第25戦闘団冬季訓練検閲(3)

3月6日、1230に情報小隊がスキー行進を開始。その2時間後
に1中隊、30分後に3中隊がスタートしたところで状況開始と
なりました。
そこからは10分刻みで4中隊、戦闘団司令部、重迫中隊、本部
管理中隊と続き、しんがりの2中隊が行進を開始したのは1550。
演習場内の装輪道及び装軌道車道が並行している区間は装輪
道を使用、ただし除雪状況によりスキー行進に適さない路面状
態の場合は、受閲部隊長の統制で装軌道車道を使用可能という
設定です。
敵の脅威下での行進における部隊の基本的行動及び隊員の基礎
動作を検するため、行進中にも敵の遊撃部隊による伏撃が行われ
ました。
しかも行進も終盤の夜中、最初から容赦ない状況が付加されてい
ます。
25戦闘団が5カ所の統制点を経て分進点に到達したのは、情報
小隊が翌日0100過ぎ、2中隊は0400を過ぎていました。
戦闘団長から防御準備命令が下達された後は敵の航空偵察を
しのぎつつ、7日は終始陣地の構築に費やされました。陣地の構築
とは、基本的にひたすら「穴掘り」です。
8日になると、いよいよ対抗部隊も積極的に仕掛けてくるようになり
ました。
0700にはケミカル弾による航空攻撃を行うという設定で、戦闘機役
のOH-6Dが準備を進めています。隊員が赤い布を地面に打ち付け
ている見慣れない光景に何の意味か尋ねると、2師団の広報室長
が「色の付いた固定物があると、離陸の際に姿勢や方向を決める
助けになります」と教えてくれました。
確かに周囲は白一色の世界です。けれど吹雪いているわけでもなく
視界は確保されており、すぐそばの小高い丘も目印にもなるでしょう。
なぜわざわざと思っていたのですが、ローターやスキッドに積もった
雪を払うためにOH-6Dがホバリングを始めると、すぐにそのわけが
わかりました。
小型の観測ヘリながら、ローターが引き起こす猛烈な風と湿気を含ま
ないパウダースノーがタッグを組むと、周囲は完全にホワイトアウト。
何ひとつ見えないどころか、まっすぐ立っているのも、呼吸をすること
すら難しいほどの風雪です。広報室長いわく、猛吹雪で生じるホワイ
トアウトもこれと全く同じ状態とのことです。
OH-6Dの離陸を見届けてから、25戦闘団のCP(指揮所)構築現場
に向かいました。
外壁には雪に砂を混ぜて水で凍結させたアイスクリートを使用してい
ます。これはコンクリート並みの強度を誇る優れもので、小銃を連発
されるとさすがにくだけますが、1発当たった程度ではひびが入るだ
けで貫通することはありません。
四角く削られたアイスクリートを積み重ねた外壁の内側は、断熱材
とべニヤ板で居住性を考慮した造りです。夏は断熱材が不要なので
ライナープレートで壁を覆えば済みますが、冬は防寒対策を施す分、
工程が増えます。
作業しているのは本管中隊施設作業小隊で、CP構築には2師団の
中でもかなりのこだわりを持っている部隊だとか。ほかの部隊の場合、
機能だけでなく見た目や居住性をもここまで考慮した作り込みは、手
間がかかるだけになかなかしないのだそうです。
次回はCP内部の様子についてなどもご紹介します。
(わたなべ・ようこ)
(平成26年(2014年)11月27日配信)