海上自衛隊幹部候補生学校(8)

ごあいさつ

こんばんは。渡邉陽子です。
緊急事態宣言が延長されそうですね。これでまた取材が延期になったり、見送りになったりします。考えると気が重くなる一方ですが、今月は待ちに待った取材もあるので(こちらは予定通り行けそうです)、それを楽しみに乗り切ります。みなさまもどうぞご自愛ください。

海上自衛隊幹部候補生学校(8)

6時、もしくは6時半に起床して22時に就寝。日中は勉強と運動、夜は自習……そう書くと、単に「規則正しい健全な生活」という印象しか受けないかもしれませんね。
けれど実際は、起床と同時にMAXのテンションまで自分を持っていく必要があったり、食事はすべて5分で完食しなければいけなかったり……
幹部候補生(一般)の1日に密着して、その超ハードな24時間を追いました。2週にわけてお届けします。
そういえば、1日を追う密着取材は防大でも経験しましたが、肉体的にはこちら、海自の幹候のほうがきつかった気がします。
0630(夏季は0600) 総員起床、体操
「5分前の精神」により、実際には6時25分に「総員起こし5分前」の笛が鳴って廊下の電気が点きます。ただしこの時点で起き上がるのはNG(しかし目は覚めます。条件反射というよりもはや脊髄反射)。6時30分の笛で一斉に飛び起き、上半身裸で外へ飛び出します(女子はTシャツ着用)。数十秒前までいびきをかいていたとは思えない迅速な動き。もちろん教官たちもこの時点ですでに廊下に立ち、候補生たちにがっつりにらみをきかせています。
校庭では各々が号令調整(大声でいろいろな号令をかける)を行ないながら乾布摩擦の後、分隊ごとに海上自衛隊体操(準備運動が必要と言われるほどハード)。朝からいきなり密度の濃い15分間。
0645(夏季は0615) 甲板掃除
掃除する場所に関係なく、海上自衛隊では掃除全般を「甲板掃除」といいます。赤れんがの廊下はポリッシャーで磨きをかけ、光るものは金属磨き剤でピカピカにし、屋外の掃除が終わった部分は、両手に熊手を持って後ろ向きに歩き目立てをします。春には爪楊枝を使って桜の花びらを拾った時代もあったとか! この甲板掃除が終わるまで、候補生たちは起床時から顔も洗わずトイレも行かずの状態。
ちなみに、よだれの跡をつけたまま(人によってはですが!)あれやこれやこなさなければならないのは、陸海空男女問わずほぼすべての学校や教育隊でも共通です。
0700 朝食
食事の際は制服着用のため、ジャージから制服に着替えて朝食。ただし候補生の4分の1~3分の1ほどは姿を現しません。これは意図的に朝食を抜いているわけではなく、食べたくても食べる時間的余裕がないため。せつない! 甲板掃除終了後、45分間で朝食、洗顔、制服のアイロンがけ(前夜にアイロンをかけるのは邪道とされます)、ベッドメイキング、当直交代などを行わなければならないのですから。朝食を取っている候補生も5分程度で食べ終わります。
ちなみに7時30分にはスピーカーから「海の幹候」が流れます。
<おまけ:この日の朝食>
棒天味付
山菜湯葉の煮物
きゅうりしょうゆ漬
厚揚げ白菜味噌汁
こんぶ和え
ご飯
牛乳
計704kcal 190円
0800
国旗掲揚、課業整列、定時点検
7時50分には候補生全員が赤れんが前に整列。週番学生による連絡事項の伝達などを行ない、8時に国旗掲揚(ここでは「旗揚げ」と呼ばれます)。その後は分隊ごとにまとまり、服装容儀の点検や候補生による「5分間講話」。この日は、講話を担当する候補生も講評を述べる候補生もすべて英語でした。
8時15分には隊列を組み、教務が行なわれる講堂へ向かいます。この際には道の左右に教官その他「行進チェック係」が立ち、「姿勢が悪い!」とか「腕を振れ!胸を張れ!」など、かなり細かくダメ出しされます。
0820~1140
教務
教務(授業に当たります)は1コマ50分。午前中に4コマ、午後に3コマが基本。赤れんがの講堂は天井が高く窓が大きく、実に重厚な趣き。どの講堂にもかならず「五省」が掲げられています。
教官に指名されて答える際は特に起立の必要なく、この教務の時間が、もっとも候補生たちがリラックスしているように見えます。教務以外の時間がいかに高い緊張を強いられているかが想像できます。この日にのぞいた教務は「管理技法の体系」と「戦略論セミナー」でした。
昼食からは次週に続きます。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和三年(西暦2021年)2月4日配信)