警戒航空隊(8)

本日で警戒航空隊の話は最終回です。
E-2Cの続きからです。
E-2Cが通常の錬成訓練を行っているときに、地上レーダー
が探知していない彼我不明機を捕捉し、DCへその情報を
送ったところスクランブルがかかった、といったケースも珍し
いことではありません。訓練がいきなり実任務になる可能
性があることが、E-2Cの搭乗員たちに、常に緊張と高い
士気を抱かせているのかもしれません。
さて、このE-2Cは米国製ということで部品の調達等で不自
由があること、何よりも老朽化が進んでいることから、防衛
省は国産の早期警戒機の開発を検討しています。読売新
聞の記事を以下に引用します。
========
早期警戒機、国産化を研究…領空侵犯の監視強化
2014年09月21日 読売新聞
防衛省は、領空に接近する外国軍機をいち早く発見す
る早期警戒機の初の国産化に向けた研究をスタートさ
せる。
中国の軍事費増強などで厳しさを増している日本周辺
の安全保障環境への対応能力を強化することが狙いで、
2020年代半ばまでの開発を目指し、老朽化が進む米
国製現行機の後継候補としたい考えだ。
(中略)
空自では現在、米国製早期警戒機「E2C」13機が、指
揮機能も備える空中警戒管制機「E767」とともに、警戒
監視に当たっている。E2Cはすでに導入から長期間が
経過し、後継機の検討が急務。防衛省は、E2Cの米国
製後継機に加え、国産早期警戒機も導入したい考えで、
来年度予算の概算要求で調査研究費8000万円を計
上した。
防衛省は来年度には、民間企業と協力して模擬機を
製作する。実際の機体は、防衛省が開発した最新鋭
の対潜水艦哨戒機「P1」をベースに、国産の固定式地
上レーダーなどを応用したレーダーを搭載する構想だ。
ただ、P1の開発完了までには12年間で2528億円が投じ
られているため、さらなる国産開発を行うにはコスト面
が課題となる。
========
E-2Cの後継機としては、E-2Cの発展型であるE-2Dが
有力と見られていました。米海軍はE-2Dを来年から本
格的に運用する予定です。また、オーストラリア、トルコ、
韓国が採用したボーイング737 AEW&Cという声もあり
ました。これらに加えて、海自の対潜哨戒機P-1をベース
にした国産機の導入も検討するというのです。
国産機のメリット、デメリットを考えてみましょう。
メリットとしては、P-1はジェットエンジンなので速度や航続
時間はE-2Cより向上すること、E-2Cに比べて大型ですか
ら(E-737と同等です)、搭乗する隊員や搭載する機器を増
やせることなどが挙げられます。また、故障した部品の調達
が間に合わず機体が運用できないといった外国製ならでは
の悩みもありません。さらに、あくまでもE-2Cの改良版であ
るE-2Dより高性能な早期警戒機を開発できます。
デメリットとしては、やはりコスト面でしょう。読売新聞の記事
にも指摘されているように、国産機の開発には莫大な費用が
かかります。これは非常に大きなハードルです。また、他国の
早期警戒機を導入するのに比べ、実際に運用されるまでには
長い時間もかかります。
「E-2Dは国産機開発までの中継ぎ、本命は国産機」という見方
もある一方で、「大量生産するわけでもない早期警戒機に多額
の費用をかけて開発する必要があるのか」という声も聞かれま
す。P-1をベースにすることについても、「各種通信装置などを活
用して装備品の共通化を図るためにはP-1が望ましい」「機体も
エンジンも専用品だからコストが高く4発のエンジンは維持費も
かかる」と、賛否両論。E-2Cの後継機、来年以降の動きに注目です。
うまくこなして当たり前、誰からも評価されたり称賛されたりする
ものではないという警戒航空隊の任務。
けれど評価されなくても、自分たちが対領侵措置の一端を担って
いるという充実感、満足感、そして使命感が強く伝わってくる部隊
でした。機会があれば那覇の第603飛行隊もぜひ取材したいです。
(了)
(わたなべ・ようこ)
(平成26年(西暦2014年 皇紀2674年)11月6日配信)