警戒航空隊(4)

AWACSのパイロットは常に安全に飛ばすことを第一に
考えているのはもちろんですが、上空ではミッションクルー
に快適な環境を与えることも心がけています。
本来パイロットというのは最もスポットライトを浴びるクルー
の花形のはずですが、AWACSの主役はあくまでも警戒
管制。パイロットはその任務がスムーズに遂行されるよう
に尽力するサポーターです。フライトの際にきついのは
コックピットに容赦なく照り付ける強い日差しだそう。
窓のない閉塞的な空間にいるミッションクルーには無縁
の悩みです。
ミッションクルーの話では、フライト中に眠くなったりする
といけないので、フライト前は風邪薬を飲めないそうです。
そのため不規則な勤務体制でも体調を崩さないよう、
日頃から気をつけないといけません。とはいえ、これは
AWACSに限らず、すべての航空機に共通していることですね。
また、地上DCと違ってAWACSの管制は場所を選びません。
毎回違う状況で任務を遂行しなければならないから、管制
能力だけでなく順応性や柔軟性も求められます。
このAWACSが常に能力を発揮できるよう整備しているのが、
第2整備群です。
修理隊がエンジン、油圧、計器、電気系統などの整備を担当、
装備隊がレーダー、コンピュータ、通信の整備を担当しています。
第2整備群の特徴は、バックグラウンドの違う隊員がここに
集まり、AWACSというひとつの航空機に関わっていることです。
通常は航空機の整備は各航空基地で、レーダーの整備はレーダ
ーサイトで行われます。ところがAWACSはレーダーを積んだ
航空機。そのため、レーダーサイトで勤務する人と地上で航空機
を整備する人が一緒になって整備しているのです。
この部隊にやってくる隊員は、全員がAWACSを初めて整備する隊員
たち。ほかにAWACSを扱う部隊がないのだから当然です。そういった
隊員を部隊創設時からAWACSに関わっているベテラン整備員と同じ
レベルに近づけるのは大変なことですが、技術の伝承はしっかり行わ
れなければなりません。
また、そのレーダー整備を担当している若い隊員たちが育ち異動する
ことになった場合、ほぼレーダーサイトへの異動となります。しかし
AWACS一辺倒でレーダーサイトの装備品には関わったことがない
という状態ですから、この部隊にいながらレーダーサイトの勉強もする
必要がある、そういった大変さがこの部隊にはあります。
さらに、AWACSの飛行時間が長いほど整備の隊員も長時間拘束
されます。上空で航空機を交代することによって警戒管制を行う
連続哨戒になると土日も関係なくなるので、クルーだけでなく地上
整備の隊員も疲労が溜まりやすくなります。
第2整備群の隊員たちに大型機のメリットを尋ねると、大勢の整備員
が同時に作業できることを挙げました。小さな航空機だとスペース上、
場所を譲り合いつつ作業しなければならないこともあります。整備、
清掃、給油など、どれを取っても大型機は大変なことばかりと思い
込んでいましたが、そういう利点もあるのですね。
(わたなべ・ようこ)
(平成26年(西暦2014年 皇紀2674年)10月9日配信)