされています。

まさに「歴史から学び今に活かす」です。幸か不幸
か、今はそれができる状況下にあるのですから、こ
ういう作品を通していま、真剣に取り組む価値があ
ると思います。

この本は、真珠湾攻撃に先立つマレー進攻作戦の緒
戦で航空優勢を狙う日本側とその阻止をもくろむ連
合国側。双方の視点で計画から戦闘経緯までを克明
に記録した航空戦史です。

わが国が展開した「電撃戦」の実際を克明に後追い
できます。
航空優勢確保が地上戦優勢のインフラとして機能し
ていたことがよくわかります。

世界的に著名なオスプレイ社が誇る「AIR CAMPAIG
N」のシリーズの完訳版です。このシリーズからは、
「バトル・オブ・ブリテン」に次ぐ2冊めの翻訳と
なります。

航空作戦の奥深い展開を一目で理解できる素晴らし
い図表、写真、図版75点が満載です。いつもながら
の充実した質感の冒頭カラー図表。その変わらぬ充
実度に嬉しさを隠しきれません!

「刊行によせて」で元防大防衛学教育学群長の北川
さんは、本著の監訳の特徴について
<航空作戦の運用に熟知した専門家の訳により、軍
事専門的見地から詳細な分析がなされたこと>と指
摘され、<航空作戦とはどういうものか、どのよう
な特性を有しているのか、成功の鍵は何か等々、理
解しやすく解説されている。読者にとって空の世界
における兵力運用に関する理解が少しでも深まれば
幸甚である>としています。

両陣営の視点から探る航空戦の構図

マレー進攻作戦の緒戦において、わが帝国陸海軍航
空隊が圧倒的な勝利を収めた要因とは何でしょう
か?

まず、わが帝国海軍機動部隊は、文字通り「恐るべ
き海軍戦力の集合体」であり、その優越性がこの戦
役で発揮されました。

洗練された航空ドクトリンを持ち、大陸での戦訓を
駆使していました。その経験から生まれた戦術は、
この進攻作戦でも驚くほど効果的に機能したのです。

しかも、航空戦では陸軍と海軍の戦力が見事に連携
し、統合作戦としての相乗効果を発揮しました。こ
の戦術の結集が緒戦における電撃的な戦闘を可能に
し、わが国に勝利をもたらす大きな要因の一つとな
ったのです。

■著者・監訳・監修者、訳者、解説執筆者

《著者》
 マーク・E・スティル アメリカ海軍退役中佐

《監訳・監修者》
 橋田和浩 一等空佐  航空自衛隊航空教育集団教
材整備隊司令

《訳 者》
渡邉 旭 三等空佐  航空自衛隊幹部学校航空研
究センター
小林伸嘉 二等空佐  防衛大学校防衛学教育学群
准教授

《解説執筆者》
村上強一 三等空佐  防衛大学校防衛学教育学群
准教授
福島大吾 LSAS-TEC(株) システムエンジニア
天貝崇樹 三等空佐  防衛大学校防衛学教育学群
准教授
平山晋太郎 三等空曹 航空自衛隊第7航空団司令部
由良富士雄 二等空佐 防衛大学校防衛学教育学群
准教授
伊藤大輔 三等空佐 航空自衛隊中部航空方面隊司
令部援護班長

史上空前の壮絶な戦いの全貌を網羅

本著には、「マレー進攻作戦」の記録が、日本と連
合国の視点から収められており、その熾烈な航空戦
の全貌が明らかにされています。このシリーズの素
晴らしさは、史実を通して戦の核心に迫ることがで
きる点です。

この戦闘が如何にして展開し、両陣営がどのように
計画し、実行し、反応したかを理解するうえで、こ
の本の三次元的図表の存在も非常に重要です。

「マレー進攻作戦」は作戦における航空戦の推移を
示す最高の例のひとつであり、航空戦の進化とその
影響を理解するうえで重要な材料といえましょう。
その核心に迫る情報を本著は提供しています。

真珠湾攻撃の前哨戦としての「マレー進攻作戦」が、
両陣営の視点から掘り下げられ、新たな洞察や知識
を提供し、歴史のページをひもとく手助けとなるこ
とでしょう。

わが国と連合国が矛を交わし、航空戦力がその真価
を初めて発揮したといって差し支えないこの歴史的
な闘いの真相を探求し、理解するうえでこの書籍は
非常に価値があります。本著の情報はあなたに新た
な視点・視座を提供するでしょう。

航空作戦をめぐる情報と洞察が必要な方々にとって、
このシリーズは真に貴重なものでしょう。それだけ
でなく、歴史に興味を抱く人々にも、戦争の舞台裏
と複雑な戦略、戦術がどのように絡み合ったかを理
解する手助けとなるでしょう。

航空戦愛好者には必携の一冊であり、戦争とその戦
略に関心を抱く読者にとっても非常に魅力的な内容
と言えるでしょう。この壮絶な闘いの歴史を知り、
理解することは、私たちが未来に向かって進むため
に欠かせない一歩といえます。

それでは、わが国が展開した「電撃戦」の実態を振
り返る貴重な研究書の中身を見ていきましょう。

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■目次

口絵

まえがき 久保田隆裕
刊行によせて 北川英二

●序 論

●年 表

●攻撃側の能力
 1941年における日本軍の航空戦力
  日本海軍航空隊
   編成/ドクトリンと戦術/部隊と航空機/日本海
軍航空隊の爆撃機部隊/水上機母艦と特設水上機母艦
/機動部隊
  日本陸軍航空隊
   日本陸軍航空隊のドクトリン/日本陸軍航空隊
の部隊と航空機

●防御側の能力
 極東地域の連合軍
 マレーのイギリス空軍
  全般状況/指揮系統/飛行場と飛行場の防衛/航空
警戒システム/高射部隊/戦闘機の飛行隊/爆撃機の飛
行隊
 オランダ軍
  オランダ領東インド陸軍航空隊/オランダ海軍航
空隊(MLD)
 アメリカ陸軍航空隊
 
●作戦の目的
 日本軍の攻撃計画
  マレー進攻作戦
  オランダ領東インドでの作戦
 イギリス軍の防衛計画
 オランダ軍の防衛計画
  
●戦 役
 日本の南方への進攻
 マレー北部をめぐる戦い
 作戦2日目
 マレー中央部をめぐる戦い
 日本海軍航空隊の航空作戦
 Z艦隊の最後
 シンガポールをめぐる航空戦の激化
 シンガポールの陥落
 オランダ領東インドをめぐる航空戦
  ボルネオ侵攻/オランダ領東インド中央部での攻
勢/スマトラをめぐる戦い/東ジャワへの攻撃/ジャワ
島をめぐる最後の戦い/ジャワ島の西部での戦い

●分析と結論

●参考文献

【解説】
戦闘機等の戦法について 村上強一
当時のレーダーの開発及び運用状況等について 福島大吾
太平洋における電波の戦いとその変化 天貝崇樹
日本陸海軍航空の創設期における発展経緯 平山晋太郎
日本陸軍航空隊のドクトリンの発展経緯 由良富士

日本海軍の用兵思想 伊藤大輔

【付録】
開戦時の文書からみる海軍航空の用兵思想(伊藤大輔)
マレー沖海戦の戦訓(伊藤大輔)
関係地名一覧
日本陸軍航空隊と日本海軍航空隊の航空機一覧

あとがき 橋田和浩

執筆者、翻訳・監修者、訳者、解説者紹介

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いかがでしょうか?

過去の歴史をいかに今に活かすか?

その実践を日々している方なら、
組めども尽きぬ悦びと、ヨダレが出るほど面白く美
味しい味わいを堪能できる本格的な一冊と思います。
内容充実度の割にボリュームが小さいところも嬉し
いポイントです。

一.マレー進攻作戦の緒戦で航空優勢を狙うわが方
と阻止をもくろむ連合国側。双方の視点で計画から
戦闘経緯までを克明に記録した航空戦史。

一.現在展開されているウクライナ戦争の航空戦を
理解する補助線になる参考書。

一.正直良く見えない<空の世界における兵力運用
に関する理解>が基礎レベルで深まる航空戦事典。

現元自衛官や関係者、研究者はもちろん、航空ファ
ンや軍事理解を深めたい国民にも優しい一冊です。
心からオススメします。

紹介は以上です。

それでは、再読するとしましょう。

『マレー進攻航空作戦 1941-1942ー世界を震撼させ
た日本のエアパワー』
著者 マーク・E・スティル 著
橋田 和浩 監訳
出版年月日 2023/10/20
本体価格 本体2,500円+税
発行:芙蓉書房出版
https://amzn.to/3rZH9fr

エンリケ

追伸

「マレー作戦で帝国陸海軍航空隊が米英蘭軍に圧倒
的勝利を収めた要因とは?」
というビッグクエスチョンに取り組んだ本とも言え
ますね。

結論は、この3つに収斂されるようです。

●帝国海軍機動部隊は「恐るべき海軍戦力の集合体」
●大陸での戦訓を取り入れ洗練されたわが国の航空
ドクトリンはこの進攻作戦でも有効に機能した
●陸海軍の戦力運用の相乗効果が緒戦における電撃
戦を成立させた

『マレー進攻航空作戦 1941-1942ー世界を震撼させ
た日本のエアパワー』
著者 マーク・E・スティル 著
橋田 和浩 監訳
出版年月日 2023/10/20
本体価格 本体2,500円+税
発行:芙蓉書房出版
https://amzn.to/3rZH9fr

追伸2

古来わが国では海外文献を「注釈」し、そのエキス
を換骨奪胎して我がものとする文化があります。
支那から入ってきた書物を注釈した「漢学」がその
典型です。
いまは西欧文明の文献の「注釈」が柱なのでしょう。

ここで重要なのは誰が注釈したか?であり、その人
財の力量によって原典のエキスを読者が過ちなく吸
収できるか否かが決まります。

注釈者(翻訳、解説者)こそがカギであり最も重要
なのです。

本著を拝読し、そのことを改めて思いました。

心からオススメします。
次回以降の同シリーズの刊行、他軍種の同様の翻訳
を期待します。

『マレー進攻航空作戦 1941-1942ー世界を震撼させ
た日本のエアパワー』
著者 マーク・E・スティル 著
橋田 和浩 監訳
出版年月日 2023/10/20
本体価格 本体2,500円+税
発行:芙蓉書房出版
https://amzn.to/3rZH9fr