防衛装備庁(5)

先週ご紹介した防衛省装備庁の任務の紹介の続きです。
2点目の「諸外国との防衛装備・技術協力の強化」ですが、防衛装備移転三原則のもとでこれまで以上に平和貢献・国際協力に寄与していくとともに、米国及びそれ以外の諸国との防衛装備・技術協力をより積極的に推進していくとしています。
防衛移転三原則は非核三原則のようなシンプルな字面ではないのであまり知られていませんが、2014(平成26)年に次のように定められたものです。
1 移転を禁止する場合の明確化、次に掲げる場合は、防衛装備の海外移転を認めない
① わが国の締結した条約その他の国際約束に基づく義務に違反する場合
② 国際連合安全保障理事会の決議に基づく義務に違反する場合
③ 紛争当事国への移転となる場合
2 移転を認め得る場合を限定
①平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合
②わが国との安全保障面に資する場合(わが国との間で安全保障面での協力関係がある諸国との国際共同開発・生産の実施、安全保障・防衛協力の強化、装備品の維持を含む自衛隊の活動、邦人保護に不可欠な輸出)
3 目的外使用および第三国移転について適正管理が確保される場合に限定
①原則として目的外使用および第三国移転について我が国の事前同意を相手国政府に義務づける
日本はもともと武器などの輸出については、武器輸出三原則等によって慎重に対処してきました。しかし、F-35の製造などにかかる国際的な後方支援システムへの国内企業の参画や、南スーダンPKO(国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS))において活動中の陸自部隊が保有する弾薬1万発の国連への提供については、上記の基準を適用することができなかったため、内閣官房長官談話を発出して武器輸出三原則等によらないとする措置をとることとなりました。
こうした状況を受け、「国家安全保障戦略」に基づき、政府は上記の「防衛装備移転三原則」およびその運用指針を決定したという経緯があります。
では具体的に諸外国とどのような防衛装備・技術協力がなされているのでしょうか。
やはり圧倒的に件数が多く関わりも深いのは米国です。米国との間には1992(平成4)年以降、現在までに25件の共同研究および1件の共同開発を実施しており、2021(令和3)年5月現在、6件の共同研究(部隊運用におけるジェット燃料及び騒音への曝露の比較、化学剤呈色(ていしょく)反応識別装置、高耐熱性ケース技術、次世代水陸両用技術、日米間のネットワーク間インターフェース、モジュール型ハイブリッド電気駆動車両システムに係る共同研究)を実施しています。
欧州を見てみると、英国との間では、2013(平成25)年7月、日英防衛装備品・技術移転協定を締結し、同月、米国以外の国とは初めてとなる化学・生物防護技術にかかる共同研究を開始し、本共同研究は2017(平成29)年7月に成功裏に完了したほか、新たな空対空ミサイルに係る日英共同研究、ジェットエンジンの認証プロセスに係る共同研究、人員脆弱性評価に係る共同研究についても成功裏に完了しています。
また、フランス、ドイツ、イタリアとの間にも衛装備品・技術移転協定が結ばれています。
アジア・オセアニアではオーストラリア、インド防衛装備品・技術移転協定が結ばれているほか、ASEAN諸国との間では非伝統的安全保障分野における防衛装備・技術協力について意見交換がなされており、わが国は①装備品・技術移転、②人材育成、③防衛産業に関するセミナーなどの開催を3つの柱として進めることとしています。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和三年(西暦2021年)6月3日配信)