レゾリュート・ドラゴン22(1)

2023年6月19日

本日から昨年10月に取材した日米共同実動訓練、レゾリュート・ドラゴン22のご紹介をします。雑誌『正論』に掲載された記事のノーカット版・メルマガ版をお届けします。
陸上自衛隊と米海兵隊は、2022年10月1日から14日まで、国内における共同の実動訓練としては最大規模の「レゾリュート・ドラゴン22(以下RD22)」を北海道の演習場で実施しました。
RD22は2021年12月に東北方面隊を担任部隊として実施されたRD21に続き、2度目の開催となります。
RD22の計画は2021年度から進められていましたが、結果としてロシアがウクライナに侵攻、かつ日本周辺で中国との共同演習めいた行動を繰り返すタイミングでの実施となりました。
RD21より前に実施されていた北部方面隊と米海兵隊による共同訓練は「ノーザン・ヴァイパー」と呼ばれ、連隊規模で行なわれていました。2021年度からは北部方面隊に限らず各方面隊が担任することとなり、名称も新たになりました。
RD22は陸上自衛隊及び米海兵隊の部隊が、それぞれの指揮系統に従い、共同して作戦を実施する際の相互連携要領を実行動により訓練し、日米の連携強化及び共同対処能力の向上を図ることを目的としています。
訓練実施部隊は、陸上自衛隊(約2100名)が第2師団司令部、第3即応機動連隊(名寄駐屯地)、第1特科団(上富良野駐屯地等)、第1電子隊(東千歳駐屯地等)、第3施設団(南恵庭駐屯地)、北部方面航空隊(丘珠駐屯地等)、第2後方支援連隊(旭川駐屯地等)など。米軍(約1400名)は第12海兵連隊(キャンプ・ハンセン等)、第3/3海兵大隊(キャンプ・シュワブ等)、第36海兵航空群(普天間飛行場等)、第3海兵後方支援群(キャンプ・キンザー等)のほか、米海軍、米空軍です。
訓練の特色としては前年同様、島しょ作戦における陸自の領域横断作戦と米海兵隊の機動展開前進基地作戦(Expeditionary Advanced Based Operations:EABO)を踏まえた連携要領の具体化を図るため実施するものであること、そして2016年9月の日米合同委員会合意に基づく、MV-22オスプレイの訓練移転を組み込んだ事業であること、です。これは沖縄の負担を軽減する取り組みのひとつで、訓練移転は今回で16回目となります。
RD22における訓練内容は次の通りです。
・陸自師団司令部及び米海兵隊連隊本部による日米の指揮機関が連携し、それぞれの指揮系統に従い作戦計画及び命令を作成するとともに、戦闘指揮等を実施。
・日米AH(対戦車ヘリ)、陸自の多連装ロケットシステム(MLRS)、地対艦誘導弾、電子戦、米海兵隊の多機能ロケット砲システム(HIMARS)、対戦車ミサイルジャベリン等の各種火力を連携させた島しょ防衛防護訓練を実施(上富良野演習場は「上富良野島」、矢臼別演習場は「矢臼別島」等、各演習場が島と見立てられていました)。
・日米共同による滑走路復旧訓練、HIMARSを搭載したKC-130輸送機による展開訓練等を実施。
なお、コロナ感染症対策として、訓練参加者は特別な理由によりワクチン接種ができない隊員を除いてワクチンを3回接種するとともに、訓練参加72時間前を基準にPCR検査を受検し、陰性が確認された隊員のみ訓練に参加するとしました。
訓練の内容を紹介する前に、なぜ「ノーザン・ヴァイパー」は「レゾリュート・ドラゴン」になる必要があったのかに触れておきます。
現在、陸上自衛隊では、陸、海、空という従来の領域に加え、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を踏まえた領域横断作戦の能力向上が喫緊の課題です。
一方、米海兵隊も従来の強襲上陸を主とした戦術から、ミサイルやセンサーを装備した小規模部隊が敵のミサイル射程圏内の島しょ部等に分散展開、前線に拠点を作り、米軍の空母や爆撃機が来援できる条件を作り出すことを狙うEABOへと戦術が変わりました。
領域横断作戦とEABOには、どちらの部隊とも作戦当初から戦域内に所在する「スタンド・イン・フォース」として、あらゆる領域からの攻撃に対して部隊を防護し、持久して作戦を遂行するという共通点があります。このため、同じ地域において陸上自衛隊と米海兵隊が作戦をする上で、あらゆる領域からの攻撃に対してお互いに補完し合いながら部隊を防護しつつ作戦を遂行することが極めて重要です。
そこで「ノーザン・ヴァイパー」から陸上自衛隊の領域横断作戦と米海兵隊のEABOを踏まえた連携向上を焦点とし、日米同盟による抑止力及び対処力を一層強化するための訓練として発展させた「レゾリュート・ドラゴン」となったのです。
次週は訓練開始式の様子をご紹介します。

(つづく)

(わたなべ・ようこ)

(令和五年(西暦2023年)1月26日配信)