日本に初めてオスプレイが配備されたとき(1)

来月、千葉県の木更津駐屯地に陸自仕様のV22、通称「オスプレイ」が暫定配備されます。
日本に初めてオスプレイが配備されたのは2012年10月のことです。米軍普天間飛行場に海兵隊仕様のMV22が置かれ、そして2018年10月には横田基地に空軍使用のCV22が配備されました。
陸上自衛隊のV22は島しょ防衛などに必要な輸送機として、17機調達された新しい装備品です。佐賀空港に駐屯地を新設して配備する予定でしたが、地元の反対等で開設が遅れているため、木更津への暫定配備となりました。
ところで、2012年10月にMV22オスプレイが米軍普天間飛行場へ配備される際には、沖縄で激しい反対運動が繰り広げられたことを覚えていらっしゃるでしょうか。
反対する理由は「危険」「騒音」「沖縄の負担がさらに増す」でした。
今週から何回かにわたり、当時書いた記事をベースに、なぜあれほど「オスプレイ反対」の声が上がったのかを振り返りたいと思います。
オスプレイは、ヘリコプターのような垂直離着陸機能と、固定翼機の長所である速さや長い航続距離、貨物積載量という両者の利点を持ち合わせた垂直離着陸輸送機(ティルトローター機)です。現在は世界で唯一、米軍のみが実用化に成功しています。
同機が換装するヘリCH-46Eに比べて速度2倍、搭載能力3倍、行動半径4倍という高性能。固定翼と回転翼の長所を兼ね備えていることで、人員、物資輸送から民間人の救出、強襲上陸・陽動作戦の展開、そして災害救援までさまざまな場面で重要な役割を果たします。
これまでのヘリコプターや輸送機では不可能だったミッションも遂行できるため、開発段階では全米軍が調達予定だった時期もあるほどです。なお、騒音が懸念されている垂直離着陸モードでの飛行は、全体の5%程度とされています。
オスプレイが沖縄に配備されたのは、換装するCH-46Eを運用する部隊が沖縄にあったからです。
CH-46Eは210年前に製造が終了した、自衛隊ですらすでに退役させた古い機種。海兵隊は保有するすべてのCH-46Eを順次オスプレイに換装中で、普天間飛行場へのオスプレイの配備もその一環として行なわれました。しかもオスプレイは中型輸送ヘリの後継機として開発されたものですから、CH-46Eの後継機としてはオスプレイ以上に最適の機種はありません。
オスプレイが沖縄に配備されるメリットとしては、海兵隊を含む在日米軍全体の抑止力の強化、さらに日本の南西方面での防衛態勢強化と相互作用し、日米間の動的防衛協力の拡充が挙げられます。
たとえば、オスプレイの航続距離は普天間飛行場を起点とした場合、給油なしで飛行できる半径600キロ圏内には八重山諸島、台湾の北端、尖閣諸島が含まれます。一度の空中給油を行なうと行動半径は1100キロにまで拡大、東シナ海全域、北朝鮮南部を含む朝鮮半島、台湾全土、中国は上海まで含まれます。
この性能ゆえ、武装していない輸送機でありながら存在自体が抑止力となっているのです。
日本国内での災害派遣などでの支援でも、その機動力は心強い存在です。2016年の熊本地震の際は南阿蘇村へ救援物資を輸送しました。
東日本大震災の救援作戦「オペレーション・トモダチ」において、CH-46Eを擁する第265海兵中型輸送ヘリコプター飛行隊(今回オスプレイに換装されるにあたって第265海兵輸送ティルトローター飛行隊と改名)は普天間から被災地へ支援物資を輸送しました。しかし飛行だけでも10時間、厚木や横田での休憩や複数回の給油を含めると、実質2日も要しました。もしもオスプレイだったら、ノンストップの約4時間半で到着できていた計算になります。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和二年(西暦2020年)2月27日配信)