陸上自衛隊第14旅団協同転地演習(2)

7月4日朝。善通寺駐屯地から海田市駐屯地まで前進していた14旅団の車両は、これから乗り込む「おおすみ」の待つ呉基地に向かって移動を開始しました。一般車両に交じって一般道を進むので、呉までの所要時間は約1時間から1時間半と予想されました。「おおすみ」に搭載される車両の中には、今年3月に発足した第15即応機動連隊の16式機動戦闘車3台も含まれているとあって、呉市内で待ち受ける報道陣の数も少なくありません。
午前11時、呉市内に14旅団の車両が姿を見せました。一般車両に交じって公道を走行している16式機動戦闘車は、大型車両とはまた違った大きさを感じさせます(近くを走る軽自動車がまるでミニカーのように見えました)。
報道陣が呉係船堀Dバースに集まったとき、すでに車両は「おおすみ」艦内にスムーズに進入できるよう、搭載順に並んで待機していました。
「おおすみ」は海自第1輸送隊に属する輸送艦です。第1輸送隊は輸送艦「おおすみ」「しもきた」「くにさき」の3隻とエアクッション艇6隻(通称LCAC)からなる第1エアクッション艦艇からなり、海上輸送や災害派遣、水陸両用作戦の支援任務など、その任務は多岐にわたります。東日本大震災、熊本地震の際も災害派遣に参加して輸送業務を行なっているほか、2013年11月にフィリピンで発生した台風による被害の救援のために編成された国際緊急援助隊にも参加しました。2018年5月にはインドネシアインドネシア海軍主催の人道支援・災害救援に関する多国間共同訓練「コモド2018」に参加しており、輸送艦として多忙なスケジュールをこなしています。ほんと、実に多忙なのです輸送艦。
13時、車両の積み込みが始まりました。正確には「輸送艦おおすみへの搭載訓練」です。
「おおすみ」の隊員と14旅団の隊員の双方が誘導しながら車両を「おおすみ」の艦内へと進めていきます。現場では海自と陸自の制服が混在しています。輸送艦への搭載は初めてという陸自隊員も多いそうで、不慣れな点もあったと思われますが、はた目にはそういった部分は見受けられませんでした。
最初はかなりスピーディーに車両が艦内へ積載されていったのですが、次第にペースが落ちてきて、次に進む車両が待たされることが増えてきました。これはトラブルがあったわけではなく、艦内に車両が増えたので駐車にもおのずと時間がかかるようになった結果です。
注目を浴びていた16式機動戦闘車も順調に搭載されました。道路マット敷設装置を搭載した車両も参加しているのは、この後揚陸地である海浜訓練場の砂浜に道路マットを敷設するためでしょう。
車両積載時間は14時までとされていましたが、最終的には予定より早く13時50分にすべての車両の搭載が終了しました。「おおすみ」に積まれた約45両の車両はすべて、沼津海浜訓練場へはLCACによって揚陸される予定です。そのための海自との調整はこれから艦内で詰めていくことになります。出航は翌日の5日、沼津到着までの間の艦内では機能別訓練などが行なわれます。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成31年(西暦2019年)3月7日配信)