海上自衛隊幹部候補生学校(2)

海上自衛隊幹部候補生学校の任務は、防衛大学校、防衛医科大学校、一般大学卒業者および部内からの選抜者に対し、幹部自衛官としての資質を養わせるとともに、初級幹部自衛官として必要な基礎的知識や素養、技能を取得させることです。一言で言えば「初級自衛官としての基盤づくり」といったところでしょう。
そのために「使命感」「ジェントルマンシップ」「ミリタリーマインド」「シーマンシップ」「リーダーシップ」を教育方針としています。「シーマンシップ」はもちろん、「ジェントルマンシップ」が含まれているところが「伝統墨守」の海らしいですよね。
組織は、校長・副校長の元に総務課、教育部、学生隊が置かれています。
教育部は幹部候補生たちを指導する教官からなり、学生隊は学生隊本部と第1~3学生隊で構成されます。
第1学生隊は防大卒(1課程)・一般大卒(2課程)から構成される一般幹部候補生課程など、第2学生隊は部内出身者による幹部候補生課程など、第3学生隊は海曹長や海准尉からなる幹部予定者課程から編成され、それぞれの学生隊の中でさらに「分隊」に分けられています。
1分隊は30名ほどで、分隊単位での行動は非常に多いです。「分隊対抗」「分隊責任」など、同じ分隊の仲間とは苦楽を分かち合う運命共同体です。
各分隊には担任とも言える1等海尉の分隊長が置かれるほか、学生隊全体のしつけ教育関係に関わる教官として、隊付や分隊付という幹部自衛官も置かれます。
候補生にとって分隊長が「悩みごとを相談できるやさしい」アメなら、隊付と分隊付は「同じ空気を吸うだけでも恐ろしい」ムチの存在。この指導方法も海軍時代からの伝統です。
教育期間は、もっとも長いのが防大卒・一般大卒から構成される一般幹部候補生課程で、4月から3月までの約1年間。
同じ一般幹部候補生課程でも部内出身者(すで海上自衛官として勤務経験のある海曹)の場合は約8か月となります。
飛行幹部候補生課程は約6か月、海曹長や海准尉からなる幹部予定者課程は約3か月半。さらに公募幹部が約2か月、医科歯科課程が約6週間となっています。
それぞれ入校も卒業も時期が異なりますが、さまざまな幹部候補生課程が重なる時期は最大450名ほどが在籍し、学校の人口密度も上がります。幹部候補生たちは、在校期間は敷地内の学生館で居住し、寝食をともにします。
ある年4月に入校した一般幹部候補生は1課程が95名、2課程が111名の計206名。しかし毎年、約8~10%の候補生が心身の事情により、志半ばにして江田島を去っていきます。防大で4年間過ごしてきた1課程ですら落後者が出ることからも、いかに江田島での生活が厳しいものかわかります。
カリキュラムの一例を挙げると、一般幹部候補生課程(1課程)が1年間にこなすべき教務は合計1610時間。その内訳は、普通学、隊務、防衛術、術科、実習・見学、訓練、体育、その他となっています。
時間はまんべんなく割り振られていますが、実習・見学にあてられる時間はほかに比べて多くなっています。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和二年(西暦2020年)12月17日配信)