自衛隊とその他のUAV(1)

今回から無人航空機、通称UAVについての連載です。月刊『丸』で掲載した複数の記事をまとめ、加筆修正してお送りします。
UAVはその重要性から「勉強しなければ」という背中を突つかれる思いでこれまで必死に学んでいたのですが、その思いをかきたてるきっかけとなった出来事がありました。
ひとつは、2021年2月の北海道取材でご一緒したカメラマンのひとりがドローンによる撮影もする方で、その映像力を現場で目の当たりにして圧倒されたことです。もともと動画は拝見していましたが、取材現場での映像は、自分もその現場にいるせいもあって「こんな映像が撮れるのか」という驚きと感動がありました。
「どこまで戦車が来ているか」「どこまで赤部隊が迫っているか」といった、これまで隊員がリスクを負って確認しなければならなかったことを、ドローンは上空からさらっと教えてくれます。もちろん撃墜されるリスクはありますし(ちなみに、取材者のドローンの一機は火砲ではなくカラスにバードストライクされました)、天候によっては飛ばせないというハンデもあります。しかしそれらのネガティブ要素をもっても、ドローンの強み、魅力はものすごいものがありました。
もうひとつは、そのときの取材が第2師団第3普通科連隊を基幹とする戦闘団の訓練検閲だったのですが(近日中にこちらの記事もこのメルマガでご紹介したいと思っています)、部隊もUAVを扱って偵察しているシーンを目の当たりにし、さらに第3普通科連隊隊へのインタビューで「UAVが戦闘を変える」という認識を新たにしたことです。
約四半世紀前の『ニューズウィーク日本版』で近未来の戦争のイラスト見たとき、「なんかガンダムの世界だな」と絵空事のように思っていたのがずっと頭に残っていましたが、「ついに時代が追いついた」と脳内が興奮しました。
さて、まずは自衛隊無人機事情からご紹介します。
南西諸島に代表されるわが国を取り巻く厳しい安全保障環境に加え、今後ますます深刻化する少子高齢化への対処として、防衛省は中期防衛力整備計画(令和元年度~令和5年度)において「防衛装備品の無人化、省人化の取組を積極的に進める」としました。
具体的には、情報処理や部隊運用などにかかる判断をはじめとする各分野への人工知能(AI)の導入、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)の整備、無人水上航走体(USV:Unmanned Surface Vehicle)及び無人水中航走体(UUV:Unmanned Underwater Vehicle)の研究開発などです。
無人のアセットによる任務の効率化は、限られた条件の中で厳しさを増す安全保障環境に対応するためには必須といえます。乗員の生命を守るための配慮が不要ゆえ、安価に製造できるメリットも大きいでしょう。
現在、世界の主要国は有人機と協調行動を行なう高度に自律化された無人航空機の開発を進めています。
自律型無人機は危険な状況下での情報収集・偵察・監視や戦闘などの任務を担当するほか、戦況から各機が採るべき戦術を策定して有人機のパイロットなどに提案し、人間による処理の負担を軽減するといった先進的な機能や能力が想定されています。
人命リスクがなく機体も低コストの無人機を活用することで、任務をより低リスクで行なうことが可能となります。
その一方で、防衛省が研究開発を進めている無人機はいずれも丸腰であり、万一攻撃を受けた場合の脆弱さは否めません。
そのため、多数の無人機を瞬時に無力化できる高出力マイクロ波や無人機、迫撃砲弾といった脅威に、低コストかつ低リアクションタイムで対処しうる技術の導入に向けた調査や研究開発も並行して進めていく必要があります。
次週から、自衛隊における無人機事情を具体的にご紹介します。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和三年(西暦2021年)11月18日配信)