【本の紹介】「MP5サブマシンガン」 L.トンプソン (著), 床井 雅美 (監訳), 加藤 喬 (翻訳)

こんにちは、エンリケです。

サブマシンガンと聞けば、
パッと浮かぶのがウジとMP5です。

この本で取り上げられているのは、MP5です。

MP5は、ドイツのH&K社(ヘッケラー&コッホ)が1950年代に
開発したサブマシンガンで、今に至るも多くの国の法執行機関・軍特
殊部隊が採用するロングセラーです。

MP5と聞いて思い浮かぶのは
ドイツの対テロ部隊「GSG9(連邦国境警備隊グループ9)」によ
るモガディシュ空港ハイジャック事件対処(1977年)ですね。

イギリス軍特殊部隊SASによるイラン大使館人質奪取作戦
(1980年)でも使用され、MP5は対テロ作戦で使える銃として世
界に名が轟くことになりました。

命中精度が高く、反動が少ない
という特徴を持つMP5は、対テロ作戦にピッタリの銃とされ、
世界の多くの法執行機関が主要武器として採用しています。
警視庁のSATも採用しているそうです。

今では想像もできませんが、
当初はなかなか売れなかったということです。

モガディシュ事件やイラン大使館事件の
模様が世界中に放映されたことがきっかけとなり
爆発的に売れ始めたそうです。

何がきっかけで売れるようになるかは
正直分かりませんよね。

MP5も同じだったことを知ると、
妙に親近感を覚えますw

訳者が誰か、監訳者が誰か、というのは地味ですが、
この種の書では欠かせないポイントです。

監訳者に世界的な小火器研究の権威・床井雅美さん、
訳者に元米国陸軍大尉・加藤喬さんというゴールデンコンビを
迎えて作られたこの本ですから、安心して内容を受け止めるこ
とができます。

中身が濃い割にはコンパクトな点も嬉しいところです。

では、この伝説的なサブマシンガンのガイドブックの内容を
見ていきましょう。

□目次

はじめに 1
第1章 MP5サブマシンガンの開発と誕生 14

第2次世界大戦後のサブマシンガン/MP5サブマシンガンの開発/
MP5の派生型/HK54サブマシンガン/MP5A、MP5A2、MP5A3、
MP5A4、MP5A5/MP5SDサブマシンガン/MP5K、MP5K-N、
MP5K-PDW/SMGⅡサブマシンガン/MP5-Nサブマシンガン/
MP5-SFサブマシンガン/MP5/10とMP5/40サブマシンガン/
MP5FとMP5E2サブマシンガン/付属装備品/MP5サブマシンガ
ンの秘匿携帯/訓練用MP5/民間向けのMP5の類似モデル

第2章 MP5の精密フルオート射撃 76

MP5の操作方法/MP5の作動メカニズム/MP5のコッキング・ハ
ンドル

第3章 MP5を使用する法執行機関 90

ドイツ GSG9(対テロ特別班)/アメリカ連邦捜査局(FBI)
/イタリア GIS(特殊介入部隊)/インド NSG(国家治安部隊)/
イギリス SCO19(専門刑事・業務部第19課)/アメリカ ERT(ケ
ネディ宇宙センター緊急対応チーム)/MP5を使用するその他の
法執行機関/パトロールで使用されるMP5

第4章 MP5を使用する軍特殊部隊 120

イギリス陸軍特殊空挺部隊(SAS)/イギリス陸軍情報部第14情報
中隊/イギリス海兵隊特殊舟艇部隊(SBS)/アメリカ海軍特殊戦
部隊(SEALs)/カナダ 統合タスクフォース2(JTF2)/MP5を使
用するその他の軍組織

第5章 MP5が与えたインパクト 156

基本設計の確かさ/世界各国でライセンス生産/MP5の後継機種/
ユニバーサル・サブマシンガン(UMP)/MP7(PDW)

第6章 最強の精密射撃マシン 175

「ピンポイント攻撃」に最適/アメリカの警察機関が広く採用/
洗練されたデザイン

[コラム]
ヘッケラー&コッホ社とMP5 28
MP5の派生型名称 30
MP5の生産 42
MP5各部の機能と特徴 47
H&K VP70ピストル 74
MP5の射撃手順 80

参考文献 180
監訳者のことば 182
訳者あとがき 186

□はじめに(一部)

対テロ部隊の任務では、正確にターゲットに命中させて倒すこ
がきわめて重要だ。MP5は、この点でほかのサブマシンガンをは
るかにしのぐ性能を備えている。

1972年9月に起きたミュンヘン・オリンピック事件は世界に大
きな衝撃を与え、1970年代から80年代にかけて各国で次々に対テ
ロ部隊が創設された。対テロ部隊の多くは、精密射撃能力と制圧
火力、信頼性、入手しやすさなどからMP5を主要武器に選択した。

MP5を最初に採用した有名な組織は、旧西ドイツの対テロ部隊
である連邦国境警備隊グループ9(GSG9)だ。GSG9との合同訓
練でイギリス陸軍のSASはMP5に強いインパクトを受け、特殊プロ
ジェクト・チーム(訳注:対テロチームの別称)用に採用した。

知名度の高いこれらの部隊に使用されたこと、とくにGSG9が
ハイジャックされたルフトハンザ機の人質をモガディシュ空港で
最小限の犠牲で救出に成功したことから、軍や警察の特殊作戦グ
ループでMP5の普及が急速に進んだ。

報道によれば、最初にMP5を採用したイギリスの警察組織は、
要人警護を担当するロンドン警視庁外交保護部で、小型で携帯し
やすいMP5Kを選択した。

現在、ロンドン警視庁の武装パトカーと空港警備隊には、ラ
イフルや散弾銃とともにMP5-SFA2と呼ばれるセミオートマチッ
ク射撃に限定されたMP5カービンが配備されている。

モデル名称の「SF」はシングル・ファイアーの略でセミオート
マチック射撃を意味する。MP5-SFはフルオートマチック(全自
動)射撃機能を除けばMP5と同一で、MP5用の装備品がすべて使
用できる。ほかの多くのイギリス警察組織もセミオートマチック
のMP5カービンを採用した。

(L・トンプソン)

□訳者あとがき(一部)

本書を翻訳し、それが思い込みに過ぎなかったことを知った。
著名な銃器インストラクターとして欧米で活躍するリーロイ・
トンプソンは、MP5が従来のサブマシンガンとは一線を画する武
器であることを実例で証明していく。

「MP5以前、サブマシンガンとは『弾をばらまくだけの粗雑な火
器』だった。しかしMP5はピンポイント射撃が可能な精密射撃マ
シンだ」また「警察や軍の対テロ部隊が人質救出作戦を行なう場
合、小銃弾を発射するアサルト・ライフルなどは過剰貫通で二次
被害を引き起こす。射程の短い拳銃弾を使うMP5ならその心配が
ない」、そして「かつてサブマシンガンの『欠点』だった拳銃弾
の短射程と威力不足が、人質の人命保護を重視する対テロ特殊部
隊にとっては千載一遇の『取り柄』になった」などの主張はわか
りやすく、銃器プロの実体験と知識に裏打ちされている。

日本警察の特殊急襲部隊(SAT)をふくめ、MP5は世界各国の
エリート対テロ作戦部隊がそろって採用している。本書を一読す
れば、MP5が「対テロ戦争の象徴的武器」と称される理由が容易
に理解できるだろう。

また近年、テロリストの重武装化や防弾チョッキの普及によ
って、MP5からアサルト・カービンやPDW(個人防衛火器)に移
行する対テロ部隊が出始めたといわれる。その賛否についても、
読者は本書から得た知識をもとに自分なりの判断を下せるはず
だ。(加藤喬)

□経歴

リーロイ・トンプソン(Leroy Thompson)
長年、小火器の専門家として各国の軍および警察で銃器に関する
戦術トレーニングや助言を行なっている。オスプレイ出版のもの
も含め、45冊を越える著作がある。ディスカバリー・チャンネル
やナショナル・ジオグラフィック、英国放送協会(BBC)のドキ
ュメンタリー番組にも兵器エキスパートとして出演している。

床井雅美(とこい・まさみ)
東京生まれ。デュッセルドルフ(ドイツ)と東京に事務所を持ち、
軍用兵器の取材を長年つづける。とくに陸戦兵器の研究には定評
があり、世界的権威として知られる。主な著書に『世界の小火器』
(ごま書房)、ピクトリアルIDシリーズ『最新ピストル図鑑』
『ベレッタ・ストーリー』『最新マシンガン図鑑』(徳間文庫)、
『メカブックス・現代ピストル』『メカブックス・ピストル弾薬
事典』『最新軍用銃事典』(並木書房)など多数。

加藤 喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。アラスカ州
立大学フェアバンクス校ほかで学ぶ。88年空挺学校を卒業。91年
湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省外国語学校日本語
学部准教授(2014年7月退官)。著訳書に『LT』(TBSブリタニ
カ)、『名誉除隊』『アメリカンポリス400の真実!』『ガントリ
ビア99』『M16ライフル』『MP5サブマシンガン』『ミニミ機関銃
(近刊)』(並木書房)など多数。

30ページにある「派生型名称一覧」や42ページの「MP5の生産」を
読む中でふと思いました。

この種の兵器解説本に日本人がなじめないのは、
今のわが国に、兵器を商品・産業として捉える習慣がないためで
はなかろうか? と。

そういう着眼がないと、
兵器解説書は、たんなる無機質なデータの羅列でしかないのでは?

兵器には、商品という面が強くあり、
同じ兵器をいろいろな切り口の仕様にして幅広いラインナップにし
より多く深く作って売って稼ぐ、というのがわが国以外では普通の
感覚のようにみえます。

産業、工業、ビジネスの目で兵器を見る癖を持つと、
本当の意味で、兵器紹介本の醍醐味を味わえる気がします。

ビジネスの着眼点に長けた人なら、
あれもできるこれもできる、ここはどうしてなんだろう?
などなど、MP5サブマシンガンという商品を、マーケティングや
セールス、生産ラインなどあらゆる角度から眺めることができる
でしょう。

非常に面白い読書が生まれるはずです。

そのきっかけにしませんか?
おススメです。

ご紹介したのはこの本でした。

「MP5サブマシンガン」
L.トンプソン (著), 床井 雅美 (監訳), 加藤 喬 (翻訳)
単行本(ソフトカバー): 187ページ
出版社: 並木書房 (2019/2/5)
言語: 日本語
ISBN-10: 4890633820
ISBN-13: 978-4890633821
発売日: 2019/2/5
梱包サイズ: 18.6 x 12.8 x 1.4 cm
http://okigunnji.com/url/14/

エンリケ

追伸

MP5は、世界中でこれだけ圧倒的に採用されているにもかかわらず、
ウジ・サブマシンガンやトミーガンとくらべると、いまひとつ知
名度が高くありません。

その理由として著者は

・大量のMP5が軍によって実戦投入されたことがない

・MP5の得意分野は、特殊部隊が秘密作戦でターゲットを選択し
正確迅速に排除することにある

・MP5の卓越した性能は、世界中の特殊部隊員の信頼を獲得し
秘密作戦で多用されるようになり、神秘のベールで包まれるこ
とになった

としています。

こういう特徴を知るのも面白いことです。

「MP5サブマシンガン」
L.トンプソン (著), 床井 雅美 (監訳), 加藤 喬 (翻訳)
単行本(ソフトカバー): 187ページ
出版社: 並木書房 (2019/2/5)
言語: 日本語
発売日: 2019/2/5
梱包サイズ: 18.6 x 12.8 x 1.4 cm
http://okigunnji.com/url/14/