勝股秀通:『検証 危機の25年』

こんにちは。エンリケです。
机上論でない点が、本書の魅力です。
日大危機管理学部の教科書としても使われるそうですが、
これで勉強できる学生は幸せですね。
長年、自衛官と信頼を築いてきた著者だから
書ける内容といって差し支えありません。
とっつきやすくて読みやすいのに本格派。
とっておきの安保政策入門書が出ましたので、
お知らせします。
『検証 危機の25年』
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2015年の安保法制をめぐる論議は
国内世論を2分しました。
振り返れば、
大東亜戦争が終わって70年も経つというのに、
わが国では、安保や防衛問題に関する問題が
出てくるたびに国内世論が2分されています。
忌み嫌うだけで戦争を総括できず、
防衛や軍事という国の核心をなす安保政策が
「戦争はんた~い」「へいわ~」という
心に快く響くプロパガンダ用語の中に
埋もれてしまっています。
その理由はどこにあるのか?
著者はこう指摘します。
<戦後生まれの日本人の多くは、日本の平和や安全、
国民の生命に直結する重要な問題であるにもかかわらず、
中学や高校、そして大学においても、
安全保障を学ぶ機会を得ることはなかった。安保関連法の
理解が進まなかった根本の理由はそこにある。>
その結果国民多数は
<わからないから不安になる>
状況になり、その心理を反日政党のプロパガンダに利用され、
わが国を取り巻く厳しい現実と国民が向き合うせっかくの
機会は奪い去られました。
しかしその後の中共、北鮮の行動に直面した国民は、
安保法制の意義と冷静に向き合おうとしているのでは?と
著者は指摘します。
しかしながら、わが国は、今そして将来向き合う可能性
がある幅広い脅威や危機、課題に主体的に備える
「自国の安全を高める国家としてのシステム(安保法制は
その一つ)」をゼロから作り上げることに慣れていません。
そのうえ、トランプとの間で日米同盟が深化する、
という課題も追加されました。
今の朝野は日米首脳会談成功のニュースに浮かれています。
逆に言えば、それだけわが朝野には不安が拡がっている
ということではないのでしょうか?
日米同盟深化は喜ぶべきことですが、
わが国の側に欠けているものが多すぎるのが実際のところ
でしょう。
本著を読めば、冷戦終結後今に至るまで、
わが国が常に外的要因に迫られその場しのぎの対応を
繰り返してきた姿が浮かび上がってきます。
ではどうすればいいのか?
著者が着目したのは「冷戦から今日に至るわが国を
取り巻く世界の現実とわが国がとってきた対処の実際」
でした。この歴史を丹念に追うことを通じ、
・わが国が何に迷ってきたのか?
・わが国はどこで躓いたのか?
・なぜ今も多くの課題を放置し続けているのか?
という現実をハッキリつかみ、理解して教訓を導き出すこと
が大事、と著者はいいます。
冷戦後から今日に至る苦悩の四半世紀を振り返り、
多くの課題や放置したままの宿題と向き合うことで、
わが安全保障の針路を定めることが今必要なのでは
ないでしょうか?
この本がいいのは、無味乾燥な内容になりがちな法律解説や
できごとの分析を、ひとつながりのストーリーとして面白く一気に
読めてしまう点と、机上の研究では決してつかめないジャーナリ
ストならではの「幅広く分厚い現場取材に基づくホンネの
ところ」を余すことなく伝えている点です。
読みやすいのに、ここまで質の高い内容は類書に見られません。
安保政策を理解したい人にまっさきにおススメしたい
入門書と言って差し支えないです。
著者の勝股さんは元読売新聞編集委員。現在は日大で教授を
されています。大学卒業後1983年に読売新聞に入社し、
93年から防衛庁・自衛隊を担当しました。その後解説部長
兼論説委員、編集委員を務めました。20年以上にわたり
防衛・安保問題を専門に取材されており、
民間人として初めて防大の総合安全保障研究科(1期)で
修士号を取得したことでも知られます。
もしあなたが、メディアを通じて垂れ流される
自称専門家の片寄った安保・防衛話に振り回されたくない、
と思っているなら、ソフトカバーなのにこんな充実した
内容を持つ本著を手に入れない選択肢はないでしょう。
安保政策の入門書として、軍人や政治家の方はもちろん、
軍事オタクや情報ファン、ブログやSNSで情報発信している方、
祖国日本を守りたい方、学生さんに自信をもっておススメできます。
オバマ政権時に見せた米軍高級将校の実際の姿や、BMDには
結構当たりはずれの多い現実、民主党政権時の安保政策がいかに
いい加減なものであったかもよくわかりますよ。
よく練られた文面で、さまざまな視座から同じ事象を
見ることができる癖が身につくところも超おススメできますね。
ことしは国内外で政治日程が目白押しです。この本の
内容を腹に収めた国民が、実のある安保政策論議を
展開できるわが国になってほしいと強く思います。
イマスグ手に入れてください。
『検証 危機の25年』
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エンリケ