日本×統一朝鮮というシナリオ(4)

日本人が不安に思っているのは、北朝鮮が核兵器を保有しており、それ日本に対して使うのではということでしょう。
 確かに北朝鮮は核弾頭を搭載したミサイルを撃つことはできますが、現段階の核弾頭の重さは1トン以上あるとみられています。ちなみにアメリカの核弾頭は200キロ、ロシアが500キロ、中国が700キロです。アメリカほど小型化できればペイロードが小さくなり少ない推進力でもミサイルの飛距離は伸ばせますが、1トンのままでは重すぎます。1000キロ飛ぶとされるノドンミサイルでもせいぜい700~800キロしか飛ばせません。九州に届くかどうかといったところです。
 ただ、米韓同盟の新たな作戦計画は、核ミサイル発射の予兆があったら30分以内に700か所以上ある策源地や核保有施設すべてを空爆するというものですから、そんな状況下で、韓国ではなく日本に、届きもしない核ミサイルを発射するか?ということになります。
 ミサイル防衛というのは、かつての世界情勢下では不要なものでした。核兵器を保有する国同士が「撃たれたらうちも撃つよ」という脅しをかけあうこと(相互確証破壊)で、結果的に双方とも核兵器は使えないという核抑止論が成り立っていたからです。
しかし冷戦崩壊後、米ソ二大大国の下に抑えられていた宗教、民族といったものが噴き出す形で、大量殺戮やテロが横行する情勢となりました。自爆をいとわないテロ集団も登場するようになりました。
「ジハードのためなら死ねる」、「自爆したら天国に行ける」など、喜んで死ぬ者たちが核を持ったとき、死を恐れるが故に成り立っている「抑止論」は通用しません。そこで物理的に飛来した核ミサイルを排除する手段が必要ということで、弾道ミサイル防衛という概念が生まれたのです。
 では金正恩はどうでしょう。彼は非常に賢く死を恐れており、特に自分のレジームを壊すことに意味はないと考えています。日本に核ミサイルを撃ち込めば、米国の核ミサイルが降ってくるわけですから、そのようなことをする愚は犯しません。つまり今の北朝鮮に対しては、アメリカの核抑止と日本に差し掛けられている核の傘は、機能しているということなのです。
しかし、故意に撃ち込むことがないとしてもミサイル発射実験は今後も続けるでしょうから、それがうっかり日本に当たってしまうかもしれません。だから日本には弾道ミサイル防衛システムが必要なのです。
2017年に北朝鮮の中距離弾道ミサイル「火星12」が北海道・渡島半島や襟裳岬の上空を通過し、岬の東約1180キロの太平洋上に落下しました。このミサイルは日本海上空で3つに分離しましたが、ブースト段階で使用した第一段ロケットは日本海には落ちていません。分離したまま弾頭部とともに、日本上空を飛行していったのです。これはおそらく読者の皆様の想像と違うと思います。
(つづく)