【本の紹介】「日米戦争の起点をつくった外交官」 ポール・サミュエル・ラインシュ(著)田中秀雄(訳)

2023年2月23日

「日米戦争の起点をつくった外交官」
著者:ポール・サミュエル・ラインシュ(著)田中
 秀雄(訳)
出版年月日:2022/10/17
判型・ページ数:A5・352ページ
定価:本体2,700円+税
発行:芙蓉書房出版
https://amzn.to/3T2oBD2

この本は、
めまぐるしく展開する政治情勢の中、北京寄りの立
場で動き、日本の中国政策を厳しく批判したライン
シュの回想録An American Diplomat in China(1922)
の本邦初訳です。

米国の在中華民国初代公使ラインシュの支那滞在は、
1913年(大正2年)から1919年(大正9年)
でした。

対華二十一か条の要求、袁世凱の台頭と失脚、対ド
イツ参戦問題、孫文と広東政府との対立、五四運動
といった出来事があった時代です。

ラインシュ米国公使の「反日姿勢に基づく各種書簡」
は、当時のウィルソン大統領に届いており、「外交
史上最も煽動的」「日本に対する猛烈な告発」とも
言われました。

この公使の存在こそが、その後の日米対立の遠因で
あり、開戦に至った起点だったのではないか?
という問題意識を核に、彼が書いた書籍を今読み返
し、当時の出来事にかかわる資料を読み、

わが国が滅亡一歩手前まで堕ちてしまった陥穽は何
だったか?

そうならないために現在何に注意しなければならな
いか?

の教訓を得るため、史料を通して歴史を振り返る試
みがこの本です。

冒頭にある田中さんの解説が実に優れていると感じ
ます。

これまで知られることきわめて少なかったラインシ
ュという外交官の存在と事績を明るみにし、暗くて
黒い雲に覆われ、戦後日本でブラックボックス化し
ている

「日露戦争と第一次世界大戦、そして大東亜戦争」

の間の期間に、
いったい我が国をめぐって何が起きていたのか?

を少しでも明確にしたい、との思いがある私のよう
な人間にとっては、実にありがたい貴重な史料と感
じます。

こういうことが描かれています。

◆在中華民国初代公使ラインシュは北京での6年間
(1913-1919)に何を見たのでしょうか?

◆ラインシュがウィルソン大統領に送った書簡は
“外交史上最も煽動的”“日本に対する猛烈な告発”
とも言われたことをご存じですか?

◆20年後に日米対立、開戦に至る起点が、このラ
インシュの反日的言動にあると言ってよいかもしれ
ません

◆支那政界の要人、山座円次郎をはじめ各国公使と
のやりとり、貴重な情報の収集など、臨場感あふれ
る記述

◆袁世凱の葬儀の描写は歴史絵巻を思い起こさせる
迫力です

とくに刮目すべきは、
貴重な資料( 二十一か条の要求、 米国国務長官
からガスリー日本大使へ[電報] ワシントン、一
九一五年五月十一日午後五時、 石井・ランシング
協定(ランシング長官より石井全権大使への公文の
み掲載)一九一七年十一月二日
 西原借款)がついていることです。地味なポイン
トですが、これはうれしいですね。

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◆目次

【解説】第一次世界大戦が日米関係の曲がり角だっ
た(田中秀雄)

序 論

第一部 
古い中国と新しい共和国
第1章 中国の独裁者・大総統
第2章 人間の多い国、中国
第3章 新中国に残る古い儒教
第4章 政治の舞台裏を垣間見る
第5章 政治を見る人たちと
第6章 商業冒険家にとっての中国
第7章 アメリカの行動に対する迅速な提案
第8章 中国のための小さなビジョン
第9章 〝アメリカ人は遅い〟
第10章 民俗と官僚 

第二部 袁世凱の退場
第11章 戦争 山東省の日本
第12章 有名な二十一か条の要求 一九一五年
第13章 団 結
第14章 北京、戦争の日々
第15章 皇帝・袁世凱
第16章 袁世凱の没落とその死
第17章 共和国の人々は鞍の上に

第三部 戦争と中国
第18章 北京のアメリカ人起業家
第19章 「門戸開放」を守るために
第20章 静かな日々の日記、一九一六年の秋
第21章 中国、ドイツと断交す
第22章 中国のボスたちが北京にやってくる
第23章 一日だけの皇帝
第24章 ドイツとの戦争:再調整
第25章 中国人は借金をするようになった

第四部 戦争の最後の年、そしてその後
第26章 石井・ランシング協定
第27章 困難の中で北京は喜ぶ
第28章 新たな世界大戦の到来?
第29章 日本、敵意をむき出す
第30章 匪賊、陰謀家、そして分裂した家
第31章 北京の若者たち、パリの老人たち
第32章 国家がストライキを起こし、団結する
第33章 北京を離れて

【資料】
 二十一か条の要求
 米国国務長官からガスリー日本大使へ[電報]   ワシントン、一九一五年五月十一日午後五時
 石井・ランシング協定
  (ランシング長官より石井全権大使への公文の
み掲載)一九一七年十一月二日
 西原借款

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世界を見渡すと、とくに政治の世界では悪意が中心
で、善意に基づいて動く国や勢力はこの世にひとつ
もありません。(わが国を除き)

いい悪いのはなしではなく現実の安全と快適を得る
ためには、超然として善意の人・国でいることは餌
食にされるだけの愚行です。世界の現実は未だ変わ
っていません。

いい意味でステージが上がっているのは日本人だけ
で、他のだれも日本人の域に達することはできてい
ません。

日本では庶民でも「それおかしいやろ、絶対やった
らあかんやつや」と通じる感覚が、平気の平左で普
通に通用してしまうのが現実のわが国以外の世界で

世界が動く原則が政治なら、その原則は最良で多数
決。
世界が動く原則が経済なら、その原則は利益拡大。

我が国にとって「善意頼り」の姿勢が危険極まりな
いものであることは瞬時におわかりになることでしょう。

ちなみに21世紀の我が国生存を図るうえでいまわが
国がしなければならない最優先の事業は

「媚中政権を作らないこと」

です。

そのためにも、本著を読み、狡猾に仕組まれた外国
の悪意にわが国が惑わされ、歪んだ亡国の道に進ま
ないよう警戒監視し続ける術を一つでも多く手にし
ておく必要があります。

その意味からも、
ぜひ手に取ってほしい内容です。

おススメです。

「日米戦争の起点をつくった外交官」
著者:ポール・サミュエル・ラインシュ(著)田中
 秀雄(訳)
出版年月日:2022/10/17
判型・ページ数:A5・352ページ
定価:本体2,700円+税
発行:芙蓉書房出版
https://amzn.to/3T2oBD2

次回もお楽しみに!

エンリケ

追伸

亡国は夢幻のはなしではなく、現実に起こる話です。
特にわが国の場合、文明的な点から見ても、乗っ取
りたいけど助けたいとはだれも思わない国である可
能性が高いです。

深く学んで兆候を読み、的確に先読みできても、
的を射た先手を打つことは人間にはまずできない。
残念ながらこれが歴史の教訓のような気がします。

それでも人は学び、教訓を得て、必要な手を打ち、
後世に安全を引き継ぐインテリジェンスあふれる姿
勢を持たなければいけません。

諦めたらそこで終わりです。

あなたには、
本著のような史料を持ち、命ある限り、自分のイン
テリジェンスに常に磨きをかけ、祖国日本を守り続
けてほしい。そう思っています。

「日米戦争の起点をつくった外交官」
著者:ポール・サミュエル・ラインシュ(著)田中
 秀雄(訳)
出版年月日:2022/10/17
判型・ページ数:A5・352ページ
定価:本体2,700円+税
発行:芙蓉書房出版
https://amzn.to/3T2oBD2