第25戦闘団冬季訓練検閲(10)

今回は、前回の戦闘予行の続きです。
昨日は構築中だったCPに立ち寄ると、内部もすべて完成し、人も機材も仮CPからの移動が終了していまいた。やはり片側の壁一面にモニタが並び、机の裏には無数のケーブルが走っています。ここで戦闘団長が必要な決心を下達、部隊を指揮統制するのです。
明るく清潔感すら感じられるCPですが、ここに指揮官達が集まり、地図を囲んで顔を突き合わせて話すというシーンはほとんど見られません。必要な情報はFiCSで共有できているので、会議の必要性が生じないのです。
この時、幕僚が部隊へ無線で通達を出しました。
「こちら13、2点連絡する。まず0945から離陸するヘリについては状況外。2点目、配備の完了時刻の変更について。本日1700まで南富良野以南に敵を阻止する模様。よって戦闘団は戦闘準備の完成時刻を変更する。前方地域、戦闘態勢完了時刻を1700配置完了、主戦闘地域、1900配置完了」
ということは、1900以降はいつ防御戦闘が始まってもおかしくない状況ということです。いよいよ訓練検閲もクライマックスが見えてきました。
CPを出て先に進むと、雪壁を作っている場面に出くわしました。掘った部分に蛇腹鉄条を置いて敵の足を止める戦法です。
敵の歩兵は目立つ道路は進まず、除雪されていない場所をスキーやかんじきで進みます。このような雪壁を乗り越えて初めて蛇腹鉄条が見えるので、足が止まったところを狙い撃つのです。
敵もこういったトラップが仕掛けられていることは想定していますが、実際にどこにあるのかはわからないので、単純だが効力のある方法です。いくらデジタル師団といっても障害など物理的なものは第2次大戦から変わっていないし、このような昔ながらの戦法もまだまだ有効です。
さらに進むと小森一生副師団長の姿が見えました。状況の視察をしているようですが、出会った場所は演習場内のかなり奥まったところで、除雪ができておらず雪上車が進めない部分が多いのです。実際、周囲に雪上車の姿は見えず、副師団長はかなりの距離を半長靴で歩いて来たそう。この脚力、さすが毎日走っているだけありますね。
段列では、昨日は構築中だった衛生の救護所が完成していました。
白色のバラクーダの代わりに、空挺傘をかぶせて偽装しているのはなかなかのアイデアです。バラクーダの数にも限りがあるので、偽装に使えるものはどんどん使うそう。
准看護師の資格を持つ隊員もいるここでは銃創、骨折など外傷の応急処置がメインで、止血や点滴、ルート確保、ガーゼ交換などを行います。病室は別の天幕になるので、歩けない隊員はアキオで運びます。ここで対応できない症状の場合は師団扱いになるので収容所へ送ります。
山の斜面を利用して構築された救護所の周囲には、上からの脅威に備えて有刺鉄線が張り巡らされていました。こういった障害の構築は後方支援部隊の協力を得るのかと思いきや、すべて衛生班のみで行っているそうです。
もうちょっと続きます!
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)1月22日配信)