日本×統一朝鮮というシナリオ(3)

日本と韓国、日本と北朝鮮、日本と統一朝鮮が戦争をする可能性を考えてみます。
まず日本と韓国は、両国ともアメリカと同盟関係にあり、基本的には友好国の関係です。だからこそ情報を共有するGSOMIAを締結する間柄なので、本来は戦争をする理由はまったくありません。

北朝鮮はミサイル発射実験を繰り返していますが、日本本土を侵略しにくるか、という国家としての脅威の対象ではありません。あえて言うなら「ミサイルを撃つな」と言っても撃つ国ですから、誤って日本列島に落ちるかもしれないという意味で「危険性をはらんだ国家」、または拉致などを仕掛けてきた「無法国家」、日本にとって安心・安全ではない「ならず者国家」という位置付けです。
ですが、北朝鮮が日本にいきなり攻めてきて戦争を仕掛けるという蓋然性は低く、武力行使をするなら、まずは韓国に対して行なうと思います。だから在韓米軍が存在しているわけで、もしアメリカが「北朝鮮が日本を攻める」という判断をしているならば、在日米軍にも在韓米軍のようにTHAADを配備し、同じような作戦機能を付与しているはずです。
実は在日米軍のうち、作戦遂行機能を持っているのは米海兵隊(3MEF)を包含する米海軍の第7艦隊だけで、在日米陸軍や在日米空軍の主任務はロジスティックサポートです。横田にいる在日米軍司令官には作戦指揮機能がありません。また、兼任している第5空軍司令官という職は空軍の輸送部隊指揮官であり、嘉手納基地に所在するF-22などの戦闘機部隊の戦闘指揮は、ハワイの米太平洋空軍司令官が直接コントロールしています。座間の在日米陸軍にいたっては、在韓米軍司令官の完全なロジスティックサポーターです。
このように見ていくと、アメリカは、北朝鮮が日本と戦うとはまったく想定していないことがわかります。

考えづらいことではありますが、もしも日本と統一朝鮮との間に戦争が起きたとしたら、海を隔てていますからミサイル攻撃が予想されますが、基本的には対処できると見ています。
海自と第7艦隊のイージス艦、また、そのとき配備されていれば陸自のイージス・アショア(※地上配備は中止され、2027年から海自のイージス・システム搭載艦が就航予定)、さらに空自のPAC3によって迎撃します。弾頭ミサイル防衛能力が付与されたイージス艦は現在海自に7隻(※2024年6月現在は8隻)、第7艦隊にも7隻(※2024年6月現在は11隻と想定)あります。加えて地上に2基のイージス・アショアがあれば、そうそうミサイルが日本に当たることはないと思います。

また、統一朝鮮の大量の兵士が日本に上陸作戦をしてくるということも杞憂でしょう。北朝鮮には海軍と呼べる規模のものはありません。輸送艇らしきものはありますが、輸送能力はきわめて限定的なものです。韓国も輸送能力のある艦艇は「独島」1隻のみです(※2024年6月現在は2隻)。
もし統一朝鮮が日本に立ち向かおうとするならば、アメリカは韓国に自国の作戦指揮システムを使えないようにするはずです。韓国軍はこのシステムなしに軍を動かすことは不可能です。また、そもそも北朝鮮軍は完全に別の指揮系統で動かすしかありません。そうなった場合に唯一機能するとすれば、それは統一朝鮮が中国の作戦指揮システムの支配下に入ったときだけでしょう。そうすれば戦うことはできるのかもしれません。