海上自衛隊幹部候補生学校(7)

ごあいさつ

こんばんは。渡邉陽子です。
『PANZER』3月号に「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生」第23回が掲載されました。中部方面総監が自衛官人生の集大成と考えていたところ、折木陸幕長からかかってきた1本の電話。第32代陸幕長の内々示を受けてからの火箱氏の心の揺れは、とりわけ丁寧に書き進めました。https://amzn.to/2NCeQ2g
『丸』3月号の特集で「自衛隊無人機事情」、「世界の軍備」で第12ヘリコプター隊の記事が掲載されました。https://amzn.to/3oky4pL
新連載のお知らせです。
2月1日発売の『正論』3月号より、巻頭グラビアページにて「われらの女性自衛官」がスタートします。あいにく年始早々発令された緊急事態宣言のため取材がストップ、4月号は休載ですが、今のところ5月号からは毎月の連載となります。お楽しみいただければ幸いです。https://amzn.to/39f5ulp

海上自衛隊幹部候補生学校(7)

今週は一般幹部候補生(防大・一般大卒)の1年、後半9~3月のおもな行事をご紹介します。なお、開催月は変更される年もあります。
●9月
護衛艦実習
実際に護衛艦に乗り込み、約1か月かけて艦艇での業務を学びます。候補生たちにとっては楽しみである反面(なんてったって赤鬼、青鬼がいないんですから!)、現場での実習とあって緊張も伴います。同時期に潜水艦実習、機関実習、航空実習も行なわれます。
●10月
野外戦闘訓練
候補生たちに「これがいちばんきつかった」と言わしめる行事。東広島市の原村演習場で、3日間にわたって陸上戦闘訓練を行ないます。最後には40kmの行軍もあり、激しく体力を消耗する厳しい訓練として後々まで語られます。陸上自衛官(特に普通科)にとっては珍しくない訓練でも海上自衛官にとっては畑違いのフィールドだけに、さぞやこたえることでしょう。
●11月
弥山(みせん)登山競技
遠泳、野外戦闘訓練と並ぶ大きな行事で、海軍兵学校時代から続いている伝統の登山競技。厳島神社で知られる宮島の弥山山頂まで全長約2000mのタイムを、個人ならびに分隊ごとに競います。成績優秀者は学生館ロビーのパネルにその名が刻まれます。弥山って霊山としても有名ですよね。
●1月
通信競技
手旗、発光信号、気流を読む競技会。これも分隊対抗なので、自分が分隊の足を引っ張らないようにと、みんな気合いが入ります。手旗や発光については、夜の自習時間に学生館の廊下を使って練習。手旗で会話を交わす姿は、はたから見ていると大変ほほ笑ましいですが、本人たちはもちろん真剣。
球技競技
ハンドボールの分隊対抗競技会。球技=サッカーでもバレーでもバスケでもなく、ハンドボールというのが不思議ですが、広島県はもともとハンドボールが盛んな土地なので、それも関係しているのでしょうか。これも毎年の恒例行事です。
遠漕競技
幹部候補生学校での最後の競技会。最初の競技会が短艇なら、最後もやはり短艇。ただし今回は8マイルと、長距離のタイムを競います。だいたい1時間半~2時間くらいかかるそう。護衛艦実習でちょっと体が鈍ってしまった候補生には結構こたえます。
●3月
武器点検
64式小銃(現在は89式小銃かも)はひとりに1丁、拳銃は分隊に複数貸与されています。これらの武器がしっかり整備されているかどうかと、取扱いに関する知識を問われます。
卒業式
内外から多数の来賓を迎え、大講堂で行なわれます。このとき候補生たちは3等海尉に任命され、ついに「幹部候補生」から「幹部」となります。
卒業生は家に帰ることもなく、そのまま表桟橋に向かい、練習艦隊の各艦に乗艦。約半年間の遠洋練習航海に出港するのです。
なお、取材時は9月に格闘競技(剣道もしくは柔道の競技会が開催されその腕と技を競います)があったのですが、現在の海自幹部候補生学校のサイトには掲載されていませんでした。ケガ人が続出するのが教官の悩みの種とのお話だったので、行なわれなくなったのかもしれません。
また、1月には厳冬訓練も行なわれていましたが、これも現在は実施していないようです。ちなみに内容は約1週間、5時半に起床して、武道をする候補生は道場で剣道もしくは柔道。それ以外の候補生はカンテラを灯しながら短艇を漕ぐというハードなものです。武道も短艇も足元は裸足。候補生たちにとっては開催されなくなってさぞやうれしい行事でしょうね。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和三年(西暦2021年)1月28日配信)