海上自衛隊幹部候補生学校(18)

海上自衛隊幹部候補生学校(18)

海上自衛隊幹部候補生学校の連載最終回、「米海軍士官学校アナポリスから見た江田島の教育」の後編です。
平成13年から始まったLSAPという海外語学研修プログラムにより、アナポリスで日本語を専攻している学生の一部が、毎年約1か月、日本に滞在します。
このプログラムでは、最初の2週間は江田島に体験入校、後半の2週間は支援団体の家庭にホームステイします。

「江田島での2週間については声をそろえて『きつかった!』と言います。『自分の時間がない、常に時間に追い立てられている、掃除やらなにやらいろんなことをやらされる、体力的にも厳しい、考えごとをする時間も体を休める時間もない』と、それはもう大変です(笑)。淡々とタイトな日課をこなす日本の候補生たちに驚愕していました」

その後のホームステイ期間中は、ホストファミリーが色々な観光名所に連れて行ってくれたりおいしい日本食を食べさせてくれたりと、とてもよくしてもらうそうです。

「人情厚く温かく歓迎されて、相当じーんとするようです。日本のような歓待は、アメリカではありえないですから。結果として日本に対しては好印象を抱くと(笑)」
「海上自衛隊は米海軍を見習ってきたので、過剰に素晴らしいと思いがちな面があります。けれど、一概にそうでもない生の姿を見ることができたのは私にとっても貴重な経験でした。防大の学生もアナポリスに研修に来るのですが、最初は学校のスケールに圧倒されるんです。そこで彼らに『ちゃんとよく見てみなさい』と言います。ベッドの取り方から部屋の掃除、生活の面の厳しさ、そして人をよく見てみろと。そうすると『自分たちのほうができていることもあるじゃないか』と、防大生も気づきます。それに、米軍は世界中に展開しているのに学生たちはかなりドメスティックで、外のことをあまりにも知りません。日本のように遠洋航海で世界を回ることもなく、卒業したらすぐに部隊に配属されますし、各国に展開している基地も、基地内は米国での生活と何ら変わりませんから。日本のほうがよっぽど柔軟性がありインターナショナルだと感じます」

アナポリスの学生にとって、日本は非常に人気のある勤務地だそうです。米海軍ではアナポリス卒業時、成績順に最初に乗る艦を選べるのですが、横須賀や佐世保を母港としている艦はあっという間に埋まってしまうとか。

「海外への憧れもあるのでしょうが、江田島にやってきた学生がいい宣伝をしたというのもあると思いますよ」

18回にわたった長い連載も今回で終了です。次回からは新しいテーマでお届けします!
(海上自衛隊幹部候補生学校 おわり)
(わたなべ・ようこ)
(令和三年(西暦2021年)4月22日配信)