陸上自衛隊第4師団訓練検閲(6)

前線で戦っている隊員たちを支えているのが戦闘団段列、いわゆる兵站です。
衛生や整備、補給など、段列なくして戦闘は成り立たりません。戦闘団指揮所よりもさらに後方の奥まった場所で、普通科直接支援隊や補給小隊が黙々と働いています。
600名分の食事の材料が届く糧食交付所、その山のような材料を調理する小さな調理場。
ひときわ奥まったところに位置する救護所。
ガソリンスタンドにもなっている燃料交付所。
前線の殺伐とした空気を感じた後に訪れたこの段列は、まるで宝の山のように見えます。段列は戦闘団の生命線なのだとしみじみ感じました。
統裁部本部も、戦闘が始まり緊張した空気が流れています。
情報を整理して判定を下す審判部、全体の状況を常に見極める企画統裁部など、絶え間なく伝わってくる現場の様子を、最新の状態で把握するための努力が続けられています。
この日は対抗部隊である141機械科連隊を率いる第41普通科連隊長に話を聞くことができました。

「主役の受閲部隊がしっかり戦闘行動ができるかを検証するため、統裁部と連携しながら作戦を進めています。最終的には統裁部の演習の全体の枠組みの中で動きますが、基本はわれわれの自由意志で動き、勝つための戦いをやっています。また、自分たちが受閲したときの反省点を今回の検閲で改善したいと思っています」

防御して待ちかまえている相手に対して攻撃をするには、相手の3倍の人員が必要と言われています。しかし対抗部隊が実際にそこまでの数を用意することはできないので、41連隊の隊員たちはひとりで4~5名分として戦わなければなりません。
一度死亡しても即、次の兵士として戦列に参加するわけですから対抗部隊も大変です。
彼らがいかに全力で16戦闘団を攻めるか、それによって訓練検閲の善し悪しが大きく左右されることを、今日の戦闘を目にした後では改めて実感しました。
さて、いよいよ訓練検閲最終日。
戦闘も佳境に入っています。
ここから先は対抗部隊の息もつかせぬほどの怒涛の攻撃に対し、戦闘団長がどのような決心をしていくかというのが検閲の肝になります。
まずは昨日同様、戦闘の最前線に行ってみました。最前線は戦闘団指揮所にもっとも近いラインまで下がってきています。
化学攻撃を受けたということになっているのでしょう、機関銃を構えた歩兵は防護マスク姿です。
隊員の背後の茂みに隠れている戦車と連携して相手の足を止める計画ですが、その戦車から被弾したことを示す黄色いスモークが上がりました。そして対抗部隊の戦車と歩兵が一気に突入してきました。
戦車の火力で制圧し、歩兵が残党を掃討して地域を確実に確保するという、対抗部隊の完璧な勝利に見えました。ところが……
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和二年(西暦2020年)9月17日配信)