葛原和三 『機甲戦の理論と歴史』

2019年2月6日

「理論形成に資する素材の提供」というべき内容の本です。
ですから理論がかかれているのではありません。
過去の理論がどういう経緯を経て形成されてきたのか?がテーマで、機甲戦の歴史から養分を吸収できる有機的な機甲啓蒙書となっています。
軍人である著者の戦史評価・批判がついていることが極めて大きいですね。だから信頼でき、だから時間をかけることなく陸戦理論のエッセンスを吸収しやすいです。
「各国軍のドクトリン(教義)」が紹介されている点も重要と考えます。ドクトリンは戦史から有機的につむぎ出された教訓を通じて、生気を発するものです。
著者は本著で機甲戦理論の構築には至りませんでしたが、それに資する貴重な資料を提供してくれたと考えます。出来れば次回作で、現代日本の機甲理論を打ち出していただきたいですが、宿題は、次代のわが軍人さんと研究者に委ねられたといえましょう。
別の面から見れば本著は、「軍事の近代化」を解説した本ともいえます。現在が、歴史的な世界的な軍近代化の真只中にあることを改めて感じさせてくれる本です。文章も読みやすいです。絵や写真もたくさん載ってますし、圧迫感を感じません。総ページ数は178ページです。
機甲戦の理論と歴史