神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生
月刊『PANZER』に2021年10月号まで連載していた「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生」が書籍化され発売の運びとなりました。火箱さんと名刺交換したのが2013年、取材を始めたのは2014年。何十時間もインタビューを重ね、「えらい人の俺様自伝」とは一線を画す1冊になったと自負しております。陸曹を目指す陸士、陸曹を極めたい陸曹、幹部を目指す陸曹、若い幹部、そしてなによりも一般企業に勤める方々に読んでいただきたい内容です。 福岡の田舎でのびのび育った少年が防大に進学して迷い悩みながら進んだ半生、包み隠さず話してくださった火箱氏の懐の深さあってこその1冊となりました。ぜひ! ご一読いただければ幸いです!
「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生」
オリンピックと自衛隊
1964東京五輪は、自衛隊の支援なしに成功しなかった!
2020東京五輪も、自衛隊は同じ役割を求められることになる。
知られざる自衛隊の苦難と栄光の歴史が、ここに明らかに!!
オリンピックに熱い思いを抱く、すべての人に捧げます。
自衛隊家族会発行「おやばと」、「隊友」160715号、 「月刊モデルグラフィックス」2016/8号、「月刊丸」2016/8号、 160712「防人の道 NEXT」、「歴史群像」8月号(学研)、160701 桜林美佐の国防ニュース最前線、「月刊世界の艦船」2016/9号、160809 政治学者・岩田温の備忘録 で取り上げられました。
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第2師団集合教育「レンジャー」(3)
「急げ急げ!」「階段は走るな!」
支度をする学生を助教たちがあえて急き立てます。
指導部は教育隊長をはじめ、主任教官、教官を幹部自衛官が、陸曹が助教を担当、数個の班にわけて全身全霊で学生の教育指導に当たります。もちろん指導部の全員がレンジャー隊員です。
助教は3連隊のレンジャー隊員から選出されているほか、レンジャー学生が参加している部隊も教育を支援します。ということは、同期で部隊も一緒、普段はよく飲む親しい間柄が助教と学生という間柄になったり、部隊の先輩を助教として指導したりといったことも珍しくないわけです。先輩や親しい仲間をカス呼ばわりすることもあるというなかなかシュールな関係ですが、これが軍隊というものです(おっと自衛隊でした)。
そしてレンジャー教育は学生だけでなく助教が学ぶ場でもあります。学生に指導する以上、自身もレンジャー隊員としての高い能力を保持していなければならないし、ときに教官から指導されることもあります。こういった経験を積むほど、レンジャー教育によりふさわしい助教へと進化していくのです。
学生たちが装具などを準備して集合すると、朝食のパンが渡されました。しかしこれを食べられる時間を作れるかは学生次第。ここから先は行動食で、1日1食取れるかどうかとなります。
疲労、睡魔、空腹、そして渇き。学生たちは極限まで追い込まれた状態で状況を付与され、それを遂行できるか、そしてバディを思いやれるか、そして最後は自分の弱さに向き合いそれに打ち克てるかという己との戦いになります。
この朝、示された時期までに空路潜入や水路潜入により橋梁を破壊、敵車両部隊を伏撃、敵通信施設を襲撃といった想定(状況)が付与されました。学生たちは早速潜入命令と行動計画の作成に取りかかります。また、この際に学生による戦闘隊での役職も示されました。
最終想定における戦闘隊長、副戦闘隊長、通信手、小隊陸曹、班長といった役職は結節で替わり、学生全員が経験します。いつどのタイミングでどんな役職を命じられるかわからないので、これも学生にとってはかなりのプレッシャーになることでしょう。心身が限界に達している状態のときに戦闘隊長を命じられたら、冷静な判断ができるのか、的確な指示が出せるのか。自分の判断ミスや不備によって状況を完遂できなかったら。そんな思いは不安を通り越して恐怖すら覚えるかもしれません。
しかもこの最終想定はレンジャー教育の卒業試験ともいえるものなので、指導部ではなく戦闘隊の計画主導で進められます。ということは、戦闘隊長の指揮運用が悪ければ行程がどんどん遅れることになるのです。
ちなみに学生長は学生の中でいちばん階級が上の隊員がなることが決まっている固定の役職です。今回は27名の中で唯一の2曹が学生長を拝命しましたが、士長でレンジャーとなり3曹になってほやほやという助教から怒鳴られることもあり得るわけで(部隊だったらまず考えられないことです)、しかも教育期間中終始「学生長だから」と言われ続ける、なんともストレスやプレッシャーの大きな立場です。ただ2曹でレンジャー教育に臨むということは、自分が学生長なる可能性が高いということも覚悟した上での挑戦なのかもしれません。
110mm個人携帯対戦車弾、通称LAMや84mm無反動砲といった重い装備も全員で順番に持つのですが、これも今から山中に入るとか疲労の極みといったときに順番が回ってきたら、さぞや絶望的な気持ちになることでしょう。第2師団広報室長の3佐(当時)は、学生たちを見渡して「学生たちにはもう取材陣のカメラを気にしている余裕はありません。この先はおそらく、われわれが正直、報道の人に見られたくないなと思うシーンも出てくるでしょう。きつい、つらい、眠い、さらに空腹と、苦しい状況に追い込まれるほど人間は『自分』が出ますから。ただそのとき、この戦闘隊のためにという気持ちを失うことなく動けるか、あるいは自分のことばかり考えてしまうようになるかといった部分も、最終想定の教育といえます」。レンジャー教育の助教も教官も経験してきた人のコメントは真摯で胸に響きました。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成31年(西暦2019年)1月31日配信)
オリンピックと自衛隊
1964東京五輪は、自衛隊の支援なしに成功しなかった!
2020東京五輪も、自衛隊は同じ役割を求められることになる。
知られざる自衛隊の苦難と栄光の歴史が、ここに明らかに!!
オリンピックに熱い思いを抱く、すべての人に捧げます。
自衛隊家族会発行「おやばと」、「隊友」160715号、 「月刊モデルグラフィックス」2016/8号、「月刊丸」2016/8号、 160712「防人の道 NEXT」、「歴史群像」8月号(学研)、160701 桜林美佐の国防ニュース最前線、「月刊世界の艦船」2016/9号、160809 政治学者・岩田温の備忘録 で取り上げられました。
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