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フランス人に頼りにされている「外人部隊」―外人部隊の真実(8) 元上級伍長 合田洋樹

time 2016/03/02

フランス人に頼りにされている「外人部隊」―外人部隊の真実(8) 元上級伍長 合田洋樹

はじめに

 今回は、一般のフランス人が、外人部隊に対してどんな思いを抱いて
いるか、書いてみます。私は17年半も在隊していたので、多くの一般の
フランス人とも交流がありました。

 職業を聞かれ、「外人部隊兵です」と答えて、嫌な顔をされることは
ほとんどありませんでした。ただ、まれに部隊兵が嫌いな民間人もいます。
過去に部隊兵と何かしらのトラブルがあったのかもしれません。

 実際、コルシカ島でレンタカーを借りようとしたら、店員から「あなたは
外人部隊兵ですね? 前回部隊兵に車を貸したらボロボロにされたので、
それ以降、部隊兵には貸さないことにしているのです」と言われたこともあります。

 またフランス正規軍の中には、階級に限らず、外人部隊兵のことを
嫌がる者もいます。一部の上品な正規軍兵士からすれば、粗野で刺青
だらけの外人部隊兵は「ギャングスター(ゴロツキ)」に映るようです。

 さらに正規軍と外人部隊が協同作戦をした場合、先頭に立って作戦を
遂行できる外人部隊の方が必ず成果を上げ、評価されます。そんな嫉妬心
から外人部隊を嫌う正規軍兵もいるようです。

 アフガニスタンでの任務後、ある将軍が落下傘連隊を視察したことが
あります。私は「アフガニスタンでの落下傘連隊の活躍を褒めてくれるの
だろう」と思っていました、褒められるだけのことを落下傘連隊が行なった
からです。

 最初こそ感謝の言葉をかけてくれましたが、あとはALAT(フランス陸軍
軽航空隊)がいかにアフガニスタンで活躍したかを熱弁し始めました。
この将軍はこの軽航空隊の出身だったのです。

 この将軍は、明らかに外人部隊に対して好意的ではありませんでした。
私を含めすべての部隊兵が、その発言に大きく落胆していたことは
その場の雰囲気ですぐにわかりました。

 ただ、この将軍のケースは例外で、多くの正規軍兵は、部隊兵に対して
どちらかといえば好意的です。イザという時、外人部隊兵が最も頼りに
なることを彼らも知っているからです。

▼フランス人に頼りにされている「外人部隊」

 一般のフランス人は外人部隊に対してどのような感情を持っているの
だろうか? 基本的にフランス人は軍隊には理解がある、これは2世紀に
およぶ徴兵制度のおかげだ。

 しかし徴兵制は1996年にシラク大統領により、軍隊の職業化
(プロフェッショナル化)を目的に停止された。1979年以降に生まれた人は、
兵役の義務を停止された(完全に廃止されたわけではない。2015年の
シャルリ・ヘブド襲撃事件以降、徴兵制を復活すべきとの声が一部に
上がっている)。

 2015年時点で、36歳以上のフランス人男性は、期間は短いが兵役経験
がある。だからフランス人家庭の多くは家族親戚の中に必ず元軍隊経験者
がいる。

 そのため軍隊アレルギーは日本ほどない。むしろ好意的である。
国を守るためには軍隊が必要だという、当たり前のことを理解している。
私が出会ったフランス人で、私が部隊兵だと言って嫌悪感を持たれたことは
まずない。

 だが、ごく少数ではあるが、なかには露骨に顔をしかめる人もいた。
休暇でパリのホテルに泊まろうとしたら、フロントで身分証の提示を求められた
ので、軍人証明書を見せた。

 その際、露骨に迷惑そうな顔で、「酒の持ち込みはダメですよ!」と
言われた。こちらも腹がたったので、なぜそんなことを言うのかと聞くと、
「前回泊まった部隊兵が、酔っ払って客室の物を壊したんですよ!」と
言われ、怒る気力も失せた。

 フィリピンを旅行中、70代のフランス人マダムに、フランスで何をしている
のか聞かれたので、「外人部隊に勤務しています」と答えたら、驚いた顔
で「あなた、ずいぶんひどい仕事をしているのね!」と言われた。

 このマダムは幼少期や多感な時期に、インドシナ戦争やアルジェリア戦争
に参加していた部隊の風評をニュースなどを通して見聞きしていたの
だろう。そのころの部隊の悪い印象をマダムは思い出したようだ。

 毎年7月14日のフランス革命記念日には、各地で軍の閲兵式とパレード
が行なわれる。最も有名なのが、パリのシャンゼリゼ通りで行なわれる
軍事パレードだ。陸海空軍が一堂に会し、大統領が閲兵したあと、観衆の前
で大規模なパレードが行なわれる。

 この時にいちばん声援と拍手を送られるのが外人部隊兵である。
ここにフランス人の部隊に対する国民感情がよく現れている。
現在でもフランス国民にとって、外人部隊はフランスの国防の一翼を担う
頼りがいのある存在なのだ。

(つづく)

(ごうだ・ひろき)

【著者紹介】
合田洋樹(ごうだ・ひろき)
1978年神奈川県生まれ。都内の高校卒業後18歳で渡仏。
1997年フランス外人部隊に入隊。計17年半勤務し2014年11月除隊。
最終階級は上級伍長。在隊中は主に第2外人落下傘連隊に在隊し、
ジブチの第13外人准旅団にも計3年在隊。長い在隊期間中の約11年間
を後方支援中隊にて事務員として勤め、そのうちの5年半を警務課で
勤務。外人部隊を深く理解するうえでこの部署での経験が非常に役立つ。
『外人部隊125の真実』を近く出版予定。ほかに第2外人落下傘連隊に
ついての電子書籍版を執筆中。

《長期派遣歴》
1997年01998年ジブチ、2009年02011年ジブチ
《短期派遣歴》
1999年ボスニア、2000年ガボン、2001年ジブチ、2002年ギアナ、
2004年ジブチ、2006年ジブチ、2010年カタール、2011年ウガンダ

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