千歳管制隊(1)

今週から航空自衛隊航空保安管制群千歳管制隊をご紹介します。
私は陸上自衛隊の取材だと北海道に行くのがいちばん好きなのですが(北海道に所在する部隊も北海道の自然も陽気もすべてが好きなのです)、その際にもっともよく利用する空港が新千歳空港なので、千歳管制隊には空港の利用者としてもお世話になっています。
北の空の玄関口として、多くの利用者を受け入れている新千歳空港。ジャンボジェット機が絶え間なく離発着する滑走路の先に目を向ければ、そこはF-15やT-4が轟音を立てて飛び立つ千歳飛行場です。
この2つの飛行場の管制業務を一手に引き受けているのが千歳管制隊です。
かつて、航空自衛隊と民間航空機は千歳空港を共用していました。
しかし千歳~羽田間は世界でも有数の過密な航空路線のうえ、ソ連の領空侵犯による航空自衛隊のスクランブル出動は年間200回にも及んでいました。
そんな手狭な状況を改善するために造られたのが、3000mの滑走路を2本有する純民間空港の新千歳空港です。
新千歳空港は、日本で初めて24時間飛行機の離着陸が可能な空港として1988年に開港。
2019年の旅客数は前年比5.5%増の2459万4904人となり、8年連続で過去最多を更新しました。
世界でもっとも忙しい航空路線(国内線)では、新千歳~羽田間が3万9271便で世界7位となっています。かつては世界一がなかば定着していたのですが、LCCの普及によって世界的に航空路線が変化しました。
ちなみに2019年の世界一多忙な国内線は、ソウル~済州島の7万9640便。日本では福岡~羽田が3万9406便で第5位となっています。
ちょっとおまけに、空港ターミナルビルのおみやげ店や飲食店などの売上高は、2017年度の統計になりますが、羽田の日本空港ビルデング1761億円がぶっちぎりのトップ。そして2位が新千歳空港ターミナルビルディングで485億円です。
3位が福岡の282億円、4位が那覇の103億円ですから、千歳、なかなか強いですね。私も新千歳空港ではつい買い物したくなります。
一方、航空自衛隊千歳基地でもある千歳飛行場(旧千歳空港)は、新千歳空港と誘導路がつながっていて航空機の行き来が可能な共用飛行場ですが、基本的に自衛隊が使用しています。
滑走路は3000、2700mの2本。新千歳側の2本と合わせて、4本の滑走路がほぼ平行に並んでいるという空港は世界でも類がありません。これは空港上空の風向きが春夏は南風、秋冬は北風と季節によって一定しており、横風用の滑走路が不要なためです。
千歳飛行場と新千歳空港は隣接する異なる飛行場ですが、管制業務は一体運用され、航空自衛隊千歳管制隊が行なっています。
ふたつの飛行場の間に建てられた管制塔は高さ70・8m、建てられた当時は日本一の高さを誇っていました。また、1か所の管制塔が複数の飛行場を担当する両面一元管制方式を、国内で初めて取り入れたところでもありました。
ひとつの管制隊が2つの飛行場、4つの滑走路の管制を一手に引き受けるということは、それだけ管制官に気力体力、そして高いスキルを求められるということでもあります。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和二年(西暦2020年)4月30日配信)