陸上自衛隊高射学校&87式自走高射機関砲(2)

今週は87AWの構造について詳しく見てみます。
外見は87AWと同じく、砲塔両側面に35mm(エリコンKDA)機関砲2門を備えているドイツのゲパルト対空自走砲によく似ています。ちなみに射撃統制コンピュータは、ゲパルトはアナログ式ですが、87AWはより進んだデジタル式のものが搭載されています。
車体は均質圧延鋼板の溶接構造で、外観はやや異なるものの基本的には74式戦車の車体をベースとし、アルミ合金製の砲塔を搭載。
油気圧式サスペンション、エンジン、トランスミッションなどは74式のものをそのまま利用しているので、油気圧式サスペンションによる前後、左右方向の姿勢制御を行なうことが可能です。走行中や斜面からの射撃もできます。
車体サイズも74式と同じなので、分解せずに73式特大型セミトレーラーで運搬が可能です。
74式と異なる部分は、砲塔に搭載された射撃統制装置や捜索・追随レーダー、砲塔駆動用発電機のため、74式では弾薬庫だった車体右側前部に電子装備の電力供給用補助動力装置(APU)が搭載されている点です。
また、車体側面装甲板は垂直となっており、各種点検用パネルが設けられています。
砲塔内には左側に砲班長、右側に砲手が乗車します。
砲塔後部にはパルス・ドップラー式で20km程の探索距離を持つ捜索レーダーを装備。
また、防御装置として砲塔基部左右には発煙弾発射機を装備。誘導用レーザーを感知すると自動的に発煙弾を発射して車体を隠蔽します。
横長の棒状の捜索レーダーアンテナの前方砲塔上面に装備されている皿形のレーダーは、ロックオンした標的を追尾するための追随レーダーです。87AWのフォルムでもっとも特徴的なのが、この追随レーダーといえるでしょう。捜索レーダーが棒状で地味(という言い方もなんですが)なだけに、背の高い87AWの上に位置する丸い追随レーダーは非常に目立ち、87AWを象徴する装備でもあります。普段装備品を見慣れない方でも、このレーダーで「あ! 87AWだ!」とわかります。
捜索レーダーと追随レーダーは別々に装備することで、追随レーダーによって交戦しながらも、捜索レーダーによって別の目標を捜索できるというメリットがあります。
ちなみに追随レーダーは、計画時はゲパルト同様、砲塔前面に配置しようとしたらしいですが、その配置方法に特許があったため、砲塔の上方後部への配置を採用したといわれています。
アンテナは起倒式なので、戦闘時以外は邪魔にならないようにたたんで格納しておくことができます。それによって起立時に4.4mある車高が3.25mに抑えられます。
砲塔両側面に備えている武装、35mm機関砲は発射速度1100発/分(1門500発/分)、砲塔は全周旋回が可能です。
弾薬には近接信管が装備されておらず、直撃弾のみでの撃墜を目的としています。そのため、目標直前で拡散する炸裂砲弾はありません。
使用弾薬は対空用が徹甲弾、徹甲榴弾、対地用に曳光弾があります。対空用と対地用の弾倉はわかれており、対地用弾倉は機関砲基部外側に装備されています。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和二年(西暦2020年)10月15日配信)