千歳管制隊(5)

今週は、航空自衛隊の管制官になるまでの道のりからご紹介します。
最初は術科学校で管制のイロハを学び、卒業後に部隊に配置され現場での訓練を積み、国交省の管制技能試験を受けます。
これに合格すると、まずはタワーで飛行場管制を担当できるよう、経験を積んでいきます。ここまでの訓練期間は最短で約2年。
引き続き約1年の訓練を受けて再び国交省の技能試験に合格すると、今後は着陸誘導管制が行なえるようになります。
そしてさらに2年の訓練期間を積み、最後の技能試験に合格すれば、ターミナルレーダー管制と進入管制も行なえるようになり、フルレイティッド(全資格保有)となります。
飛行場によっては行なっていない業務もあるので、かならずしも4つの資格すべてが必要というわけではありませんが、千歳の場合はもちろんフルレイティッドが理想的です。
先週もご紹介した空自OBのK氏からいただいたコメントも、ご紹介させていただきます。
「訓練機と民間機が交錯するもっとも多忙な時期には、飛行場全体(ラプコンの管制状況も含めて)の状況を把握させるため、タワー・ラプコンを統括する管制係長を管制塔に配置しております。
また、航空自衛隊の管制官は5種類ある国交省の管制業務の資格のうち、航空路管制業務を除く4種類を取得しなければなりませんが、以前は最初の資格取得のための訓練は、航空管制全体の流れをもっとも把握しやすい管制塔から開始し、管制塔の資格取得後ラプコンの訓練に移行するようにしておりました。」
さて、資格が取得できたからといってほっとするわけにはいきません。
部署の異動などにより管制業務から離れたのち、再び管制官として任務を行なうためには、OJTに付いて再訓練が必要となります。
それはどんなにキャリアを積んだベテラン管制官でも例外ではなく、かつて自分が育てた教え子の指導を受けるというケースもあるといいます。管制業務がそれだけ個人のスキルを求められる職種だという表れでもありますね。
ところで、パイロットのサポート役として管制官が活躍するように、管制官をサポートする部署もまた存在します。それが飛行管理と整備です。
飛行管理は(約5年前のメルマガ第46~53回で飛行管理隊、飛行情報隊をご紹介しました)、おもに政府高官などが乗る航空機を飛行監視するフライトサービス業務や、警戒監視部隊のための彼我識別業務支援として、国土交通省など関係機関とのパイプ役になって情報を取り扱うAMIS(航空機移動情報処理)業務などを行なっています。
飛行管理員が配置される部隊は千歳のような飛行場のほか、飛行群、防衛部、飛行管理中枢などが挙げられ、配置部隊によってその業務の内容が大きく異なるという珍しい職種でもあります。
華のある管制と違って縁の下の力持ち的存在ですが、情報処理の適時性、迅速性と確実性が重視される、重要かつ不可欠な業務です。
整備業務も同様で、整備員はASR(捜索レーダー)、TACAN(極超短波全方向方位距離測定装置)、AIS(着陸誘導装置)、PAR(精測レーダー)など、管制官が空を立体的に管制しやすいようにサポートする装置や、パイロットが欲しい情報を送信する装置の保守・点検・整備を行ないます。
7か所に分散した器材は全部で12種類、整備員にはこれら複数の整備をすべてこなす知識と技術が求められます。
当然業務はハードですがその分、千歳管制隊で整備をこなせれば、日本中どこの管制隊に行っても通用するそうです。
器材は普通に使えて当たり前と思われがちです。その「当たり前」を提供するために、整備担当の隊員は毎日各サイトを回り、保守点検を欠かしません。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和二年(西暦2020年)6月4日配信)