【本の紹介】『神は賽子を振らない』 渡邉陽子 (著) 火箱芳文 (監修) 



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こんにちは、エンリケです。

東日本大震災時の初動。
72時間が勝負と言われる人命救助。

この人の”異例の指示”がなければ、
あれほど多数の人命が救われることはなかったでしょう。

腹を切る覚悟で目の前の事態に対処。
「即動必遂」を実践した頼もしいリーダー。

これこそ真のエリートの姿と思うのは私だけでしょうか?

いま、その方が主役のオーラルヒストリーが世に出ました。

本著を読んで、自衛隊と自衛官に寄り添い、共に国を盛り立て、
祖国日本の悠久の発展に生きてゆこうとする日本人が増える
よう心から望みます。

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エンリケ



『神は賽子を振らない』
渡邉陽子 (著),、火箱芳文 (監修)
発行:株式会社アルゴノート
発行日:2022/3/17
寸法:12.8 x 1.3 x 18.8 cm

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木曜日の連載「ライター・渡邉陽子のコラム」著者・渡邉陽子さんの最新刊。
彼女の真骨頂を堪能できる本という印象を受けます。

主人公は、東日本大震災当時の陸幕長・火箱芳文元陸将。
聞き手はライター・渡邉陽子さん。

詠めば読むほど、等身大の自衛隊と自衛官、その仲間た
ちへの理解と共感が広がる作品です。

現役退役軍人・ご家族の方はもちろん、
一般企業のサラリーマンとそのご家族も共感できるところ多いです。

まずは内容をご覧ください。

目次

はじめに

第一章 自衛官人生の始まり
第二章 第一線部隊勤務と上級幹部登竜門への挑戦
第三章 第一空挺団中隊長と陸幕広報室
第四章 上級司令部幕僚として、学生として
第五章 北方最前線部隊、第三普通科連隊長
第六章 孤独な人事業務と初めての中部方面隊
第七章 陸上自衛隊に近づいてきた海外
第八章 作戦基本部隊の師団のトップ、第一〇師団長
第九章 母校、防衛大学校の幹事(副校長)
第一〇章 二府一九県を束ねるメジャーコマンダーへ
第一一章 第三十二代陸上幕僚長の誕生
第一二章 東日本大震災、発生
第一三章 自衛官人生、最後の日々
あとがき

いかがでしょうか?

「はじめに」は渡邉さんが、「あとがき」は火箱さんが記されています。



『神は賽子を振らない』
渡邉陽子 (著),、火箱芳文 (監修)
発行:株式会社アルゴノート
発行日:2022/3/17
寸法:12.8 x 1.3 x 18.8 cm

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おススメできる理由は3つです

1.伝記というより「自衛隊オーラルヒストリー」だから

2.自衛隊・自衛官の仕事の現実がよく理解把握できるから

3.組織人として、ポジション変化に伴って直面する「壁」にいかに対処するか?
について意識、取り組みの着眼点を学べるから

まずは3番目から。

正直、これまで普通より多くの軍人伝を読んできた私ですが、
この本から受ける印象は、それらとは全く異質のものです。

柔道好きなひとりの少年がいかにして陸自トップの陸幕長に上り詰めたか?
という単純な出世物語に見えがちのこの本。実はそうではありません。

一軍人の軍務の記録というより、
目の前の状況を主人公はいかに捉え、対処したか?
を忌憚なく描き出した「教本」としての価値が大きいです。

その描写の細やかさが本著最大の特徴かもしれません。

外から見れば出世、「万々歳!!」としか見えないポジションの上昇。
しかし新しいポジションに就くと、これまで見えなかった課題や壁にぶつかるものです。

火箱さんもそうでした。
補職に就くごとに壁に直面します。

その時氏は、

いかに課題を捉え、
何を拠り所にし、
いかに克服したのか?

といったことが、この本には過不足なく絶妙なボリュームで描き出されています。

現役、退役自衛官とその家族だけでなく、
一般企業で働くサラリーマンとその家族が
同じように共感できる内容が非常に多いです。

わたしが特に学びになったのは、
西方勤務時の火箱さんが後方支援への理解を深めてゆくところです。

もしかしたら、
こういった毎日の積み重ねが職業人の一生かもしれません。
そんなことを感じました。



『神は賽子を振らない』
渡邉陽子 (著),、火箱芳文 (監修)
発行:株式会社アルゴノート
発行日:2022/3/17
寸法:12.8 x 1.3 x 18.8 cm

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つぎは
「2.自衛隊・自衛官の仕事の現実がよく理解把握できる」
です。

なぜでしょうか?
渡邉さんの視座が、地を這うそれだからだと思います。

おうおうにしてこの種のはなしでは
上空から仕事を俯瞰する視点が多いですが、
渡邉さんの記述は、ねじ一本、砂粒一粒の違いをくっきり
浮かび上がらせます。

だから、具体的に自衛隊の仕事をつかめるのです。

第一空挺団の普通科中隊長に補されたとき。
陸幕広報に補されたとき。
連隊長に補されたとき
師団長に補されたとき
・・・・

生涯を通じ、
主人公の何が変わって何が変わらなかったのか?
何を根底に意思決定していたのか?

といった、軍民問わない社会人としての知的基盤を
つかめます。

学びを得たい読み手は「自分に適合する部分」と
「ここは違う」ところを明確に区分できるわけです。

だから、
つかめそうでつかめない「無機質でつるつるした読後感」を持ちがちな
所謂軍人伝とはひと味もふた味も違うコクと深みを味わえます。

そして最後のポイントが
「1.伝記というより「自衛隊オーラルヒストリー」」
です。

この本がもつおおきな特徴は、

「自衛隊のオーラルヒストリー」

という面です。

火箱さん個人の生涯を追いながら、描き出されているものは
わが危機に立ち向かい、そのための力をはぐくみ続けてき
た自衛隊と自衛官の歴史です。

<高田や習志野の部隊にいたときは、まったく意識していなかった広報の役目とその重要性。それがわかった上で働くと
、これまで見えなかったものが見えてくる・・・・>(P66)

<着任にあたり、火箱は一〇師団には三つの任務・役割があると考えた。>(P135)

<陸幕広報で働き始めたばかりの頃、火箱は日々打ちのめされた。>(P51)

などなど、

主人公がそう考えていた時、彼はどういう環境に置かれていたか?
がしっかり見えるから、今の自分に応用しやすいです。
同種の仕事をする職業人の得られる学びは大きいでしょう。

「陸幕長に上り詰めた田舎の少年奮闘記」

というビルディングロマンスというよりは、

主人公が生涯を賭け、全身全霊を捧げた

国防

という任務に彼が一軍人としていかに対処してきたかの備忘録です。

彼が愛した

自衛隊

という組織がこれまで行い育んできたことの記録です。

彼が命を分け合った

全身全霊でご奉公し、使命感を果たしてきた
名もなき自衛官とその仲間たちの記録です。

こういったほうが、
私にはシックリきます。

巷にあふれる「俺様軍人伝」とはひと味違う「軍人伝」

と著者の渡邉さんはおっしゃってますが、
讀んだ後のいま、私もそう感じています。



『神は賽子を振らない』
渡邉陽子 (著),、火箱芳文 (監修)
発行:株式会社アルゴノート
発行日:2022/3/17
寸法:12.8 x 1.3 x 18.8 cm

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エンリケ

追伸

讀めば読むほど面白味が増えて深まってゆく
不思議なコクを持つ味わい深い本です。



『神は賽子を振らない』
渡邉陽子 (著),、火箱芳文 (監修)
発行:株式会社アルゴノート
発行日:2022/3/17
寸法:12.8 x 1.3 x 18.8 cm

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追伸2

現役自衛官とそのご家族の方には
「先輩自衛官の貴重な体験から抽出したエキスを今に活かすよすがとして」

企業勤務の方とそのご家族の方には
「大組織を率いた人の、新人時代から組織を去るまでの各ポジションごとに
おける意思決定や業務取組みの記録を自分の仕事に活かす資料として」

読み甲斐と濃く深い味わいを覚える他で得難いよみものです。

読み手の心に引っかかるところ多い
等身大の軍人の生涯と寄り添った希少なものがたりです。

本著のような、聞き書きよみものの質は、
聞き手の力量と聞かれる人の人格がモロに顕れると聞きます。

渡邉さんのプロの真骨頂を味わえるこの本は、
詠めば読むほど等身大の自衛隊と自衛官への共感と
理解が広がる、綿密で的を射た取材を基にした珠玉
の軍人伝であり、自衛隊史であり、教本です。

現役退役軍人・ご家族の方はもちろん共感するところ多い
内容でしょう。

自衛隊関連知識や部隊知識、陸自知識や各種用語の説明もあり、
陸自事典の側面もあります。

陸上自衛隊の現場を知り尽くしている聞き手と主役。
この二人でないと描き出せなかった風景の数々。

火箱さんの人生を通して、
自衛隊、自衛官、陸上自衛隊への共感と敬愛を感じる日本人が
一人でも増えてほしい。

心からそう願ってやみません。



『神は賽子を振らない』
渡邉陽子 (著),、火箱芳文 (監修)
発行:株式会社アルゴノート
発行日:2022/3/17
寸法:12.8 x 1.3 x 18.8 cm

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追伸3
昔もそうですが、むしろ今のほうが

「ドラマチック」
「劇的」
「大逆転
「どんでん返し」

といった「感情揺さぶり系」のことば、はなし
がやたら増えている気がします。

「感情マーケティング」由来の、底の浅い、陳腐な
感情を揺さぶる表現ばかりが、宣伝文とは無縁の世
界にまではびこっている。

そう個人的には思っています。

しかしこの本から受ける印象は真逆です。

この本では、
感情、エモーショナルな麻薬的刺激成分の表現が
極力削られています。というか、そういうものを感
じません。

渡邉陽子の真骨頂です。

如実に顕れているのは
第12章です。

彼女は、劇的な状況を劇的な表現を使わず読み手の
心に描き出して揺さぶる「ことばの職人」なのです。

その文に触れた読み手は

「!?」

と二度見、二度読み、三度見、三度読みし、
描かれている状況を再確認し、それがいかに劇的で
ドラマチックな出来事であったか、を自分の力で追
体験できるのです。

このことに気づく読み手はほとんどいないことでしょう、、、

こんなはなし、
ここでしか伝えませんし、
二度と言いません。
私からあなたへのとっておきのプレゼントですw



『神は賽子を振らない』
渡邉陽子 (著),、火箱芳文 (監修)
発行:株式会社アルゴノート
発行日:2022/3/17
寸法:12.8 x 1.3 x 18.8 cm

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