航空自衛隊 警戒航空隊(3)

航空自衛隊 警戒航空隊03
取材時の飛行警戒管制隊長である2等空佐は、ミッションクルーコマンダー(隊長として搭乗するクルーをまとめる立場)としてAWACSに搭乗しています。
「フライト中は全員が力を合わせないとひとつの任務が成立しないので、隊員それぞれに任務の重要性や目的意識・役割意識を持ってもらうよう、地上以上に心がけています。また、隊長が示す方向性の振れ幅の中で、最大限のびのびと仕事をして欲しいと思っています。そして各部署を回って確認することで、決して言いっぱなしにはしないようにしています」
彼が体験したことではありませんが、先輩からこんな体験談を聞いたことがあるそうです。
「機内には火災や異臭の発生に備えたマスクがあります。ある日の訓練中、ひとりの隊員が何らかの匂いを感じたらしいんです。それで『異臭発生』ということで全員マスクを付けたまではいいんですが、外すタイミングに困ったと(笑)。マスクを外したら異臭を吸い込んでしまうかもしれないということで、結局最後まで全員マスクを付けたままだったそうです。はたから見ればおかしな光景かもしれません。けれど最後までマスクを外さないというのがやはり正解なんですよね。この話を聞いて以来、自分がその状況に置かれたらどうするかをよく考えます」
ところで、AWACSは一切武装されていません。しかし有事の際、真っ先に標的として狙われるのはこのAWACSでしょう。実際、演習においても対抗部隊は迷わずAWACSを狙ってくるそうです。
「確かに演習でもAWACSを狙ってきます。退避しなければ攻撃される、けれど退避すると監視がおろそかになる。どこまで監視するか、そういうラインの見極めも大切ですね」
第2整備群司令の2等空佐には、第2整備群の特徴などを聞きました。
「第2整備群では運用のニーズに応えて航空機を提供しています。特徴は、バックグラウンドの違う隊員がここに集まり、AWACSというひとつの航空機に関わっていることですね。というのも、通常は航空機の整備は各航空基地で、レーダーの整備はレーダーサイトで行なわれます。ところがAWACSというのはレーダーを積んだ航空機ですから、レーダーサイトで勤務する人と地上で航空機を整備する人が一緒になって整備しているのです」
「AWACSが導入されてそれなりの時間が経ったので、部隊設立時の隊員たちの異動が進んでいます。新たにやってくる若い隊員を現在のベテラン隊員のレベルに近づけるのは大変なことですが、技術の伝承はしっかり行なわれなければなりません。また、その若い隊員たちが異動する時期もいずれは来て、そのとき彼らはレーダーサイトへの異動になります。しかしそのときはAWACS一辺倒で、レーダーサイトの装備品には関わったことがないという状態ですよね。ですから、この部隊にいながらレーダーサイトの勉強もする必要がある、そういう大変さがこの部隊にはあります」
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和元年(西暦2019年)6月6日配信)