統合幕僚監部(3)

災害派遣における統合運用の実績と日本を守るための統合運用

今回は統合運用による自衛隊の具体的な活動を、いくつかご紹介します。

広島県広島市における人命救助にかかる災害派遣

死者72名、行方不明者2名という甚大な被害を招いた、現在も
進行中の災害派遣です。
8月20日、広島県広島市安佐南区において大雨の影響で
土砂災害が発生、同日6時30分、広島県知事から陸上自衛隊
第13旅団長(広島県海田市市)に対し、人命救助にかかる災害
派遣要請がありました。
派遣部隊は第13旅団隷下の各部隊、中部方面航空隊のほか、
海上自衛隊呉造修補給所の隊員も行方不明者捜索活動を
実施したため、統合運用に該当するケースとなりました。
26日に呉造修補給所の部隊は活動を終了しましたが、
8月31日現在、海田市駐屯地に展開している各航空関係
要員等約60名、各地連絡調整要員約20名、現地前方指揮所
要員約10名、後方支援要員・指揮所活動要員・情報収集要員
約170名が活動中です。

東日本大震災

未曾有の災害となった東日本大震災は、防衛省・自衛隊に
とっても過去に類を見ない規模での災害派遣となりました。
まず、地震・津波の災害に対応する災統合任務部隊(JTF東北)
を編成、陸自東北方面総監を指揮官とし、その下に陸海空
各自衛隊の部隊が展開しました。航空機による情報収集、
被災者の捜索及び救助、消火活動、医療支援、道路啓開、
瓦礫除去、防疫支援等、その活動は多岐にわたりました。
約5カ月で、派遣された隊員は延べ約1058万人にもおよびます。
人命救助約2万名、遺体収容約9500体、給食支援約500万食、
入浴支援約110万名という数字からも、活動規模と被害の大きさ
が見て取れます。
また、原子力災害派遣部隊は中央即応集団司令官を指揮官とし、
中央即応集団の対処部隊、各方面隊の化学科部隊、海自と
空自の部隊の一部を中心に編成されました。福島第1原子力
発電所への空中放水と地上放水のほか、被災者の捜索や
避難支援、給水支援、モニタリング支援等も行いました。
延べ8万人を派遣、除染にも関わったため、こちらは平成23年
12月まで活動が続きました。

台風26号に伴う伊豆大島への災害派遣

昨年10月、台風26号の影響により大島で土砂災害による
多数の行方不明者が発生。東部方面総監を指揮官とする
統合任務部隊を編成し、行方不明者捜索、患者空輸、入院患者
の島外避難搬送、遺体の搬送などを行いました。
派遣された陸上自衛官は空自の輸送機で大島に飛び、
車両や機材は海自の輸送艦で運搬、現地ではLCACで
地上に搬送しました。派遣規模人員約650名(延べ約2万
1000名)、車両約170両(延べ約5120両)、艦船延べ17隻、
航空機延べ80機。

大雪に伴う災害派遣

今年2月、関東地方を中心に襲った大雪により、各地で
交通網がマヒしたり集落が孤立するといった事態が発生
しました。自衛隊は陸自と空自で災害派遣部隊を編成、
山梨、群馬、福島、長野、静岡、東京、宮城、埼玉の
各都県で人命救助や物資輸送等を実施しました。
道路が雪で埋まり孤立したホテルでは、そりを引きスキー
で救援にやって来る隊員達の姿を宿泊客が携帯電話で
撮影、その様子は動画サイトで多数再生されています。
この災害派遣では延べ5000名が動員され、車両延べ
約990両、航空機延べ131機を使用。73名を救助したほか、
物資輸送44t、除雪距離約280kmにおよびました。
統合運用は災害派遣に限りません。自衛隊の主任務で
あるわが国の防衛という面でも、統合運用による新たな
体制の整備が進んでいます。たとえば弾道ミサイル防衛(BMD)は、
海自のイージス艦による迎撃と空自のペトリオットPAC-3に
よる迎撃を、自動警戒管制システム(JADGE)により連携
させて効果的に行います。弾道ミサイルの弾着などによる
被害については、陸自が中心となって対処します。
また、島しょ防衛における統合運用能力向上のための
各種演習も行っており、その一環で米軍との実動訓練にも
取り組んでいます。昨年6月に米国カリフォルニアで
行われた統合訓練ドーン・ブリッツ13には陸海空自衛隊
が初めて参加、相互連携要領の確立を図りました。
今年6月から8月にかけては米海軍の主催する環太平洋
合同演習(リムパック)に、常連の海自だけでなく陸自も
初参加しました。
(わたなべ・ようこ)
(平成26年(2014年)9月4日配信)