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いわゆる普天間問題を考えるに当たっての重要な視点

time 2009/12/07

小生は、普天間問題に関しては細部にわたる具体的内容を承知しておりませんが、これを考えるにあたっての重要な視点は次のようなことであると考えております。

海兵隊という軍種の特質

第1は、海兵隊という軍種の特質をよく理解しておかなければ、普天間問題を本質的に理解できないということです。

まず海兵隊は独立した統合部隊(*)ですが、戦力の中核は陸上戦力です。

(*)陸上・海上・航空戦力を一元指揮する部隊のこと

海空戦力は戦力を他の地域から戦場に迅速に投入しやすいという特性がありますが、これは逆に見れば撤収も容易ということです。陸上戦力は戦闘に最後の結を与え得る戦力ですが遠距離に迅速な展開・投入がし難い戦力です。逆に一度投入されれば簡単に退けません。

従ってどのような国も海外に陸上戦力を投入・展開することには慎重にならざるを得ません。これを又逆に見れば、ある国が海外のある地域に陸上戦力を投入・展開するということは、その地域に腰を据えてコミットする、戦争になれば及び腰でなく徹底的に戦うという意思表示をすることになります。

これは対抗する勢力に対しては一番重みのある抑止力になります。
米国陸軍は日本には第一線戦闘部隊を駐屯させていません。従って現時点では海兵隊が米軍の日本駐留部隊の中で最も抑止力を発揮する部隊になります。

まさに中国の脅威にさらされている日本の南西諸島の核心である沖縄に海兵隊の陸上戦力が展開しているということは、日本にとっては、この地域で紛争が起れば米国が腰を据えて介入するという保証です。海兵隊が東南アジアや中東に展開するのに、沖縄の方が日本本土より近くて有利等ということは、日本にとっては重要なことではありません。

従って、日本の国益から考えて、沖縄を含む南西諸島地域に対する中国等の脅威を排除するための抑止力を維持するためには、米国が他に移したいと言っても絶対に反対し残すべき戦力です。

軍事専門家としての私見ですが、この抑止力の重要性は一部の沖縄県民の迷惑等という問題をはるかに超えています。全国民に影響する国益に関する事項です。

従って現在の政治に責任を有する政府から県外移設の話が出るのは狂気の沙汰であり、そのような軍事音痴集団に政権を任せては日本は滅びると思います。

自民党政権時代に普天間移転問題がクローズアップされたのは、平成7年の沖縄における米兵の少女暴行事件がきっかけであったことを振り返れば、米軍の再配置計画で沖縄に駐留する海兵隊員8千人をグアムに移転させる案に日本政府が反対しにくかったのは理解できますが、この移転計画は日本の国土防衛のための抑止力維持という点では大きなマイナスでした。

しかし辺野古に海兵隊の独自の基地が残れば、情勢が緊迫した際に、海兵隊司令官独自の判断で訓練名目等でグアムから沖縄に地上戦力を展開することは容易です。米軍内部の手続きも簡単でしょう。

逆に海兵隊基地がなければ、空軍等の基地を空けて貰う等の調整が必要で、且つ、共通の上級司令部である太平洋軍司令官の認可を得る必要があり、太平洋軍としての状況判断もありますから簡単ではありません。

従って、政権与党から、抑止力の要である残存海兵隊基地までグアム移転せよとの論が出るのを聞けば、軍事が全く分かっていないと思わざるを得ません。

10月に訪日したゲーツ国防長官は「普天間移設がなければ、海兵隊のグアムへの移転は無い。米議会はグアム関連予算を認めない」と明言したそうです。民主党の普天間見直しが、日本防衛の抑止力維持のために海兵隊をグアムに返さず日本に残すための偽装迂回作戦なら大したものなのですが・・・。

沖縄県民には迷惑かも知れませんが、社民の悪あがきと民主の迷走が、そんな大ヒットにつながれば、中国は顔をしかめ、台湾は安心するでしょうけれど・・・。

同盟国としての約束

第2の視点として、普天間を名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部に移設するという施策は、日米両国が長年にわたり多面的に検討し沖縄県民の同意も得た同盟国としての約束であることを忘れてはならないということです。

(*)平成21年度「日本の防衛」(防衛白書)資料38及び41参照 (防衛省ホームページで閲覧可)

オバマ大統領が迅速な実行あるのみという態度をとるのは当然で、鳩山首相の口先でごまかし内容で裏切るという態度は、米国民から見れば明らかな同盟国に対する裏切りに見えるでしょう。日米安保の信頼性を深刻に損ねたという点で、今回の普天間問題の蒸し返しは、政府民主党の軍事・外交・安全保障面での幼稚さを暴露した以上の日本国としての失点であると思います。

硫黄島の問題点

硫黄島に移るという点は、色んな問題があります。

抑止力・軍事バランスの変化以外にも、米海軍の空母への離発着訓練(タッチ・アンド・ゴー訓練)場が他に求め得るのか、硫黄島で共用できるのか等の問題があり、それ以前に、硫黄島にまともな米軍基地を作り得るかという問題があります。

米国は、海外に展開する兵士に基本的に本国と同レベルの生活環境を与えることを基本的ポリシーとしています。地積、要する費用、現地の生活インフラの欠除、他の部隊・基地と共用できていた兵站機能等の独立保持による無駄等を考えれば、硫黄島に本格基地を作るくらいなら、沖縄沖に浮かぶ洋上基地を考えた方が良いくらいで、案にもならないと思います。

グアムに完全移設したら・・

グアムへの完全移設になれば、既に述べたとおり、日本の防衛に果たす米国の抑止力は大幅に低下します。米国が移設を承知するということは、もう日本の防衛に積極的にコミットする気はありませんよということで、また台湾防衛の可能性も大幅に低下しますから、中国等は狂喜するでしょう。

(軍事評論家 洗 堯 (元陸将 元東北方面総監)


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  • […] ■配信日:2009年12月7日 http://okigunnji.com/?p=1355 […]

    by 海兵隊とオスプレイ 北村淳 並木書房 | 軍事情報 €2013年2月19日 8:19 PM

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