日本に初めてオスプレイが配備されたとき(4)

オスプレイが配備されたタイミングで、仲井真知事(当時)は沖縄振興に関する2013年度の予算を2012年度よりもさらに上乗せし、3000億円を要求しています。2012年度の2937億円も前年度より27・6%増でした。あの沖縄タイムスですら社説で「復興予算を最優先しなければならない厳しい財政事情の中で、概算要求額より500億円余も上積みが認められたということは、異例の措置」と述べています。
確かに、普天間飛行場の移設問題が停滞していることの打開を期待するという意味合いもあったのでしょうが、移設問題の迷走は当時いきなり始まったことではありません。その一方で、オスプレイが2012年に沖縄に配備されることはすでにわかっていました。オスプレイがさまざまな思惑に駒として使われている一例を、この予算に見るようです。
報道されないだけで、現実には沖縄県内にもオスプレイを歓迎する団体は複数存在していました。
彼らの「中国による尖閣、沖縄への侵攻という危機に即した際、オスプレイが普天間に配備されている意義は大きい」という言い分がまっとうな意見に思えるのは、私だけではないはずです。反対を声高に唱える人もしくは集団は、オスプレイのみならず在日米軍の存在自体を否定、反対しています。
軍事評論家であり元航空自衛隊戦闘機パイロットの佐藤守氏は、オスプレイ配備反対を唱える主張の矛盾を「普天間基地周辺に墜落する危険があるというのであれば、速やかに辺野古への移転を協力して推進すべき」と指摘しています。しかし肝心の辺野古住民の声は聞こえてきません。
2012年当時あった名護市辺野古区の公式ホームページは、那覇市や宜野湾市など沖縄南部に位置する自治体のそれとは対極とも言える、親米一色でした。地元は歓迎しているというどのマスコミも報じない事実を、国民のどれほどが知っていたでしょう。そして反対しているのは誰なのか。
佐藤氏は「各種左翼連合、労働組合などによる反米活動であり、中国の手が回っていると見て間違いない。沖縄県民の大半は今も昔も無関心。さらに沖縄県の内情で言えば、この問題の本質は利権争い。今まで得ていた特権が北部の辺野古に持って行かれることを恐れている那覇を中心とした南部の反抗である。そこに関連代議士らの票争いと利権争いが絡んでいる。オスプレイ問題は、単にそれに利用されているに過ぎない」。
マスコミと共にオスプレイを徹底的に叩くことで、彼らは在日米軍や在沖米軍基地への反感を高めることに成功したと言えます。なぜなら多くの国民は「オスプレイは危険だ」という先入観を抱いたからです。
尖閣諸島が国有化されて以来、中国の海洋監視船は尖閣諸島の領海や接続水域内の航行を繰り返しています。地元の反発や中国を刺激するのを恐れ、2012年11月に予定されていた自衛隊と在日米軍による共同の離島奪還訓練は、模擬演習に差し替えられました。そんな状況を喜ぶ日本国民はいるのでしょうか。
オスプレイ反対を唱えて利益があるのは誰なのか、どこなのか。少なくとも2020年の今を生きる日本人は、それを知っているはずです。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和二年(西暦2020年)3月19日配信)