ジェームズ・ホームズ(著) 平山茂敏(訳)『海洋戦略入門 平時・戦時・グレーゾーンの戦略』

海国に生きるものには必須の「「共通の基準」(大局観と語彙)」とは何か?
海洋戦略、シーパワーの内容がつかめる実用書。
手に入るようでなかなか手に入らない「基地の価値」も、手に入れることができるなんて・・・。

 

こんにちは。エンリケです。

 

このページでは、
ジェームズ・ホームズ(著) 平山茂敏(訳)の
『海洋戦略入門 平時・戦時・グレーゾーンの戦略』
を紹介しています。

 

 

「共通の基準」(大局観と語彙)

 

 

「目の前にある仕事」以外のことには口をつぐむ。
これは海軍の体質で、すべての現代海軍が抱える問題を示しているとされます。

 

その体質をブレイクスルーするため、米海軍では、戦略的な優位を成し遂げる行動指針を明らかにし、話し合うための「共通の基準」(大局観と語彙)を必要としているそうです。

 

今の若手士官は、自分の公私の振る舞いがもたらす戦略効果を無視して生きることはもはやできません。

 

いまや海軍若手士官は、自分の関わる「戦術レベル」の動きが作戦レベルにどう貢献するのか?戦略レベルの目的に合致しているのか?について早く意識することが望ましい時代です。

 

また、こういった意識を持たず、戦略レベルの理解が不十分なままだと、「戦略レベルに貢献しない作戦」を立ててしまう可能性が高くなります。

 

これが、海軍初級士官、官僚、学生を対象に記された、マハン、コーベットなどの大家による議論を中心に、海洋戦略を総合的に学べるこの本の生まれた背景です。

 

なぜプロの海軍軍人に、海洋戦略の入門書が必要なのか?という問いへの答えです。

 

ここまで海軍の話として書いてきましたが、大きく見ると一般人も同じではないの?と思った方は、私だけではないはずです。

 

海洋戦略の見取り図を提供してくれるこの本は、

 

海の地政学とは?
海洋国家とは?
シーパワーとは?

 

という海洋国家としての根幹の疑問が生まれたとき、まず最初に読むべき本です。

 

というのは、いまの国際情勢は、海を舞台に展開されており、海洋戦略の基本を学ぶ必要はすべての方に求められるからです。海洋戦略の理解は、いま生きる我々の共通言語だからです。

 

学校を出たばかりの海軍初級士官、学生、官僚、ビジネスマン向けに簡潔・凝縮・簡明に書かれたこの本は、その目的にぴったり合っています。
地球表面の7割は水です。
8割の人々は水辺で暮らしており、交易の9割は海上輸送されています。

 

わが国は、国益がシーレーン、漁場、海底の天然資源採掘など、の安全に依存している島国です。
わが軍事戦略の大半を占めるのは海洋戦略であり、わが自衛隊が戦略的競争を展開する場のほとんどは、本質的に海洋的な場所です。

 

そのうえいまの国際情勢は、海を舞台に展開されています。
ですからすべての軍種の軍人は、海洋戦略の基本を学ぶ必要があります。海洋戦略の理解は、三自衛隊が統合作戦で共に戦うための共通言語だからです。

 

海上における統合・共同作戦を円滑に動かして力を発揮するための潤滑油が本著といってよいかもしれません。

 

重要なポイントとして海洋戦略、シーパワー、港湾・海軍基地、心の地図があります。

 

海洋戦略

 

海洋戦略とは、アクセスについての術(アート)と科学(サイエンス)であるとされます。その目的は遠方の地域で流通と消費を可能とすることにあり、交易と通商は海洋戦略の鼓動する心臓といわれ、通商のためのアクセスが至上の命題となります。

 

地上・航空戦略と違うのは、「平戦時ともに機能する」という点です。
キーワードは「資源・輸送・情報・支配」です。

 

しかし我が国の人々は、どういうわけか「海に無知」で、こういうことに目を向けません。そもそも、あまりに海が身近すぎて「海とは何か?」を考えたことがないからかもしれません。

 

そのけっか、「海の区分」「領海・接続水域・EEZ・公海」「海洋は海洋公共財のまま」「国連海洋法条約」「公海航行の自由は分割できない」「北極海航路が持つ意味合い」といった海をめぐる感覚を知らずわきまえていないから、いま「公共財としての海洋が縮小する動きが出てきている」という最大の問題が起き始めていることに理解が至っていないように思われます。

 

ちなみに海洋戦略の世界では、マハンとコーベットを超える理論家はいまだ登場していないそうです。

 

シーパワー

 

「シーパワーとは、「生産」「海軍及び商船隊」及び「市場(植民地)」の3つの連鎖である」(A・S・マハン)

 

海軍はシーパワーの一部に過ぎません。

 

シーパワーは「生産(通商、産業)」「海軍と商船隊(艦船、海運)」「海外市場(港湾・基地)」を総合する連鎖の循環のことをいいます。

 

シーパワーの生みの親マハンは、「シーパワーは国家の活力の根元」といっています。真の海洋大国は、シーパワーの連鎖を構成する3つ
の要素のすべてを自ら賄います。

 

シーパワーは「通商」「艦船」「港湾・基地」の三要素の掛け算としても表現され、この感覚は、どこかの要素をおろそかにすると国家の繁栄を危うくするという点で非常に重要です。いずれかの要素が0になると、シーパワーは0になってしまうのです。

 

シーパワーは「公海へのアクセスの利便性」「喫水が深い港の数・場所に恵まれる」「海岸線の長さ」といった「不変の自然条件」が基盤となっており、現代は「地上に基盤を置いたシーパワーの時代」であり、戦闘艦隊、海軍の独壇場ではありません。

 

シーパワーの力を決めるのは「その国のビジネスに対する姿勢」であり、シーパワーと通商(ビジネス)は不可分一体と言えます。そのため「商業を軽蔑する社会」はシーパワーに対する「国民的資質」をほとんど示しませんでした。

 

シーパワーを動かし続けるには、国民啓蒙を含めた賢明な国政運営が必要ということなんですね。

 

この面で考えると、どうもわが国には「金儲けを卑しむ「ビジネス、商業蔑視」」の感覚が強く、これが、海国であるにもかかわらず、海洋戦略やシーパワーへの視座をあまり感じない理由かもしれません。

 

わが国がなぜ、地上国境を抱える国と同じような戦略発想しかできないのか?少なくとも江戸時代からは続いている問題のように見えます。いや、水軍=海賊ともいうべき発想が自然に生まれてくる背景を考えると、もっと昔からでしょうか。非常に根が深い問題かもしれません。深く知ってみたいですね。

 

本著では「自由主義政体」と「専制主義的政体」で、シーパワーの建造管理にどのような違いがみられるか?というテーマも取り上げられており、興味深い結果を提示してます。

 

けっきょくのところ、通商や海上戦に対する海洋国家の政策は、海軍を設計して建造・維持するには特別な産業が必要といった面や、海運事業に人々を集めるという点でも社会に広く大きなインパクトを与えるわけです。

 

政府が防衛に金を出さないのは16世紀のむかしから同じようですが、国がシーパワーに必要な資源を注げない原因は「その国の文化」にあり、国民の性格を刷新することが緊急の事業なのかもしれません。

 

なおこのテーマは、わが国だけでなく、現代の米をはじめとする主要国が、海洋事業に向けた国民の気風を保つことができるか?という大きな問いとして成り立ちます。

 

港湾・海軍基地

 

港湾は、本国の生産者と海外市場に商品を運ぶ運送業者の接点であり、海外の販売者と本国の購入者の接点でもあります。港湾はそれだけで生産と消費の原動力となり、「アクセス」という価値を生みます。港湾の数、能力、能率は、生産、流通、消費の有用な測定基準とっ
ており、港湾とそれに連なるサプライチェーンは、海外市場における商品需要を満たすうえで極めて重要な存在です。

 

ただ、港湾を作ることはそう簡単なことではありません。また、孤立は港湾の価値を低下させる要因となることに注意が必要です。

 

なお海軍根拠地が持つ軍事的戦略的な価値は、「地理的位置」「防御力」「資源」「海軍基地」から成り立っています。なかでも、社会・政治的な機能不全は海軍基地の「場所の価値」を低下、もしくは完全に無効にすることを忘れないようにしたいですね。

 

心の地図

 

オバマ政権時のクリントン国務長官はメルカトル図法で惑わされた。というケーススタディに代表される「地図による認知のゆがみ」は非常に重要な視点ですが、あまり深く掘り下げた話を聞きません。心の地図が人によって違うことや、国家の文化の一部を構成している面があるからかもしれません。

 

地上の常識と海の常識は違っており、これが、海洋戦略と地上・航空戦略の違いを生んでいます。では何が違うのか?について著者は、「心の地図による誤解」と表現し解説しています。

 

海と陸はまったく違う特性を持つ別個の領域として扱う必要があります。陸の兵士が山や丘、隘路や高所といった視点から考え、パイロットや潜水艦乗りは三次元で考える、など、発想の根元から異なるんですよね。

 

地理的環境に精通することが、競合を前提とする各種事業計画を成功させる必要条件であることは確かなようです。

 

個人的に響いたのは、「制海をめぐる戦い」で取り上げられていた以下の点でした。

 

・より強力な側のオプションと自らの劣勢を克服せねばならない側のオプションの違いとは?
・キーワードとなる「防勢」は、急場をしのぐ方法
・防勢の強さと本質は「反撃」にある。

 

著者

 

のジェームス・ホームスさんは海軍士官で、どちらかといえば「うるさ型」の人のようです。

 

略歴は次のとおり。

 

ジェームズ・ホームズ
1965年生まれ。米海軍大学J.C.ワイリー海洋戦略講座教授。バンダービルト大学の予備役将校訓練課程(ROTC)卒業後海軍士官に任官。戦艦ウィスコンシンに砲術士兼応急士として乗り込み湾岸戦争に従軍。復員後、海軍の勤務と並行して国際関係論の修士号(MA)、国際安全保障及び戦略研究の学位(Diplomat)、数学の修士号(MA)、法と外交の修士号(MA)、国際関係論の博士号(Ph.D.)を取得。2002年からジョージア大学で教鞭をとり、2007年から米海軍大学の准教授、2017年から教授。25冊以上の著書があり、本書のほかに『太平洋の赤い星』(バジリコ 2014年)が邦訳されている。

 

前米国防長官のマティス海兵大将は「うるさいやつ」、元米海軍作戦部長のハワード海軍大将は「波風を立てる男」と評しているそうですw

 

インド太平洋地域に強い関心を持っており、とくに中共への関心が強い方ということです。

 

本著ではマハンの言葉を多く引用されてますが、けっして無批判なマハン信奉者ではありません。

 

翻訳を担当されたのは、平山茂敏さんです。略歴は次のとおり。

 

平山茂敏(ひらやま・しげとし)
1965年生まれ。防衛大学校防衛額教育学群教授(戦略教育室)。防衛大学校卒業後、海上自衛隊で勤務。英国統合指揮幕僚大学(上級指揮幕僚過程)卒業。ロンドン大学キングスカレッジで修士号(MA)を取得。防衛学修士。護衛艦ゆうばり艦長、在ロシア防衛駐在官、海上自衛隊幹部学校防衛戦略教育研究部戦略研究室長などを経て現職。訳書に『アメリカの対中軍事戦略』(監訳、A.フリードバーグ著、芙蓉書房出版)、『現代の軍事戦略入門』(共訳、E.スローン著、芙蓉書房出版)がある。

 

訳書の前2著はいずれもご紹介したはずです。

 

正直言うと、肌が合う訳者さんです。担当された本はすべて面白く興味深く、再読すれば再発見があり、ためになりました。今回もそうで、これからもそうなる予感がします。注目の訳者さんです。

 

本の概要

 

これは海洋戦略の入門書です。海洋国家にとって好ましい循環とは何か?を解説する本です

 

海洋国家にとって好ましい循環について、「シーパワーの作り方」「好循環を維持する方法」「海軍はなにをするのか」の三章で解説しています。

 

目次

 

第1章 シーパワーの作り方
海とは何か/シーパワーとは何か/誰が正しい素質を有しているかを測定する:マハンの「シーパワーの要素」

 

この章では、「海とは何か?」「海洋における協力・競合の相互作用」「シーパワーとは何か?」について書かれています。

 

第2章 好循環を維持する方法
本国と海外の商業海港/本国と海外の軍港/軍港の候補者を評価する:君たちの地図を見よ/船舶:商船隊/艦艇:海軍/海に対する戦略的意志

 

この章では、シーパワーの循環(作って、運んで、売る)をいかに回し続けるか?について書かれています。
「軍港の問題」「シーパワーを支える商船」「海軍について」「艦隊に命を吹き込む戦略的意志」などへの言及があり、最も重要な章といえます。

 

第3章 海軍はなにをするのか
戦略の不変性/外交的役割/警察的役割/グレーゾーンにおける警察的役割と軍事的役割の協力/軍事的役割/特別な例:「累積」作戦/トラブルメーカー戦略:分遣隊による戦争/新しくつくられた古いアイディア:接近拒否と領域拒否/マキャベリの警告:文化に気を配れ

 

この章では、シーパワーの要素の中で最も目立つ「海軍」について「海軍が何をなすべきか?」という視点から論考されています。おそらくあなた
が一番興味をひかれる章でしょう。キッシンジャーの核抑止理論からはじまり、わが国もなじみ深い、ケン・ブースの「海軍の3つの役割(外交的役割・警察的役割・防衛的役割)」の解説もあります。著者はここで軍艦が発するメッセージを活用する外交的役割が最も重要としています。海洋サプライチェーンの流通の輪を「守り奉仕する」ことが警察的役割としています。

 

軍艦は存在そのもので意図と決意を意味します。海軍力の展開や兵器は目に見える戦闘能力です。

 

平時の武力誇示が印象的であればあるほど「敵に投げかける影」は長く暗くなるのです。わが武力誇示が敵に投げかける影が長くなればなる
ほど我が国は安全になり、逆になると我が国は危険になります。

 

またわが国にとって身近な、同盟に潜む「見捨てられ」「巻き込まれ」の問題、グレーゾーン問題に関する考察も興味深いです。グレーゾーン問題については中共・ロシアの手法、軍事的役割の本質とは何か?という観点から考察されています。

 

この本を読むまでは、海洋戦略とはどういうものか?が雲をつかむようで手につかめていなかったように思います。

 

海と陸はなぜなじみあえないのか?感覚が違う。その理由がわからなかったのです。

 

しかし本著を読む中で、平戦時問わず動き続ける海洋戦略、シーパワーは海洋国家の生きるすべ、国家戦略そのものであり、ドンパチの話は欠かせない要素だが、それがすべてでは全くなく、むしろビジネス(通商)のほうが重要な要素であることがわかってきました。

 

海洋戦略の見取り図もハッキリ見えるようになり、海軍がその一部に過ぎない「シーパワー」の意味がつかめ、見る地図の違いが生み出す根本的な差異がわかりました。大陸の発想と海洋の発想のどこがどう違うのか?を掴めたのも収穫ですね。

 

陸と海は相互依存、共生関係にある。
戦略的な地理には需要と供給の関係がある。
テクノロジーが海と陸の間の相互関係に新生面を開いている。
シーパワーは海軍や海上だけで維持できるものではない。

 

ということも見えてきました。

 

地理経済学、水路測量学といった、興味深い学問の存在を知ったことで、より広く深い「海への視野」が拓けてきました。

 

コーベットとマハン

 

コーベットとマハンの違いがよく見えた本でした。「弱者の戦略」に着目するコーベットへの興味が強く湧きました。

 

いっぽう、ランドパワーを体現したかのようなジョミニの信奉者だったマハンが、間接アプローチの創始者といえるリデルハートと考え方を共有している(P191)との指摘にはハッとさせられました。また、大艦巨砲主義の権化というイメージがマハンにはありますが、彼は主力艦の支持者であって、戦艦の支持者ではない、との指摘が新鮮でした。

 

優越の原則

 

国家が、ある海路の支配に「もっとも確実な繁栄」を見出した場合、互いにそれを支配するために争うことになるのは国際関係の鉄則です。
わが国と韓国(中共?)はその関係にあります。海洋をめぐる優越競争は、主として海軍の優越いかんであり、部分的には決定的な位置の占有次第となります。

 

中共の海洋進出

 

中共の海洋進出の本質(P182-188)や、中共の窮状をめぐる分析が面白かったです。地勢的に見て、西太平洋とインド洋へのアクセスが阻止されている中共は、長い陸上国境を接していることから、つねに海洋への志向から注意をそらされる宿命に置かれています。また、大国のはざまという、戦略的に見て比類なく厳しい場所に置かれています。

 

中共は、封鎖に対して脆弱なままの状態にあるのです。

 

昨今の南シナ海問題は、世界覇権を中共が握るか否かの試金石、という面があります。この問題の危険性を軽く見てはいけません。南シナ海でルールが変わると、全世界に影響が及び、中共が全世界で発言力を拡大する可能性が高まります。

 

ロシアやイランの動きともつながっています。米英わが国などの海洋国家諸国ががはるばる現地に出向く理由はそこにあります。

 

海洋国家としての視座があれば、中共の南シナ海における異常な振る舞いに英米等の海洋国家諸国が敏感に反応している理由はすぐにわかります。それにしても、根無し草だったカルデンは、中共に居場所を得たようですね。

 

中共の戦略は、国内問題を地域、世界の問題の上に置く傾向があるとされます。大陸国家に共通して見られる特有の傾向かもしれません。たとえば「接近拒否、領域拒否」という言葉がにぎやかですが、これは別に新しい概念ではありません。この概念については219ページで解説されています。

 

また中共は、大量の商船を維持し、戦時に簡単かつ迅速に商船を改装するため、商船を軍用規格で建造することを要求しています。
中共が言っている「第一列島線」「第二列島線」の意味もよくわかります。

 

インド

 

忘れてはいけない大国・インドについても興味深い話があります。

 

海洋戦略的に見て理想的なインドの戦略環境はなぜ混乱しているのか?その答えは「中共との陸上国境」です。

 

中共への備えに回すため、シーパワーに大規模な資源投入ができないのです。地上国境を抱える国の戦略は隣国の動向に左右されるということです。

 

ちなみに、国有の商船隊は、海洋戦争の要求、困難、リスクを軽減する戦略となる「ヘッジ」をかけます。戦争が起きたとき商船と乗員は、海軍と海運という二つの機能を果たすことになるのです。

 

 

わが国は海洋国家であり、海から国を考える姿勢が不可欠ということを改めて覚えた。この本により海から世界、日本をみるきっかけが手に入りました。経済的利益は海洋戦略の主たる目的であり、その原動力でもあることがよく理解できたから、ビジネス、通商等への関心をもっと広げ深めてゆきたいと感じています。

 

「自由主義的政体と専制主義的政体ではシーパワーの建造と管理にいかなる違いがあるのか?」という大きな問いに対する貴重な知見を得られました。「陸対海」という二項対立でものごとを考え見るのではなく、海洋国家としてのわが国、という立場から防衛や国防安保、軍事を見てゆく基礎が培えました。

 

さいごに

 

著者は、本著を通じて、海の武人、学者、ビジネスマンが自らのキャリアを通じて戦略とその歴史を学び、本著を批判的に読んで海洋戦略に関する独創的なアイデアに発展させてほしい、と望んでいるようです。

 

海国日本で生きるために必須の知性「海洋戦略という発想」を身につけ手に入れるきっかけとなる格好の書

 

軍事戦略だけでなく、商船・商業港湾など「公共財としての海」をめぐる戦略まで幅広く取り上げた総合入門書

 

戦闘能力を伴わない海軍外交家の言葉には何の重みもない、という現実感覚に重みを与えてくれる戦略書。

 

海洋戦略の双璧マハンとコーベットを中心に、ワイリー、リデルハート、ウェゲナー、ルトワック、ブース、ティルなどの戦略理論にまで言及。

 

すべての戦略理論を網羅せず、戦術談議を排除し、マハンやコーベットの理論の縮刷版でも要約版でもないこの本は、一生かけて学ばなきゃいけない「戦略学習」の入り口にいざなってくれる魅力を与えてくれる本なのです。

 

よむべき戦略書籍に終わりはありません。もっといえば、戦略理解はできるものではなく、その研究に終わりはないのです。

 

戦略とは、勝利のマニュアルやアルゴリズム、チェックリストをまとめることではありません。
わたしも、おわりなき「戦略学習」に向けて進んでゆきます。生涯の付き合いを楽しんでゆきたいです。

 

 

ご紹介したのは、

 

 

『海洋戦略入門 平時・戦時・グレーゾーンの戦略』

 

著者 :ジェームズ・ホームズ 平山茂敏 訳
芙蓉書房出版
出版年月日:2020/09/10
ISBN 9784829507971
判型・ページ数 四六判268ページ
定価 本体2,500円+税

 

 

 

 

でした。

 

 

 

 

 

 

エンリケ

 

エンリケ
メールマガジン軍事情報発行人。2000年10月の創刊以降、一貫して軍事・自衛隊・インテリジェンス理解に資する情報を無料メルマガで提供中。メルマガ連載から出版に至った本は10冊。連載執筆者は20人を超える。寄稿者は数えきれず。軍事啓蒙業界のブレイクスルーが夢。趣味は読書。分野を問わず毎日本を読み続けている。

 

海国日本で生きる人に不可欠な常識「海洋戦略」を知りたい方は、
以下ボタンをクリックしてください。

 

 

 

追伸

 

この本で、

 

海洋戦略のエキス
シーパワーの3つの要素
陸と海はなぜ違うのか?の理由

 

をぜひ手に入れてください