海上自衛隊幹部候補生学校(6)

ごあいさつ

こんばんは。渡邉陽子です。
今月はせっかく決まっていた海自取材も延期になってしまいへこんでいましたが、緊急事態宣言解除後にできるだけ早い日程でリスケしていただけることになり、気持ちも大いに上向きになりました。やはり対面にまさる取材はないですね。

海上自衛隊幹部候補生学校(6)

今週は一般幹部候補生(防大・一般大卒)の1年のうち、前半4~8月をご紹介します。
競技会に実習、点検にまた競技会……候補生たちが過ごす1年間には、さまざまな行事がぎっしり詰まっています。
恐怖心や苦手意識を克服するようなものからシーマンシップを培うものまで、その内容は多岐にわたります。
●4月
分隊点検
幹部候補生学校に入校してから2~3週間後に行なわれます。服装容儀の点検をはじめ、候補生としての心構えなどをランダムに質問するなどによって、教官は候補生たちの心身の状態を把握します。ちなみに教官は、制服の着こなしを見ればその候補生の人となりがおおよそ把握できるそうです。
●5月
短艇競技
短艇(カッター)の操舵については、入校時から継続的にトレーニングを重ねています。この日は分隊対抗で、直線2000mの速さを競います。手の平のマメが潰れたりお尻が擦りむけたりと苦しみつつ、候補生たちはチームワークの大切さを学んでいきます。
防火実習
艦内での火災発生を想定した実習で、模擬機関室に火を放ち、そこへ入り込んで消火します。火を恐れる人間ほどホースから顔を上げてしまったりして火傷しやすいそう。マンツーマンに近い指導なので、そんなときは教官も一緒に火傷することになります。
消火器射撃
64式小銃と拳銃の射撃訓練。確認できていませんが、もしかしたら今は89式小銃にグレードアップしているかもしれません。防大卒と一般大卒で成績に差が出るということはなく、射撃についてはセンスの問題だとか。
●6月
短艇点検
ここでは短艇の操舵ではなく、短艇とそこに付随する部品などの整備がなされているかどうかの点検や、漕艇するための知識に関する確認が行なわれます。
防水実習
艦に穴が開いた状態を想定した模擬装置を用いて、その穴をいかに効率よく迅速に埋めていくかを学びます。模擬装置は同じ敷地内の第一術科学校にあります。ものすごい勢いで穴から水が噴き出してくるので、当然ながら全身ずぶ濡れに。
●7月
水泳訓練
どんなカナヅチでもかならず泳げるようになる奇跡の訓練。教官いわく「科学的に教えれば誰でも泳げる」。なんと心強い……! 6~7月の2か月間プールで訓練を積み、年間行事の中でも最大イベントのひとつ、遠泳に備えます。
遠泳
8マイルを約8時間かけて泳ぐ、候補生にとって最大にきつい行事のひとつ。分隊ごとに隊列を組み、励まし支え合いながら完泳を目指します。
昼食は伝馬船の両脇に流した竹竿につかまって取ります。焼きおにぎり、漬物、ちくわにデザートがバナナと、メニューはほぼ毎年固定。このほか栄養補給として、氷砂糖の入った洗面器が流れてくるほか、伝馬船から乾パンがばらまかれるサービス(?)も。すぐに食べない氷砂糖や乾パンについては、濡れないように水泳帽の中に保管するのがコツ。なお、候補生たちが取り損ねた乾パンを目当てに、候補生たちの隊列の後ろには水鳥の隊列が続きます。かわいい!
●8月
帆走巡航(※9月の場合もあり)
短艇に帆を張って江田島の周辺を回ります。夜はロッジなどに宿泊。風があるときは漕ぐ必要もないので、爽快なクルージングとなります(もちろん風がないときは人力で進まなければなりません)。
幕営
いわゆるキャンプのこと。幕営は後方支援が大変なのでしばらく中止されていましたが、2007年から復活しました。帆走巡航と同時に行なった年は3泊4日の日程で、宿営場所は厳島神社で有名な宮島。行先は毎年異なります。帆走巡航と幕営は、候補生たちにとって数少ないイベント色の強い楽しめる行事。ただし過去3年間は開催されていません。コロナ禍ということもあり、今年も開催は難しいかもしれませんね。
9月以降は次週に続きます。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和三年(西暦2021年)1月21日配信)