千歳管制隊(4)

今週は千歳管制隊第4回として管制官になるまでの道のりをご紹介する予定でしたが、先週お届けした記事について、千歳管制隊に勤務されていた航空管制のスペシャリスト・航空自衛隊OBのK氏から貴重なご意見をいただきましたので、ご紹介させていただきます
先週の記事の最後に、
「人の目に触れるタワーでの業務は華やかに見えるものの、業務の難易度で見るとラプコンのほうが高いというわけです。」
と書きました。
これについてK氏は、ご自身の長年にわたる経験から
「千歳における両飛行場の安全かつ効率的な運用を作り上げているのは、ラプコンではなく管制塔であると考えています」
とおっしゃり、その根拠を丁寧に解説してくださいました。
私の言葉に変換して万一解釈に誤りがあってはいけませんので、以下にK氏の言葉を引用させていただきます。
「訓練機と民間機が交錯するもっとも多忙な時期には、飛行場全体(ラプコンの管制状況も含めて)の状況を把握させるため、タワー・ラプコンを統括する管制係長を管制塔に配置しております。
また、航空自衛隊の管制官は5種類ある国交省の管制業務の資格のうち、航空路管制業務を除く4種類を取得しなければなりませんが、以前は最初の資格取得のための訓練は、航空管制全体の流れをもっとも把握しやすい管制塔から開始し、管制塔の資格取得後ラプコンの訓練に移行するようにしておりました。」
タワー、ラプコンを統括する管制班長は、ラプコンではなくタワーに配置されているのですね。
管制業務資格については、次週にご紹介する予定です。
訓練がまずタワーから、続いてラプコンという順番で行なわれることは、私も取材時に教えていただきました。そのせいなのか、「ラプコンのほうが難易度が高い」という声をお聞きしたことが、先週の記事の文末の一文にもつながったのですが、一概にそうとは言えないのですね。
また、K氏は現場を知る方ならではの貴重なコメントもくださいました。
「管制官それぞれタワー・ラプコンの得手不得手はあるでしょうが、上番時はONE TEAMとして業務するため、どちらに上番させるかは天候及び航空交通の動態、ならびに管制官の技量を勘案し、そのつど決めており、決してどちらかだけしかできない管制官にはならないようにしておりました。私の印象からすると、タワーを得意とする管制官はラプコンにもなじみやすく、逆にラプコンを得意とする管制官はタワーを苦手とする者が多かったように感じます。」
こういうお話、大好きです!
こういったことをお聞きできるのが取材の醍醐味だと思っています。それを今回はこのような形でお聞きできて、ありがたいことです。
それからラプコンのTCA席について、先週「パイロットの要求に応じて交通情報の提供およびレーダー誘導を行ないます」とご紹介しましたが、K氏から以下のような細かなご説明をいただきました。
「ラプコンの管制席であるTCAは、通常はレーダー管制の対象とならない有視界飛行方式により飛行する航空機に対し、レーダーを使用して飛行場周辺の交通状況の助言や他の航空機に関する助言を行う席であり、計器飛行方式により着陸する民間定期便をTCA席で扱うことはありません。
大まかな流れとして、計器飛行方式で到着する航空機は、まず入域管制席との初度交信設定後、当該席により大まかな着陸順位が付けられ捜索誘導席に移管されます。その後、捜索誘導席は天候や凍結等の滑走路面状況を考慮しつつ各航空機間に着陸後に必要な滑走路上での間隔を勘案し、最終進入コースへ誘導することになります。」
K様、貴重なご意見を本当にありがとうございました。
空自の管制官として現場にいらした方だからこその的確なご指摘、改めて勉強させていただきました。同時に、こうして週に一度メルマガという形で自衛隊に関する記事を発信させていただいている立場として、情報の正確さについて改めて考えるきっかけになりました。
今回の記事に限らず、「おや?」とか「それについてはぜひ伝えたいことがある」など思われることがあれば、みなさまからのご意見いつでもお待ちしております。
今後もひとりよがりのメルマガにならないよう、努めてまいります。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和二年(西暦2020年)5月28日配信)